年長児の3つの力が、小1で自ら進んで学ぶ力になる!~「生活習慣」「がんばる力」「言葉」が身についている子ほど、自分から進んで勉強する傾向が強い~
「幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査」
~同一の子どもについて、4年間(3歳~小学1年生)の変化をとらえる追跡調査結果・第3弾~
株式会社ベネッセホールディングス(本社:岡山市)の社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」では、子どもをもつ母親544名を対象に、2015年3月に「幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査」を実施しました。本調査は、13年、14年に続き3回目で、年少児(3歳)から小学1年生までの4年間、同一の子どもについて継続して子どもの様子や母親の意識の変化を追うことで、この時期に大切な子どもの育ちや保護者の関わりを明らかにすることを目的としています。近年、国際的に幼児教育への関心が高まっており、園や学校現場を中心に幼保小接続の取り組みが全国的に試みられています。こうしたテーマで大規模に行う縦断調査は少なく、貴重な知見を得られる機会となっています。
幼稚園や保育園から小1の接続期は、幼児期から児童期に入り、学習生活が始まる重要な時期です。なかでも、年長児期に《生活習慣》や《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』が身についている子どもほど、小1で「自ら進んで学ぶ」傾向にあることがわかりました。年長児期において、保護者が子どもの意欲や自分で考える行動を支えることが、子ども自身が育つ力を支えるのに重要であることもわかりました。
さらに、4年間を通した縦断調査の結果、子どもの育ちには、《生活習慣》と《学びに向かう力》と《文字・数・思考》の育ちに順序があることが、今回の調査結果からみえてきました。それぞれの力は関連しながら育つので、いずれも重要です。早期から文字・数・思考の教育だけに力を入れるのではなく、子どもの育ちに沿いながら、幼児期の生活と遊びを通して、生活習慣と学びに向かう力を培うことの大切さを示すと思われます。
共働き世帯が増え、少子化などで保護者の子育て経験も減り、地域では子ども同士が触れ合う機会が限られるなど、幼児から小学校低学年の子どもが生活する環境は変化しています。その一方で、保護者は子育てや教育についてあふれるほどの情報に接しています。子どもの育ちを支える保護者や園・小学校、地域や行政の方々が、今回の調査エビデンスを参考に子どもの育ちへの理解を深め、子どもたちが変わる環境に柔軟に対応し、学び続け、課題を解決できるよう育つことを願ってやみません。
【調査概要】
【結果の詳細】
1.年長児期に《生活習慣》全般、《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』が身についている子ほど、小1で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」傾向が強い
●小1の時点で、子どもの家庭学習の様子をたずねたところ、「大人に言われなくても自分から進んで勉強をする」と回答したのは全体の66.3%だった(「とてもあてはまる」と「まああてはまる」の合計)。(図1)
●年長児期の学習準備のどれが、小1で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」に影響するかを分析した。結果、《生活習慣》、《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』の力が高い群ほど、小1で「自分から進んで勉強する」比率が高い傾向がみられた(図2)。
【図1】
「高群」「中群」「低群」と3区分した。
2.年長児期に、親が子どものやりたい気持ちや考える行動を支えるほど、子どもの『がんばる力』や『言葉』は高まる
●年長児期、親が子どもの意欲を尊重する態度を3群に分け、子どもの『がんばる力』を比べた。結果、子どもの意欲を尊重する態度が高い群ほど、子どもの『がんばる力』は高い傾向がみられた(図3)。同様に、親が子どもの意欲を尊重する態度が高かったり、子どもの思考を促す関わり、学びの環境を整える関わりをしている群ほど、子どもの『言葉』の力は高い傾向がみられた(図4)。
【図4】
3.家庭での子どもの成長プロセスでは、①《生活習慣》をベースに、②《学びに向かう力》、③《文字・数・思考》の成長へとつながっていく
●4年間の縦断データから、年少児までに《生活習慣》を身につけることが、年中児の《学びに向かう力》へつながること、そして、そこで養われた《学びに向かう力》が、年長児の《文字・数・思考》の力を育てることがわかった。その後、小1期には、《文字・数・思考》の力や《学びに向かう力》が学習態度を育てていく関係性が見えてきた。(図5)
