女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査 vol.1女性特有の症状が理由で「働き方を変えた・諦めた経験あり」54.1%
~PMSや生理による症状で働き方を変えた人のうち「転職した」21.5%~
【調査結果サマリー】 女性特有の症状※1と働き方への影響 ◆女性特有の症状を自覚している人のうち、54.4%が「仕事に支障がある」と回答 ◆女性特有の症状で仕事に支障がある人のうち、「働き方を変えた・諦めた経験がある」人は54.1% PMSや生理による症状で働き方を変えた人のうち「転職した」人は21.5 % ◆PMSや生理による症状で働き方を変更したことによる納得度では、時短勤務に変更した / 昇進昇格 を諦めた・断った女性のうち4割超が「納得できなかった」ことが判明 |
※1:PMS(月経前症候群)、貧血、便秘や下痢などの胃腸障害、頭痛・片頭痛、冷えやのぼせなどの血流障害、メンタルヘルス、やせ・肥満・むくみ・ダイエットや栄養障害、不妊・妊活、妊娠・出産に関する症状・疾病、月経関連の症状や疾病、女性のがん・女性に多いがん、子宮内膜症や女性の良性腫瘍、甲状腺疾患や膠原病などの自己免疫疾患、骨盤底の症状・疾病、更年期症状と思われる不調、閉経後の女性ホルモン低下による症状・疾病
調査結果概要
1.女性全体のうち、何らかの女性特有の症状を自覚している人が74.9% |
女性全体のうち、何らかの女性特有の症状を自覚している人は74.9%でした。(【グラフ①】)
【グラフ①】女性特有の症状に関する自覚
2.PMS(月経前症候群)や更年期症状など女性特有の症状を自覚している人のうち、5割超が「仕事に支障がある」と回答 |
何らかの女性特有の症状を自覚している人のうち54.4%の女性が、仕事への支障があったと回答。(【グラフ②※2】)
【グラフ②※2】女性特有の症状による仕事への影響
3.女性特有の症状を理由に働き方を変えた・諦めたことがある女性は54.1% |
女性特有の症状によって仕事に支障があると回答した人に、「働き方を変えたり、諦めたりしたことはあるか」を聞いたところ、54.1%の女性が該当することが明らかになりました。(【グラフ③※3】)
【グラフ③※3】女性特有の症状による働き方変化・諦めへの影響
4.PMSや生理による症状によって、「働き方を変えた」9.3%、「症状があったが、我慢/無理して仕事を続けていた」23.1% |
女性特有の症状の中でも、PMSや生理に関する症状によって「働き方を変えた」と回答した人は9.3%、「症状があったが、我慢/無理して仕事を続けていた」と答えた人が23.1%いることが分かりました。(【グラフ④】)
【グラフ④】PMSや生理に関する症状※4による働き方への影響
5.PMSや生理に関する症状で働き方を変えた人のうち、23.7%は「難しそうな・チャレンジングな仕事をしなかった/諦めた」。21.5%は「転職」したと回答。 |
PMSや生理に関する症状で働き方を変えた人に、どのように働き方を変えたかについて尋ねたところ、最も多い回答は「職場での役割分担を軽くしてもらった」、次いで「難しそうな・チャレンジングな仕事をしなかった/諦めた」でした。(【グラフ⑤※5】)この結果から、PMSや生理に関する症状が仕事上の挑戦を妨げる要因になっていることが明らかになりました。また、「転職」した人が21.5%、「離職」した人が5.4%と職場を離れることにまでつながってしまっています。
【グラフ⑤※5】PMSや生理に関する症状でどのように働き方を変えたか
6.PMSや生理に関する症状で働き方を変更したことによる納得度では、時短勤務に変更した / 昇進昇格を諦めた・断った 女性のうち4割超が「納得できなかった」ことが判明 |
PMSや生理に関する症状で働き方を変えた人に対し、その選択に対する納得度を確認したところ、時短勤務に変更した女性のうち42.0%、昇進昇格を諦めた・断った女性のうち48.5%が「納得していない」と回答しました。(【グラフ⑥※6】)PMSや生理に関する症状によって“やむを得ず”働き方を変更したがゆえ、納得できなかったという女性の心理が浮き彫りになりました。
【グラフ⑥※6】PMSや生理に関する症状で働き方を変更したことによる納得度
■有識者による解説 ※五十音順
これまで女性特有の症状によってもたらされる様々な困難は「個人の問題」とされ、会社からの支援が必要だといった認知は十分に進んできませんでした。産婦人科医の高尾美穂氏をはじめとする本コミュニティの有識者は、女性自身がヘルスリテラシーを向上させることに加え、会社の適切な環境整備によって、働く女性がより生き生きと仕事に取り組むことができると述べています。
岸畑 聖月 氏
株式会社With Midwife 代表取締役/助産師・保健師・看護師
