印刷博物館が開館20周年を機にリニューアルオープン
2020年10月6日(火)に常設展示を中心に施設を刷新 同時に20年間の調査研究成果をもとに「印刷文化学」を立ち上げ
また、リニューアルオープンと同時に、これまで20年間の調査研究成果をもとに新しい学問「印刷文化学」を立ち上げます。「印刷文化学」は印刷と人々との関係を長期文化文明史的な視点から捉え直し、関わった社会や人々の営みを検証する学問体系で、その第一歩として『日本印刷文化史』を10月7日(水)に株式会社講談社より出版します。
印刷博物館の設立計画が浮上した1990年代は、デジタルの大きな波が社会のあらゆる分野に波及しはじめた時代で、印刷分野も例外ではありませんでした。凸版印刷は、加速度的なデジタル化の進展により印刷文化を支えたアナログ技術や表現が失われていくことに危機感を持ち、それらを保存伝承していく必要性を痛感したことから、創立100周年事業の一環として印刷博物館を設立。2000年のオープン以来、印刷博物館は印刷をコミュニケーションメディアとして捉え体系化し、歴史的な印刷史料の収集や、失われていく機器や製品の保管管理も進めるなどの活動を幅広く展開し、開館以来の来館者は63万人を越えています。
さらに開館20周年のリニューアルオープンを迎えるにあたり、人々にとって「印刷とは何か」を明らかにし、印刷を文化的な側面からアプローチするという目標のもとに「印刷文化学」を立ち上げます。印刷文化・歴史全般を調査・研究の範囲とし、社会一般に向けてその成果を展示公開し、情報発信していく公共的な博物館の活動として推進していきます。
■ 印刷博物館リニューアルの特長
常設展は日本の印刷文化を扱う「印刷の日本史」をメインテーマとし、広く世界に目を向けつつ先人が培ってきた日本における印刷文化の歴史的変遷を中心とした展示に、大きくリニューアルしました。年表形式による「印刷の世界史」や、独立した技術展示である「印刷×技術」も常設としています。
2000年の開館時から活字の保存伝承をめざして運営してきた、活版印刷などを体験できる印刷工房は、今後も活動を継続します。
新しい常設展「印刷の日本史」(テーマ例)
時代 | 大テーマ | 中テーマ |
古代・中世 | 宮廷と寺院から始まる印刷 | 奈良時代に始まった印刷 寺院で本格化した印刷 五山版と地方版 |
近世 | 民間へ拡がる印刷 | 活字誕生の背景 上方で始まった版元の印刷 江戸で成熟した印刷・出版 学び手の拡がり 江戸時代の銅版画 情報を伝える摺物 鎖国の嘘(コラム展示) |
近代 | 印刷産業の近代化 | 新時代到来を告げる印刷物 木版から活版へ お雇い外国人と図版印刷 近代教育と教科書(コラム展示) 和装本と洋装本(コラム展示) マスメディアの発達 近代化を支える印刷 戦争と印刷(コラム展示) |
現代 | 消費社会と印刷 | 広告・販促メディアの発展 出版メディアの躍進 現在の印刷の姿(コラム展示) |
■ 「印刷文化学」の立ち上げ
印刷博物館のこれまで20年間の調査研究成果をもとに、新しい学問「印刷文化学」を立ち上げます。印刷文化学とは、印刷と人々との関係を長期文化文明史的な視点から捉え直し、関わった社会や人々の営みを検証する学問体系です。
その最初の取り組みとして、『日本印刷文化史』(A5判、344ページ)を10月7日に講談社より出版します。古代から現代までの日本で起きた歴史的事件と印刷出版文化の関係を、本編22章と6つのコラムで紐解きます。本章では、「奈良時代に始まった日本の印刷」「五山版と武士による印刷の広がり」「徳川家康を中心とする印刷・出版合戦」「戊辰戦争、そして明治政府による改革へ」「戦時における印刷の功罪」「日本の図書館の歴史」などを取り上げています。コラムは「農業技術を広めた農書」「国語国字改良運動」「和装本から洋装本へ」などです。
『日本印刷文化史』は英語版も出版し、当館所蔵の名品を一覧できる『印刷博物館コレクション』も同時刊行します。
また、 「印刷文化学」の独自性を表現するために、「重ねる」というキーワードを軸にブランドロゴマークを作成しました。活動を表すマークとして当館の収蔵資料から、「印」「刷」「文」「化」「学」5文字に該当する約10種類の文字を重ねて、学問を視覚的に表しています。
■ これからの印刷博物館について
印刷博物館は今回立ち上げた新しい学問「印刷文化学」の体系を構築するというミッションをさらに具現化し、コンテンツを充実させていきます。将来にはその成果をアジアやヨーロッパなど世界的視点からの印刷文化まで拡大していきます。
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以 上
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