ギリシャ:難民キャンプで初の新型コロナ感染例 強制隔離による住民の健康悪化に懸念

国境なき医師団

ギリシャ・レスボス島のモリア難民キャンプで、初の新型コロナウイルス感染者が1人報告された。ギリシャ政府はこれまで、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、同キャンプ内の全ての移民と庇護希望者を強制的に隔離する方策を打ち出してきた。国境なき医師団(MSF)は、こうした集団隔離は住民の健康悪化につながる危険な策であり、回避すべきだと訴えている。

衛生環境も良くないモリア・キャンプ ©  Enri CANAJ/Magnum Photos for MSF衛生環境も良くないモリア・キャンプ © Enri CANAJ/Magnum Photos for MSF

必要なのは包括的な公衆衛生対応

レスボス島でMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるキャロライン・ウィレメンは、「強制的な集団隔離を正当化する根拠はありません。キャンプ内は“密”であり、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の保持)をとることは不可能です。こまめな手洗いのための水や設備もありません。こうした隔離措置は既に心のケアが必要な患者に、さらなる悪影響を及ぼすことがわかっています」と警鐘を鳴らす。

モリア・キャンプは3000人を収容できるよう設計されたが、現在約1万3000人が押し込められている。MSFは、今回の隔離措置はキャンプにおける感染拡大防止戦略の欠如を隠すためだと見ている。

最近、レスボス島民(移民・難民以外の住民)の間で新型コロナウイルス感染者数は増加しているが、モリア・キャンプで確認された症例は1件にとどまっている。今ギリシャ政府に求められているのは、包括的な公衆衛生対応に踏み切ることであり、感染者との接触歴調査に加えて、検査、衛生状態の向上、医療体制の改善だ。感染拡大を名目にキャンプ住民を不衛生な環境に閉じ込めておくことではない。

ハイリスクな住民の退避が急務

モリアは誰にとっても安全な場所ではないが、新型コロナウイルスに感染した場合、高年齢や基礎疾患のため重症化リスクが高い人びとは200人を上回ると確認されている。MSFやその他の援助関係者は数カ月間、モリア・キャンプ住民を全員他の場所に退避させるように求めてきた。特に、レスボス島内にある安全な宿泊施設やギリシャ本土や他の欧州連合加盟国にある安全な宿泊施設に感染リスクが高い人びとを緊急に移すよう、要請してきた。4月にギリシャ政府は、感染リスクが高い人びとをギリシャの諸島から避難させると約束したが、それから5カ月経った現在も人びとは閉じ込められたままであり、今度は警察による防疫線に阻まれてしまった。

ウィレメンは、「キャンプには、基礎疾患をもつ高齢者、妊婦、子どもたちがいて、この政策による恐怖や不安で心の傷を負っています。政府は、本来であればこうした人びとを守る役目を負っているはずなのに、逆に新型コロナウイルスと一緒にキャンプ内に閉じ込めて、彼らを危険にさらしているのです」と憤る。

強制隔離の代案としてMSFが提唱する措置は以下のとおり。
  • ウイルスについて正確な情報を住民に提供し、自衛策をとれるよう徹底する
  • 住民のコミュニティと協力する
  • 基本的な衛生管理を誰もが実施、利用できるようにする
  • ハイリスク群の人びとを避難させ、保護する。
  • 集団検査を実施する
  • 新型コロナウイルス感染症陽性者を隔離し、治療する
  • 感染者の接触先の追跡調査を行う。
  • 最低限の衛生基準が整備されており、医療従事者による経過観察が確実に行える場所でのみ隔離を実施する

今年7月末、モリア・キャンプのすぐ近くに建てられたMSFの新型コロナウイルス感染症隔離センターは閉鎖に追い込まれた。ギリシャ政府による都市計画規制に合致していない行為は非合法とみなされ、地元当局が罰金を課すようになったためだ。事態を受けて、MSFはレスボス島での新型コロナウイルス対応を大幅に縮小せざるを得なくなった。

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業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
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代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月