弊社が経済産業省令和3年度「フェムテック等サポートサービス実証事業費」にて行った調査でも、身体的な不調があり、悩みを抱えている女性は約3割(448人/1,573人)でした。今回のデータより少し割合は低いですが、不調レベルではなく悩みが出ている人が3割いることは、解決すべきことだと思います。また一方で、自分の不調が“女性特有のものかどうか”は、一定の知識がないと判断できない側面もあります。やたら眠い、逆に睡眠が浅い、動悸がするなどのただの不調と捉えていたことも、実はホルモンの影響を受けていたりすることもあります。つまりヘルスリテラシーを底上げすることは、不正出血や婦人科疾患など解りやすいトラブルだけではなく、自身では気づいていなかった不調を認識し、解決行動を促すことにもつながります。 また、今回PMSや生理に関する不調を自覚する方が職場での役割分担を軽くしてもらったり、難しそうな・チャレンジングな仕事をしなかった/諦めたという結果もありましたが、これはマネジメントサイドの悩みの種にもなっています。日本の女性管理職比率は1割弱と、マネジメント層は男性が多いのが現状です。そういったときに、同僚や部下が「PMSや生理に関する不調」を感じていそうだと思っても、どのようにコミュニケーションを取ればいいのか分からず、弊社サービスに相談が寄せられることもあります。つまり、気づきや気遣いはあるのだけど、コミュニケーション手法や配慮の選択肢がなく解決に結びついていないという側面もあります。今後はリテラシーを高める戦略を練る一方で、コミュニケーションの方法や配慮の選択肢を経営者や管理職のみなさんに伝えていけるよう本コミュニティー内で考えていく必要を感じました。 |
高尾 美穂 氏
医学博士/日本産科婦人科学会専門医/日本医師会認定産業医/イーク表参道 副院長
女性特有の不調を理由に働き方を変えた女性のうち、半数は仕事の負担を減らすことで日常生活を改善でき満足している一方で、半数の女性は、フルで働くことをあきらめて時短にしたり、昇進をあきらめたりした自身の選択に納得できていない現状を把握できました。 自分の仕事のキャリアや結婚などのライフプラン、子どもを持つことなど、自身の人生において何かを「あきらめる」女性が少なくない社会で、自分の選択に対し納得できるためには、自分で選んだ、という意識が必須です。社会の風潮や会社の雰囲気の中で、選択せざるを得なかった、だから納得できていない。ここを変えていくためには、働く女性を取り巻く環境整備、アシストする仕組みが不可欠です。 |
難波 美智代 氏
一般社団法人シンクパール 代表理事
今回のテーマは「女性特有の不調と働き方への影響」ということで、実際、約半数の女性が昇進昇格を諦め、その決断に納得していないことが明らかになりました。女性特有の症状は多種多様でさらには年齢や就労環境によって大きく変化しています。企業では、従業員の抱える身体的な問題と意欲や能力を切り離して考えないと、組織の競争力もワーク・エンゲイジメントも高まっていきません。この前提と実態をまずは企業が正しく把握することが第一歩です。 一方で、女性特有の症状はそれが治療可能な疾患であるかどうか、不調に関連する労力と負担を個人が認識することは、働き方や仕事の選択にも大きく影響します。今年2月8日に日本医療政策機構(HGPI)から発表された「現代日本における子どもをもつことに関する世論調査」で、全国 25 歳~49 歳までの男女10,000名のうち、約 8 割が「不妊治療を受けた女性が妊娠することができる年齢を 40 歳以上」と回答しています。実際は治療に対して妊娠、出産に至る割合は40歳以上になると10%に満たず、45歳では1%程度(日本産科婦人科学会 ARTデータブック2017)とあり、一般的な認識と実態の大きなギャップが見て取れます。 様々な価値観や環境で働き方や仕事の選択を行うのは自由な時代です。だからこそヘルスリテラシーの重要性が高まっているのだと理解しています。次回の調査でさらに実態が可視化されていくのを楽しみにしています。 |
コミュニティファシリテーター
猪熊 真理子氏
女性活躍推進を実現していくためには「女性たちの意識」「実力」「環境」が3本柱で向上していくことが重要と考えています。「女性たちが活躍したがらない」という意識の問題や、実力が伴っている女性の母数が少ないなど、「意識」や「実力」の面はよく議論にあがりますが、今回の調査で女性特有の不調や身体的な事情を抱えていて、現状の「環境」のままでは活躍できていない女性たちの存在が浮き彫りになってきました。女性特有の不調を抱えながら働いている女性がいるという事実を、企業においては現状「個人の問題なので企業としては取り組めない(もしくは取り組む必要がない)」もしくは「一見健康に見えるので表面化していない」と捉えていることが多いのではないでしょうか。 