【岡山大学】炎症性腸疾患治療薬候補NEt-3IBの環境にやさしい大量合成法を開発 〜原薬合成における廃液量の削減によるSDGs貢献を視野に〜

国立大学法人岡山大学

2022(令和4)年 2月 8日
国立大学法人岡山大学
http://www.okayama-u.ac.jp/
 



<発表のポイント>
  • 炎症性腸疾患(IBD)は、慢性的な炎症により下痢や血便、腹痛などを伴う疾患です。
  • IBD治療薬として、低価格で経口投与が可能である新たな低分子医薬はSDGsの「すべての人に健康と福祉を」の観点からも希求されています。
  • 本研究では、岡山大学発の低分子型IBD治療薬候補NEt-3IBの大量かつ安定供給が可能な大量合成法の開発に成功し、本成果によりNEt-3IBの医薬開発が促進されると期待されます。
  • 既存法に比べて、多段階の原薬合成における環境への負荷の指標であるE-factorを35倍以上改善した、環境にやさしいNEt-3IBの大量合成法の開発に成功しました。
  • 本アプローチは、環境負荷の小さい原薬の大量合成法開発への汎用化も期待できます。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:槇野博史)の大学院医歯薬学総合研究科博士後期課程の大学院生である高村祐太氏、同学術研究院医歯薬学域の加来田博貴准教授らは、アイバイオズ株式会社らと共同で開発中の炎症性腸疾患治療薬候補化合物の環境にやさしい大量合成法の開発に成功しました。

 炎症性腸疾患(IBD)は、慢性的な下痢、血便、腹痛などの症状が見られます。近年、その治療薬として抗体医薬品が上市されていますが、医療費の高騰や抗体医薬品に対する抗体に発現による重篤化が問題とされています。貧富による医療格差や医療現場の逼迫を考慮すると、低価格で経口投与が可能な低分子型の新薬が希求されています。

 我々がこれまでに見出しているレチノイドX受容体(RXR)の作動性物質NEt-3IBは、炎症性腸疾患モデルにおいて、抗炎症効果に加えて、IBDの治療エンドポイントとされている粘膜治癒をも誘導することが確認されており、新たな低分子型の炎症性腸疾患治療薬候補として注目されています。このような背景から現在、NEt-3IBの炎症性腸疾患に対する治療薬開発を、本学と慶應義塾大学、アイバイオズ株式会社と共同で進めています。

 本研究では、炎症性腸疾患治療薬候補として注目されているNEt-3IBについて、有機合成で問題とされる廃液量の削減によるSDGs貢献も期待される大量合成法を開発しました。既存の合成法を基に、使用する有機溶媒を回収と再利用が可能な脂溶性エーテルへと変換することで、2種類の有機溶媒の使用で、かつ廃液量の大幅な削減が可能となり、環境に配慮した合成法の指標とされるE-factorを35倍以上改善しました。

 本研究成果は2022年2月1日、日本薬学会誌「Chemical and Pharmaceutical Bulletin」に、Highlighted paper selected by Editor-in-Chiefに選定された上で公開されました。
 

本研究で創出した NEt-3IB の環境的な大量合成法の概念図(論文中の図を改変)本研究で創出した NEt-3IB の環境的な大量合成法の概念図(論文中の図を改変)



◆高村祐太大学院生からのひとこと
 本研究の成果が、岡山大学発の医薬開発の一助に加えて、本学が推進するSDGsに貢献できれば幸いです。
 大学院生の立場でありながら医薬開発の一端を担えたことは、将来医薬開発研究の道に進む糧となりました。この機会を与えていただいた加来田准教授、関係者のみなさまに感謝申し上げます。

高村祐太 氏高村祐太 氏



◆論文情報
 論 文 名:Development of Scaled-Up Synthetic Method for Retinoid X Receptor Agonist NEt-3IB Contributing to Sustainable Development Goals
 掲 載 紙: Chemical and Pharmaceutical Bulletin
 著   者:Yuta Takamura, Ken-ichi Morishita, Shota Kikuzawa, Masaki Watanabe, Hiroki Kakuta
 D   O   I: https://doi.org/10.1248/cpb.c21-00911
 U   R   L: https://www.jstage.jst.go.jp/browse/cpb/-char/ja


◆詳しいプレスリリースについて
 炎症性腸疾患治療薬候補NEt-3IBの環境にやさしい大量合成法を開発〜原薬合成における廃液量の削減によるSDGs貢献を視野に〜
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20220201.pdf


◆研究資金
 本研究は、文部科学省「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」等の事業採択を受けて実施している「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ(OUフェローシップ)」ならびにアイバイオズ株式会社の共同研究費をもとに実施しました。


◆利益相反(COI)
 本研究はアイバイオズ株式会社の共同研究費にて実施しておりますが、その研究デザイン、データの収集、分析、解釈、本論文の執筆、および出版に向けた投稿の決定に関与しておりません。


◆参 考
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
 https://www.mdps.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学薬学部
 https://www.pharm.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 合成医薬品開発学研究室
 http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~kakuta-h/kakuta_lab/index.html
・アイバイオズ株式会社
 https://www.aibios.co.jp/
 



◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬) 准教授 加来田博貴
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
 TEL:086-251-7963
 FAX:086-251-7926
 http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~kakuta-h/kakuta_lab/index.html

<岡山大学の産学連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
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 岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
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 岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
 岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
 「岡大TV」(YouTube):https://www.youtube.com/channel/UCi4hPHf_jZ1FXqJfsacUqaw
 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2022年2月期共創活動パートナー募集中:
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1949年05月