女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査 vol.2 ヘルスリテラシーが高い女性グループは「仕事への満足」「目標達成」「はたらく喜び・楽しみ」など、低いグループよりも高い結果に
※1:本検討においては、「性成熟期女性のヘルスリテラシー尺度(※2)」を一部改変して使用しています。質問項目の新規作成を含む改変、配点形式の変更を行っております。
※2:河田 志帆, 畑下 博世, 金城 八津子.性成熟期女性のヘルスリテラシー尺度の開発 女性労働者を対象とした信頼性・妥当性の検討. 日本公衆衛生雑誌, 2014; 61 (4): 186-196. (online), https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/61/4/61_13-051/_pdf/-char/ja , (参照2021-11)
調査結果概要
1. ヘルスリテラシーが最も高い女性グループは「仕事に満足している」割合が62.2% 最も低いグループに比べて24.7ポイント高い |
仕事に満足しているかどうかを質問したところ、ヘルスリテラシー度によって満足している割合に大きく差が出ることが分かりました。具体的には、ヘルスリテラシーが最も低いグループの「仕事に満足している」割合が37.5%に対し、ヘルスリテラシーが最も高いグループの割合が62.2%でした。(【グラフ①】)
2.「仕事における自己決定感を持つことができている※5」「“はたらく”喜び・楽しみを感じている※5」それぞれヘルスリテラシーが最も高い女性グループの方が約20ポイント高い結果に |
ヘルスリテラシーが最も高い女性グループの「仕事における自己決定感を持つことができている※5」割合は39.1%、最も低いグループの同割合は19.3%でした。(【グラフ②】)
また、「“はたらく”喜び・楽しみを感じている※5」と回答した女性はヘルスリテラシーが最も高いグループで48.0%、最も低いグループで24.4%でした。(【グラフ③】)
※5:設問は「はたらいて、笑おう。」グローバル調査の「はたらくウェルビーイング指標」の質問を使用
< https://www.persol-group.co.jp/sustainability/well-being/worlddata/ >
2018年神戸大学の調査※6によると、所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げることが分かっています。今回の調査においても【グラフ②】の通り、ヘルスリテラシーが高いグループほど、仕事における自己決定感を持つことができています。これは、ヘルスリテラシーを身に着けていることで、女性特有の不調に適切に対処できるなど、知識を元に行動・選択を行った結果、納得感のある選択ができ、仕事の満足度が高まっている可能性があると推察されます。仕事満足度や自己決定感、”はたらく”喜び・楽しみを高めようと意識することが、ヘルスリテラシーの高まりに繋がると考えられます。
※6:所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査 (神戸大学)
< https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html >
また、「女性特有の症状※7がある」 人において、ヘルスリテラシー度※1が高いほど仕事満足度、”はたらく”喜び・楽しみ、自己決定感がいずれも高いことが明らかになりました。女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査 vol.1 < https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/corporate/2022/20220310_01/ >において、女性特有の症状が理由で「働き方を変えたり、諦めたりしたことがある」女性が54.1%いることをお伝えしましたが、今回の調査結果から女性特有の症状があっても、ヘルスリテラシーを身につけることで仕事に対する満足度や”はたらく”喜び・楽しみが高められる可能性があることが分かりました。(【グラフ④⑤⑥】)
※7:PMS(月経前症候群)、貧血、便秘や下痢などの胃腸障害、頭痛・片頭痛、冷えやのぼせなどの血流障害、メンタルヘルス、やせ・肥満・むくみ・ダイエットや栄養障害、不妊・妊活、妊娠・出産に関する症状・疾病、月経関連の症状や疾病、女性のがん・女性に多いがん、子宮内膜症や女性の良性腫瘍、甲状腺疾患や膠原病などの自己免疫疾患、骨盤底の症状・疾病、更年期症状と思われる不調、閉経後の女性ホルモン低下による症状・疾病 のうちいずれか
3.ヘルスリテラシーが最も高い女性グループは「個人の仕事において目標を達成している」割合が71.1%、最も低いグループに比べて28.2ポイント高い |
個人の目標達成度について聞いたところ、ヘルスリテラシー度が最も高いグループの71.1%が自身の目標を達成していると回答しました。その一方で、ヘルスリテラシー度が最も低いグループの「個人の仕事において目標を達成している」割合は42.9%でした。(【グラフ⑦】)目標達成については、組織の目標においてもヘルスリテラシー度と達成割合が連動する結果が出ており、こちらについては第3弾にて詳しくお伝えいたします。
■有識者による解説 ※五十音順