女性特有の不調や身体的な事情を理解した上で、女性活躍推進に取り組むためには、個人・企業の双方でヘルスリテラシーの向上に取り組むことが重要と考えます。女性たち自身も、仕事に支障があるほどの身体的な不調が女性特有のものであると気づいていないことも多く、また適切な対処ができていない可能性もあります。また企業側も、女性社員や優秀な人材が会社に貢献できる環境で長く働くということを考えると、女性の健康に対するリテラシーの向上と、それを理解した上での職場環境や制度、健康経営などを推進していく必要があります。今回明らかになったように、水面下に埋もれてしまっている女性の可能性をより企業としての活力に変えていくためにも、働く環境におけるヘルスリテラシーの向上が急務だと感じています。 |
はたらく女性の活躍と健康を考える会(仮称)事務局:パーソルキャリア株式会社
今回、女性特有の症状が仕事上の挑戦を妨げる要因になっていたり、転職や離職など会社を離れることにつながっている事実が明らかになりました。人材不足が叫ばれる中、ようやく採用できた人材や長期間働いてくれている社員が会社を離れることは、企業にとっても大きな痛手なのではないでしょうか。女性に関するヘルスリテラシー向上は、真の女性活躍推進、そして優秀人材の確保において、非常に重要な社会テーマだと感じています。 |
■プロフィール ※五十音順
岸畑 聖月 氏
株式会社With Midwife 代表取締役/助産師・保健師・看護師
助産師として年間2,000件以上のお産を支える、関西最大の産科で臨床を経験。不妊や産後うつなどリアルな社会課題に直面し、課題解決は急務であるとプランを前倒し、2019年に株式会社With Midwifeを設立。現在も、臨床経験を継続しながら経営に携わり、その経験を生かして公益財団法人大阪産業局女性起業家応援プロジェクトのプランニングマネージャーも務めている。
高尾 美穂 氏
医学博士/日本産科婦人科学会専門医/日本医師会認定産業医/イーク表参道 副院長
働く女性の産業医。 婦人科の診療を通して女性の健康をサポートし、女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポート。アプリstand.fmで毎日更新される番組『高尾美穂からのリアルボイス』では、体や心の悩みから人生相談までリスナーの多様な悩みに回答。
難波 美智代 氏
一般社団法人シンクパール 代表理事
銀行人事部勤務を経て、29歳で起業。女性向けサービスのPRやキャスティング事業を行うなかで2009年秋、自身の子宮頸がん罹患の経験によりNPO法人子宮頸がん啓発協会「シンクパール」を設立。第3期がん対策推進基本計画の策定やがん教育の推進に携わる。現在は、女性の健康教育と予防医療の啓発を行う一般社団法人シンクパールとして、企業や行政に向けたコンサルティング事業等を実施。
コミュニティアドバイザー/ファシリテーター
猪熊 真理子 氏
OMOYA Inc. 代表取締役社長/女子未来大学ファウンダー/
一般社団法人 at Will Work 理事
主に女性消費を得意とした、経営・ブランドコンサルティングや企画マーケティング、組織のダイバーシティ・マネジメント改革、企業内の女性活躍推進などを行う。経済産業省「平成28年度地域創業促進⽀援研修」講師、「平成28年度中国地域中⼩企業・⼈材コーディネート事業」ダイバーシティ経営セミナー・ファシリテーターなどを歴任。
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調査期間:2022年1月6日
調査対象:20~59歳
会社役員、正社員、契約社員、公務員・団体職員いずれかの雇用形態で働く現職中の女性 3,200名
調査方法:インターネットによるアンケート回答方式
*2020年労働力調査結果に基づき、ウェイトバック集計を実施
■パーソルキャリア株式会社について< https://www.persol-career.co.jp/ >
パーソルキャリア株式会社は、-人々に「はたらく」を自分のものにする力を-をミッションとし、転職サービス「doda」やハイクラス人材のキャリア戦略プラットフォーム「iX」をはじめとした人材紹介、求人広告、新卒採用支援等のサービスを提供しています。2017年7月より、株式会社インテリジェンスからパーソルキャリア株式会社へ社名変更。
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、グループの総力をあげて、これまで以上に個人の「はたらく」にフォーカスした社会価値の創出に努め、社会課題に正面から向き合い、すべての「はたらく」が笑顔につながる持続可能な社会の実現に貢献していきます。
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