日本企業「脱ロシア」ストップ ロシア事業見直し、5カ月目で初のゼロ 「事業撤退」主要国で最低レベル、欧米企業との温度差鮮明

緊急調査:日本企業の「ロシア進出」状況調査(7月)

株式会社帝国データバンク

<調査結果(要旨)>
  1. ロシア事業見直しの動き、侵攻5カ月目でストップ 7月の新たな判明はゼロ

ロシア事業見直しの動き、侵攻5カ月目でストップ 7月の新たな判明はゼロ

ロシアに進出している主要企業 ロシア事業停止・撤退状況ロシアに進出している主要企業 ロシア事業停止・撤退状況

ロシアでのビジネスから撤退=日本企業の「脱ロシア」の動きが止まった。2022年2月時点でロシアへの進出が判明した国内上場企業168社のうち、7月22日までにロシア事業の停止や制限・撤退を新たに発表・公開した企業は、全体の4割に当たる74社で判明した。ただ、前月から新たなロシア事業の停止や撤退を表明した企業はゼロだった。一方、受注残といった理由や、ロシア国内での新規事業の投資負担から現地事業を当面継続する企業も判明した。

ロシア事業の停止・撤退を巡っては、3月時点で全体に占める割合は22%だったものの、3~4月にかけて、ロシアに進出する主要な日本企業でロシア事業の停止や撤退といった「脱ロシア」の動きが相次いだ。しかし、その後は脱ロシアの機運は急激に低下し、5月時点ではロシア事業の停止を表明した企業は4月時点の増加数から半減、6月も5月から半分以下にとどまった。こうしたなか、7月は調査開始の3月以降、5カ月目で初めてゼロを記録した。大手企業でも将来的な事業再開・撤退についても言明を避けるケースが多いなかで、総じてロシア事業を見直す動きはストップした。

事業の停止や中断となった企業の内訳では、製品の出荷・受注などを含む「取引停止」が34社で最も多く、事業停止・撤退企業のうち約半数を占めた。次いで現地工場の稼働停止など「生産停止」(14社)、店舗営業や現地の販売活動などを含めた「営業停止」は10社で、ともに前月から変動はなかった。ロシア事業からの撤退は5社判明した。

ロシアビジネス停止・撤退状況 内訳(7月22日時点)ロシアビジネス停止・撤退状況 内訳(7月22日時点)



帝国データバンクが米エール経営大学院の集計をもとに、各国の「ロシア事業撤退(Withdrawal)」の割合を分析したところ、全世界の主要企業約1300社のうち22%に当たる300社がロシア事業撤退を表明したことが分かった。国籍別にみると、ノルウェーなどの北欧3カ国をはじめ、英米企業で「脱ロシア」の動きが加速している。また、欧米の対ロ制裁発動など、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの圧力が欧米諸国を中心に強まるなか、衣料大手のH&M(スウェーデン)などをはじめ、ロシア市場の重要度が高い企業でも完全撤退する動きが続いている。

一方、日本企業の事業撤退割合は帝国データバンクの調査で3%、エール大の調査でも5%と、依然として先進主要7カ国中で最低レベルにある。ロシア工場の操業停止や同国との製品輸出入停止といった、ロシアと距離を置く動きは続いた。しかし、ロシアビジネス撤退には慎重姿勢をみせる企業が多いほか、ロシア事業の占める割合や影響が小さいことから、積極的な開示や対応を控えている側面もここにきて見え始めている。ただ、レアメタルやLNGなどのロシアに代わる代替供給先の確保が難航していることに加え、ロシアを重要な新興市場としてこれまで注力してきた日本企業にとっては「市場再参入のハードルが高い」といった課題もあり、容易な撤退は難しい現状もある。ロシア事業の継続に厳しい目を向けつつある外部環境と、ロシア事業の今後を鑑みた難しい判断が引き続き求められる。

各国企業のロシア事業撤退割合 (米エール大調査)各国企業のロシア事業撤退割合 (米エール大調査)

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代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月