今回の調査では、ヘルスリテラシー度が高い女性ほど、仕事に満足している割合や自己決定感を持つことができている割合が多く、女性が前向きにはたらく上でヘルスリテラシーが大きく影響していることが分かりました。産婦人科医の高尾美穂氏をはじめとする本コミュニティの有識者は、女性自身がヘルスリテラシーを向上させることの重要性だけでなく、組織のヘルスリテラシーレベルを上げることも重要であると提言しています。
岸畑 聖月 氏
株式会社With Midwife 代表取締役/助産師・保健師・看護師
◆社員が健康を損なうことなくヘルスリテラシーを身につけるために、組織に合った学びの形を
ヘルスリテラシー高群がなぜリテラシーが身についていたかを推測した場合に、何かしら自分に女性特有の健康トラブルがあり情報収集をしたり、治療をしたことにより自然と知識が身についたパターンと、自然と自身の健康や体の仕組みに関心があり知識を習得したパターンが考えられます。今回の調査では女性特有の症状あり群のヘルスリテラシーが高いことがわかっており、本調査対象においては女性特有の症状の有無とヘルスリテラシーの程度は相関関係がうかがえます。
一方でヘルスリテラシー高群が仕事への満足や自己決定感をもっていたことも今後の提言を考える上で重要な情報です。自身の心身の健康に対するセルフケア能力が高いことが、仕事をする上でプラスに働くことは言うまでもありません。ここで大切なのは、「何かしら自分に女性特有の健康トラブルがあり情報収集をしたり、治療をしたことにより自然と知識が身についたパターン」をどれだけ減らし、健康を損なわずにヘルスリテラシーを醸成し仕事へよい影響を与えたり、その人自身が自己決定感をもちながら生きていける人をどう増やすかです。そのためには、公衆衛生の概念にも近いですが、企業という組織、コミュニティにおいてヘルスリテラシーを高めることが全体最適であることを再認識し、積極的な啓発を行うとともに、その手法においても情報社会であるからこそインプットよりもアウトプットやコミュニケーションをメインとした学びへと移行していく必要があると考えます。トップダウンでも、ボトムアップでもうまくいくとは言えません。組織が一体となり、同じ方向性を向いて、組織に合った学びの形を取り入れていくことが大切であり、そこには組織全体を見渡し手法を提案できる専門家の存在も必要なのかもしれません。この点についてはまた有識者のみなさんとも引き続き議論していきたいと思います。
高尾 美穂 氏
医学博士/日本産科婦人科学会専門医/日本医師会認定産業医/イーク表参道 副院長◆働く女性自身だけでなく、社会・企業・組織による双方の努力が、自分らしく働ける女性を増やす
今回の明快な結果から、働く女性のヘルスリテラシーを高める、もしくは高く維持することで、仕事への満足度も高く、生活への満足度も高く、ひいては人生への満足度も高く過ごすことができる可能性を感じています。
これからの社会で、ライフイベントを楽しみながら自分らしく人生を過ごすなかで「自分らしく働く」スタイルが求められていきます。個としての働く女性がヘルスリテラシーを高く維持するため前向きに取り組むこと、女性を取り巻く社会、企業、組織が女性を支える仕組みを構築し、柔軟に対応できる環境を準備すること、双方の努力があってはじめて、「自分らしく働きながら、満足度の高い人生をすごす」ことができる女性を増やすことにつながると考えております。
難波 美智代 氏
一般社団法人シンクパール 代表理事
◆従業員のヘルスリテラシーは、投資家の開示ニーズにも挙げられている重要テーマ
健康経営の定量的な指標に関する開示状況と投資家のニーズ(2021年)に関するデータ*によれば、投資家のニーズの高さに比べて企業による開示状況が低く、その差が大きい項目の順に示すと、
1.各施策の従業員の満足度(80.1%)
2.ワークエンゲイジメントの状況(70.4%)
3.離職の状況(50.2%)
4.労働時間の状況(残業時間等)(43.4%)
5.従業員のヘルスリテラシー(40.5%)
となっており、健康施策を行った結果、個人の健康アウトカムや業務パフォーマンスの向上にどう関与しているのかが着目されています。従業員の健康に配慮した企業が望まれるなかで、今回の調査結果からも性差を考慮した対策の重要性が求められると改めて感じました。
*:令和3年12月1日 経済産業省「健康・医療新産業協議会 第4回健康投資WG」資料より
< https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/004_02_00.pdf >
猪熊 真理子氏
コミュニティファシリテーター
◆ヘルスリテラシー向上の取り組みは、採用ブランディング・既存社員のリテンションにつながる
企業において「社員にできれば健康に働いてほしい。しかし、個人の健康に対して企業が取り組む意義とは?それによって企業においてどんな価値(アウトカム)があるのか?」、また「女性活躍推進やD&Iを進める上で、どのような性差による特性の理解が必要で、企業としてどのような支援や取り組みが必要なのか」と考えている方も多いのではないでしょうか。
今回の調査では、働く女性のヘルスリテラシーの高低によって、仕事の満足度や自己決定感、目標の達成度についても差があることが明らかになりました。ヘルスリテラシーが高い方々の方が仕事への満足度や目標達成度が高いということが今回の調査では明らかになりましたが、こういったヘルスリテラシーが高い方々は全体から見るとまだ一部で、そこには裾野を広げていける大きな可能性があると言えると思います。