【図5】
<得点の出し方>
得点を構成する各項目について、“とてもあてはまる”を4点、“まああてはまる”を3点、“あまりあてはまらない”を2点、“ぜんぜんあてはまらない”を1点として平均点を算出した。なお、すべて回答した人のみ分析している。
<3群の分け方>
上記より算出した平均点を3つの群に分けた。すべて回答した人のみ分析している。
<得点を構成する項目について>
※生活習慣:
「夜、決まった時間に寝ることができる」「食事が終わるまで、席に座っていられる」「好き嫌いなく食事ができる」「脱いだ服を自分でたためる」「1人でトイレでの排泄、後始末ができる」「まわりの人に『おはよう』『さようなら』『ありがとう』などのあいさつやお礼を言える」「家で遊んだ後、片付けができる」の7項目。
※がんばる力:
「物事をあきらめずに、挑戦することができる」「一度始めたことは最後までやり通せる」「自分でしたいことがうまくいかないときでも、工夫して達成しようとすることができる」「どんなことに対しても、自信をもって取り組める」の4項目。
※言葉(年長児期):
「ことば遊びができる」「自分のことばで順序をたてて、相手にわかるように話せる」「『なぜ(どうして)かというと』と理由を話すことができる」「見聞きしたことをまわりの人に話をすることができる」「絵本や図鑑を1人で読める」「テーマを与えられると、自分で話を作ることができる」の6項目。
※親による意欲を尊重する態度:
「子どもがやりたいことを尊重し、支援している」「どんなことでも、まず子どもの気持ちを受け止めるようにしている」「何事にも子どもの意見や要望を優先させている」「しかるよりもほめるようにしている」「しかるとき、子どもの言い分を聞くようにしている」「指図せずに、子どもに自由にさせている」「子どもが自分でやろうとしているとき、手を出さずに最後までやらせるようにしている」の7項目。
※親による学びの環境を整える関わり:
「子どもと一緒に数を数えている」「子どもと知育玩具を使って文字や数を学習するような遊びをしている」「ワークブックを子どもにやらせている」「子どもが文字や数に興味を示したとき、さらに学べるように環境を整えている」の4項目。
※親による子どもの思考を促す関わり:
「子どもの『どうして、なぜだろう』などの質問に答えている」「子どもの質問に対して、自分で考えられるようにうながしている」「ひとつの遊びには多様な遊び方があることを子どもに気づかせようとしている」「子どもと一緒に出かけた後、互いに感じたことなどを話し合っている」の4項目。
~同一の子どもについて、4年間(3歳~小学1年生)の変化をとらえる追跡調査結果・第3弾~
株式会社ベネッセホールディングス(本社:岡山市)の社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」では、子どもをもつ母親544名を対象に、2015年3月に「幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査」を実施しました。本調査は、13年、14年に続き3回目で、年少児(3歳)から小学1年生までの4年間、同一の子どもについて継続して子どもの様子や母親の意識の変化を追うことで、この時期に大切な子どもの育ちや保護者の関わりを明らかにすることを目的としています。近年、国際的に幼児教育への関心が高まっており、園や学校現場を中心に幼保小接続の取り組みが全国的に試みられています。こうしたテーマで大規模に行う縦断調査は少なく、貴重な知見を得られる機会となっています。
<幼児期に必要な学習準備について> 本調査では、小学校入学以降の学習や生活につながる幼児期の学習準備として、3つの軸の《生活習慣》、《学びに向かう力》、《文字・数・思考》を設定して調査を行いました。*5ページ参照 *《生活習慣》=生活リズム、食事、あいさつ、片付けなど、生活していくために必要な習慣全般。 *《学びに向かう力》=自分の気持ちを言う、相手の意見を聞く、物事に挑戦するなど、『好奇心』・『自己主張』・『協調性』・『自己抑制』・『がんばる力』の5つの力から成り立つ。 *《文字・数・思考》=文字や数の読み書き、順序の理解など小学校段階での学習につながる、『文字』・『数』・『言葉』・『分類する力』の4つの力から成り立つ。 |
主な調査結果は以下の通りです。
