「シックハウス症候群」経験しやすい人や環境の特徴を算出 生活スタイルを変えると予防できる可能性

国立大学法人千葉大学

 千葉大学予防医学センターの鈴木規道 准教授らの研究グループは、シックハウス症候群予防にむけて、全国の20〜70歳の男性3,238名、女性1,758名、計4,996名を対象に、発生に関連する個人の要因や生活スタイルを調査しました。
 その結果、住宅購入時の選択や生活スタイル等の改善でシックハウス症候群を予防できる可能性が示唆されました。
 本研究結果は、Building and Environmentに2021年6月17日にオンライン公開されました。

図 シックハウス症候群を経験しやすい人や生活スタイル図 シックハウス症候群を経験しやすい人や生活スタイル

 カーペットありの場合は、なしの人に比べてシックハウス症候群を経験するリスクが約1.48倍増える可能性がある事を示しています。これは、性別や年齢、疾患歴、神経性過敏、化学物質を低減した住宅仕様、ホコリの有無、喫煙歴、室内の喫煙などの影響を考慮した結果です。他にも、喘息の疾患歴がある人は、年齢や性別など、他の影響を考慮した上でも、ない人に比べてある人は約1.41倍、シックハウス症候群を経験しているという事になります。
 赤に該当する場合は、極力、化学物質にさらされないようにすることが大切です。青の結果より、生活スタイルの改善も重要であることが分かります。経験する症状の重さや頻度や原因は人によって異なります。特に小さな子どもは症状を訴えられない可能性もあり、原因にさらされないように周囲の大人が気を付ける必要があります。
図の拡大画像はこちらhttp://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2021/20210715_0.pdf
  • 研究の背景と目的
 COVID-19の影響で、高齢者や子供だけではなく、日中外で仕事をしていた人も家で過ごす時間が増えてきました。室内には、多くの汚染物質があり、それらを吸い込んだりすることで起こる「鼻のムズムズ・鼻水」「頭痛」「のどの乾燥」「目のチカチカ」など様々な健康障害の総称を「シックハウス症候群」といいます。症状の重さや頻度は人によって異なり、外気に触れる事で症状が緩和する事もあるため、そのまま過ごしてしまうケースが多くあり、アレルギー疾患増悪との関連を示す報告もされています。研究チームは、時代や社会環境の変化により住環境や生活スタイルが大きく変わってきている中で、改めてそれらの変化に合わせたリスク要因に関する調査を行う必要があると考えました。本研究では、シックハウス症候群予防にむけ、発生に関連する個人の要因や生活スタイルを調べ、予防改善策の提案を行う事を目的としました。
  • 研究の内容
 全国の20〜70歳の男性3,238名、女性1,758名、計4,996名を対象にウェブサイトを使用した質問調査を実施し、ロジスティック回帰分析(注3)を用いて算出しました(図)。
 その結果、以下の人はシックハウス症候群を経験しやすい可能性が示唆されました。

・女性や、若い人(60代と比べた場合、特に20代)
・アレルギー既往歴がある人や、神経性が敏感な人
・喫煙歴がある人や、室内での喫煙、受動喫煙・副流煙(注4)を吸い込んでいる人
・床がカーペット敷き、ホコリを目にする部屋に居住している人

 以上より、予防策として、症状を経験したことがある人は、その家族も含めて、室内での喫煙を行わない、カーペットの使用を控える、化学物質を低減した住宅の仕様を選択する、室内でのホコリを目にしないような適切な掃除を行うなど、生活スタイルや住宅購入時の選択でシックハウス症候群を予防できる可能性が示唆されました。
  • 今後の展望
 本研究は今後も継続的に調査を実施し、対象者の一部を追跡予定です。また、温度、湿度、揮発性有機化合物(注5)、ダスト等の環境データの取得も検討しており、本研究で用いた質問調査と合わせ室内環境とシックハウス症候群に関する分析を実施する予定です。
  • 研究資金について
 この研究は、積水ハウス株式会社と日本学術振興会(JSPS)、科学研究費補助金(C)および(若手)助成金番号(19K12455,18K13885)、JST OPERA (JPMJOP1831)のサポートを受けています。データ、執筆に関して一切の関与はありません。
  • 用語解説
注1)オッズ比:ある事象が起きる確率pの、その事象が起きない確率(1 − p)に対する比を意味します。
注2)95%CI:データの信頼性を表し、得られた結果は95%以上正しい事を示します。
注3) ロジスティック回帰分析:「ある事象の発生率」を判別する分析です。
注4)副流煙/受動喫煙:タバコの先からでる煙を「副流煙」、それらを吸い込む事を「受動喫煙」といいます。
注5)揮発性有機化合物:大気中に気体で存在する有機化合物のうち沸点が50℃~260℃の物質の総称。
  • 論文情報
タイトル:Risk factors for the onset of sick building syndrome: A cross-sectional survey of housing and health in Japan.
著者:Norimichi Suzuki , Yoshitake Nakayama, Hiroko Nakaoka, Kohki Takaguchi, Kayo Tsumura, Masamichi Hanazato, Tatsuya Hayashi, Chisato Mori. 
掲載誌:Building and Environment
DOI:https://doi.org/10.1016/j.buildenv.2021.107976

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

国立大学法人千葉大学

71フォロワー

RSS
URL
https://www.chiba-u.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33  
電話番号
043-251-1111
代表者名
横手 幸太郎
上場
未上場
資本金
-
設立
2004年04月