働く女性たちは、「より自分らしく働ける・活躍できる」企業を求める傾向にある中で、企業が「女性の健康」や「ヘルスリテラシーの向上」に取り組むことは、例えば採用活動における企業選定の重要な軸となったり、すでに働いている女性社員の離職率の低下や継続した活躍に繋がったり、“女性が働きやすく、働きがいのある企業”になるために重要なトリガーになりそうだということも見えてきました。
調査リリースの第一弾で明らかになったように、
・女性特有の症状を抱えている女性たちは全体の74.9%存在し、
・かつそのうちの半分以上である54.4%の女性たちが仕事に支障がある
という現状を考えると、働く女性たちと企業のヘルスリテラシーを高めることは、働いている女性たちの仕事の満足度を高め、仕事とライフ(ライフイベントや健康の事情など)をトレードオフにするのではなく、どちらも大切にしながら活躍できる状況を創り出すことにつながり、さらには女性たちの人生の満足度を高めることにも繋がると考えています。ヘルスリテラシーを向上させるということは個人の問題ではなく、企業全体で取り組むべき問題であり、働く女性たちが満足度高く、生産性高く、より活躍するためにも必須の取り組みであると言えるのではないでしょうか。
はたらく女性の活躍と健康を考える会 事務局:パーソルキャリア株式会社
◆ワークエンゲージメントやウェルビーイングの観点からも、ヘルスリテラシー向上は有効な手段
ギャラップ社が2017年に実施した調査*によると、日本の「Engaged(エンゲージメントが高い)」といわれる社員の割合は平均6%で、全139カ国の中で132位と最下位クラスであることが判明しています。社員のワークエンゲージメントを向上させたいが、どのように取り組めば良いか悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。
今回の調査結果から、ヘルスリテラシーを身につけることで仕事に対する満足度や自己決定感、また”はたらく”の喜び・楽しみといった、社員のワークエンゲージメントが高められる可能性があることが分かりました。
この結果を踏まえ、社員のワークエンゲージメントを高めるうえで、さらにウェルビーイング経営の観点からも、ヘルスリテラシーの習得支援を行うことは、有効な手段の一つだと考えられます。
また取り組みを行う企業が増えることで、女性社員の業務パフォーマンスが向上し、企業活動の社会的インパクトが生まれる可能性も秘めていると考えています。こうしたことから、女性に関するヘルスリテラシー向上は非常に重要な経営テーマだと言えるのではないでしょうか。
*:State of the Global Workplace2017:GALLUP
< https://fundacionprolongar.org/wp-content/uploads/2019/07/State-of-the-Global-Workplace_Gallup-Report.pdf >
■プロフィール ※五十音順
岸畑 聖月 氏
株式会社With Midwife 代表取締役/助産師・保健師・看護師
助産師として年間2,000件以上のお産を支える、関西最大の産科で臨床を経験。不妊や産後うつなどリアルな社会課題に直面し、課題解決は急務であるとプランを前倒し、2019年に株式会社With Midwifeを設立。現在も、臨床経験を継続しながら経営に携わり、その経験を生かして公益財団法人大阪産業局女性起業家応援プロジェクトのプランニングマネージャーも務めている。
高尾 美穂 氏
医学博士/日本産科婦人科学会専門医/日本医師会認定産業医/イーク表参道 副院長
働く女性の産業医。 婦人科の診療を通して女性の健康をサポートし、女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポート。アプリstand.fmで毎日更新される番組『高尾美穂からのリアルボイス』では、体や心の悩みから人生相談までリスナーの多様な悩みに回答。
難波 美智代 氏
一般社団法人シンクパール 代表理事
銀行人事部勤務を経て、29歳で起業。女性向けサービスのPRやキャスティング事業を行うなかで2009年秋、自身の子宮頸がん罹患の経験によりNPO法人子宮頸がん啓発協会「シンクパール」を設立。第3期がん対策推進基本計画の策定やがん教育の推進に携わる。現在は、女性の健康教育と予防医療の啓発を行う一般社団法人シンクパールとして、企業や行政に向けたコンサルティング事業等を実施。
コミュニティアドバイザー/ファシリテーター
猪熊 真理子 氏
OMOYA Inc. 代表取締役社長/女子未来大学ファウンダー/一般社団法人 at Will Work 理事
主に女性消費を得意とした、経営・ブランドコンサルティングや企画マーケティング、組織のダイバーシティ・マネジメント改革、企業内の女性活躍推進などを行う。経済産業省「平成28年度地域創業促進⽀援研修」講師、「平成28年度中国地域中⼩企業・⼈材コーディネート事業」ダイバーシティ経営セミナー・ファシリテーターなどを歴任。
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調査期間:2022年1月6日
調査対象:20~59歳
会社役員、正社員、契約社員、公務員・団体職員いずれかの雇用形態で働く現職中の女性 3,200名
調査方法:インターネットによるアンケート回答方式 *2020年労働力調査結果に基づき、ウェイトバック集計を実施
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