1.年長児期に《生活習慣》全般、《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』が身についている子ほど、小1で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」傾向が強い ●小1の時点で、子どもの家庭学習の様子をたずねたところ、「大人に言われなくても自分から進んで勉強をする」と回答したのは全体の66.3%だった(「とてもあてはまる」と「まああてはまる」の合計)。(図1) ●年長児期の学習準備で、どの力が小1で「自分から進んで勉強する」に影響するかを分析した。結果、《生活習慣》、《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』の力が高い群ほど、小1で「自分から進んで勉強する」比率が高い傾向がみられた。年長児期に3つの軸が備わって、小学校以降の学習生活につながると考えられる。(図2)。 2.年長児期に、親が子どものやりたい気持ちや考える行動を支えるほど、子どもの『がんばる力』や『言葉』の力は高まる ●年長児期、親が子どもの意欲を尊重する態度を3群に分け、子どもの『がんばる力』を比べた。結果、子どもの意欲を尊重する態度が高い群ほど、子どもの『がんばる力』は高い傾向がみられた(図3)。同様に、親が子どもの意欲を尊重する態度が高かったり、子どもの思考を促す関わり、学びの環境を整える関わりをしている群ほど、子どもの『言葉』の力は高い傾向がみられた(図4)。 3.家庭での子どもの成長プロセスでは、①《生活習慣》をベースに、②《学びに向かう力》、③《文字・数・思考》の成長へとつながっていく順序がわかった ●4年間の縦断データから、年少児までに《生活習慣》を身につけることが、年中児の《学びに向かう力》へつながること、そして、そこで養われた《学びに向かう力》が、年長児の《文字・数・思考》の力を育てることがわかった。その後、小1期には、《文字・数・思考》や《学びに向かう力》が学習態度を育てていく関係性が見えてきた。(図5) |
【調査結果からの考察】
幼稚園や保育園から小1の接続期は、幼児期から児童期に入り、学習生活が始まる重要な時期です。なかでも、年長児期に《生活習慣》や《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』が身についている子どもほど、小1で「自ら進んで学ぶ」傾向にあることがわかりました。年長児期において、保護者が子どもの意欲や自分で考える行動を支えることが、子ども自身が育つ力を支えるのに重要であることもわかりました。
さらに、4年間を通した縦断調査の結果、子どもの育ちには、《生活習慣》と《学びに向かう力》と《文字・数・思考》の育ちに順序があることが、今回の調査結果からみえてきました。それぞれの力は関連しながら育つので、いずれも重要です。早期から文字・数・思考の教育だけに力を入れるのではなく、子どもの育ちに沿いながら、幼児期の生活と遊びを通して、生活習慣と学びに向かう力を培うことの大切さを示すと思われます。
共働き世帯が増え、少子化などで保護者の子育て経験も減り、地域では子ども同士が触れ合う機会が限られるなど、幼児から小学校低学年の子どもが生活する環境は変化しています。その一方で、保護者は子育てや教育についてあふれるほどの情報に接しています。子どもの育ちを支える保護者や園・小学校、地域や行政の方々が、今回の調査エビデンスを参考に子どもの育ちへの理解を深め、子どもたちが変わる環境に柔軟に対応し、学び続け、課題を解決できるよう育つことを願ってやみません。
【調査概要】
名称 | 幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査(3歳児から小学1年生) |
調査テーマ | 幼児期から小学校1 年生までの子どもの学びの様子と、保護者の関わりや意識 |
調査方法 | 郵送法(自記式アンケートを郵送により配布・回収) |
調査時期 | 初回調査 :年少児期(3歳児クラス) 2012年1~2月 (縦断)第1回調査 :年中児期(4歳児クラス) 2013年1~2月、 (縦断)第2回調査 :年長児期(5歳児クラス) 2014年1~2月、 (縦断)第3回調査 :小1期 2015年3月 |
調査対象 | 子どもが年少児から小学1年生までの縦断調査に4年間参加した母親544名(全国) |
調査項目 | 学びに向かう力・生活習慣・学習準備等の実態 /母親の養育態度/母親の関わりなど |
調査企画 メンバー・ 分析協力者 |
無藤隆(白梅学園大学教授) /秋田喜代美(東京大学大学院教授) /荒牧美佐子(目白大学専任講師) /都村聞人(神戸学院大学専任講師) /高岡純子(ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室長) /真田美恵子(同研究所 主任研究員) /田村徳子(同研究所 研究員・調査事務局) |
◆ベネッセ教育総合研究所のホームページからも、本リリース資料をダウンロードできます。
http://berd.benesse.jp/
【結果の詳細】
1.年長児期に《生活習慣》全般、《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』が身についている子ほど、小1で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」傾向が強い
●小1の時点で、子どもの家庭学習の様子をたずねたところ、「大人に言われなくても自分から進んで勉強をする」と回答したのは全体の66.3%だった(「とてもあてはまる」と「まああてはまる」の合計)。(図1)
●年長児期の学習準備のどれが、小1で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」に影響するかを分析した。結果、《生活習慣》、《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』の力が高い群ほど、小1で「自分から進んで勉強する」比率が高い傾向がみられた(図2)。
【図1】
*544名全員の結果。
【図2】
*年長児期の生活習慣7項目、がんばる力4項目、言葉6項目から得点を算出し、
「高群」「中群」「低群」と3区分した。
2.年長児期に、親が子どものやりたい気持ちや考える行動を支えるほど、子どもの『がんばる力』や『言葉』は高まる
●年長児期、親が子どもの意欲を尊重する態度を3群に分け、子どもの『がんばる力』を比べた。結果、子どもの意欲を尊重する態度が高い群ほど、子どもの『がんばる力』は高い傾向がみられた(図3)。同様に、親が子どもの意欲を尊重する態度が高かったり、子どもの思考を促す関わり、学びの環境を整える関わりをしている群ほど、子どもの『言葉』の力は高い傾向がみられた(図4)。
【図3】
【図4】
3.家庭での子どもの成長プロセスでは、①《生活習慣》をベースに、②《学びに向かう力》、③《文字・数・思考》の成長へとつながっていく
●4年間の縦断データから、年少児までに《生活習慣》を身につけることが、年中児の《学びに向かう力》へつながること、そして、そこで養われた《学びに向かう力》が、年長児の《文字・数・思考》の力を育てることがわかった。その後、小1期には、《文字・数・思考》の力や《学びに向かう力》が学習態度を育てていく関係性が見えてきた。(図5)
【図5】
※太い実線は影響の大きいもの、細い実線は影響の低いものを表している。
補足資料 1
<得点の出し方>
得点を構成する各項目について、“とてもあてはまる”を4点、“まああてはまる”を3点、“あまりあてはまらない”を2点、“ぜんぜんあてはまらない”を1点として平均点を算出した。なお、すべて回答した人のみ分析している。
<3群の分け方>
上記より算出した平均点を3つの群に分けた。すべて回答した人のみ分析している。
<得点を構成する項目について>
※生活習慣:
「夜、決まった時間に寝ることができる」「食事が終わるまで、席に座っていられる」「好き嫌いなく食事ができる」「脱いだ服を自分でたためる」「1人でトイレでの排泄、後始末ができる」「まわりの人に『おはよう』『さようなら』『ありがとう』などのあいさつやお礼を言える」「家で遊んだ後、片付けができる」の7項目。
※がんばる力:
「物事をあきらめずに、挑戦することができる」「一度始めたことは最後までやり通せる」「自分でしたいことがうまくいかないときでも、工夫して達成しようとすることができる」「どんなことに対しても、自信をもって取り組める」の4項目。
※言葉(年長児期):
「ことば遊びができる」「自分のことばで順序をたてて、相手にわかるように話せる」「『なぜ(どうして)かというと』と理由を話すことができる」「見聞きしたことをまわりの人に話をすることができる」「絵本や図鑑を1人で読める」「テーマを与えられると、自分で話を作ることができる」の6項目。
※親による意欲を尊重する態度:
「子どもがやりたいことを尊重し、支援している」「どんなことでも、まず子どもの気持ちを受け止めるようにしている」「何事にも子どもの意見や要望を優先させている」「しかるよりもほめるようにしている」「しかるとき、子どもの言い分を聞くようにしている」「指図せずに、子どもに自由にさせている」「子どもが自分でやろうとしているとき、手を出さずに最後までやらせるようにしている」の7項目。
※親による学びの環境を整える関わり:
「子どもと一緒に数を数えている」「子どもと知育玩具を使って文字や数を学習するような遊びをしている」「ワークブックを子どもにやらせている」「子どもが文字や数に興味を示したとき、さらに学べるように環境を整えている」の4項目。
※親による子どもの思考を促す関わり:
「子どもの『どうして、なぜだろう』などの質問に答えている」「子どもの質問に対して、自分で考えられるようにうながしている」「ひとつの遊びには多様な遊び方があることを子どもに気づかせようとしている」「子どもと一緒に出かけた後、互いに感じたことなどを話し合っている」の4項目。
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