10月~12月に「値上げラッシュ」懸念 値上げ実施済・予定の企業は7割、4社に1社が「再値上げ」
企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート(2022年8月)
ウクライナ情勢にともなう供給制約への懸念などによる原材料価格の高止まりや円安の進行などを背景に、企業の仕入れコストは引き続き上昇傾向にある。日本銀行が2022年8月10日に発表した同年7月の「企業物価指数」は17カ月連続で前年同月を上回り、6月に続き過去最高を更新した。こうしたなか、企業で値上げの動きが相次いでいる。
そこで、帝国データバンクは、企業の今後1年の値上げ動向についてアンケートを行った。同様の調査は2022年4月、2022年6月に続き3回目。
そこで、帝国データバンクは、企業の今後1年の値上げ動向についてアンケートを行った。同様の調査は2022年4月、2022年6月に続き3回目。
<アンケート結果(要旨)>
企業の 3割が今後約1年以内に値上げ予定、特に10~12月で勢い増す
この結果、2022年8月以降に「値上げした/する予定」の企業は31.4%となった。「2022年4~6月の間にすでに値上げした」および「2022年7月にすでに値上げした」企業と合わせると、「値上げ実施済・予定」企業は69.6%と約7割にのぼっている。他方、「今後1年以内で値上げする予定はない」は8.6%、「値上げしたいが、できない」は14.3%だった。
特に化学品メーカーや食品関連で値上げがさらに進む見込み
うち2022年8月以降約1年以内に値上げする予定の企業は、「化学品製造」で47.9%と全体(31.4%)を16.5ポイント上回っている。また、「飲食料品卸売」(47.3%)や「飲食料品・飼料製造」(46.4%)などにおいても値上げが続くとみられる。なかでも値上げの勢いが増す2022年10~12月において、「飲食料品卸売」では34.5%の企業が値上げを行う予定となっており、全体(16.7%)を大幅に上回っている。
企業からは、「原材料や容器、運賃などの値上がりによって製造コストが大幅に上がったため、販売価格に転嫁した。ただし、販売先によっては競合他社の動向を見ながらなので転嫁できる幅が限られており、コストの値上がり分をそのまま転嫁できないケースも多い」(ゼラチン・接着剤製造)や「客先によって、円安でコストが上がった分をそのまま販売価格に転嫁できたが、一部商品については、値上げのスピードが円安のスピードに追いついていない」(乾物卸売)など、原材料費の高騰や円安の進行によるコスト増を受け、値上げに踏み切ったといった声が多くあがっていた。
一方で「値上げしたいが、できない」割合をみると、「運輸・倉庫」は34.2%と、全体(14.3%)を大きく上回っている。企業からは、「食品運送業であるが、荷主企業も資材コスト等の上昇で値上げ要請を受け入れてもらえない」(一般貨物自動車運送)や「他社と相見積を取られることが多く、値上げすることで契約が取れないことが多い」(ソフト受託開発)など、他社との競合から値上げがしにくい状況や値上げの交渉が困難になっている様子がうかがえる。
企業の25.8%が今年に入り「2回以上値上げ」
企業からは、「仕入商品の値上がりにともない、その都度値上げを実施」(塗料卸売、値上げ回数4回)といった声があがっていた。
「値上げ実施済み・予定」と回答した企業の声
「値上げしたいが、できない」と回答した企業の声
本アンケートの結果、2022年8月以降に「値上げした/する予定」の企業は約3社に1社となり、2022年4月よりすでに値上げを実施した企業と合わせると約7割にのぼった。なかでも、化学品メーカーのほか、食品メーカーおよび卸売といった食品関連の川上から川中産業で値上げを予定している企業の割合が高く、今後も川下産業および家計への影響が懸念される。また、今年に入り2回以上値上げを行った企業は25.8%となり、約4社に1社が複数回の値上げを行っていた。
一方で、値上げによる顧客離れに対する懸念などで企業の14.3%は値上げしたいが、できない状況にあった。また、「値上げはしているが、すべてが価格に転嫁できるわけではないので収益率は急速に悪化している」(動力伝導装置製造)といった声にあるように、すでに値上げした企業においてもコストアップ分すべてを販売価格に反映できていない状況がうかがえた。
エネルギー価格や原材料費などの上昇はとどまる気配を見せない。そうしたなか、為替動向の不透明感の高まりや深刻化する人手不足なども相まって、コスト増は続くと想定される。企業が厳しい状況を乗り越えるために適正な価格転嫁が急務となっており、今後も値上げの動きは続くであろう。
- 自社の主な商品・サービスについて、2022年8月以降約1年以内に「値上げした/する予定」の企業は31.4%となった。「2022年4~6月の間にすでに値上げした」および「2022年7月にすでに値上げした」企業と合わせると、「値上げ実施済・予定」企業は69.6%と約7割となった。また、6月に実施した同様の調査と比べて、「2022年10~12月ごろに値上げ予定」の企業は7.4ポイント上昇した
- 今後値上げする予定の企業を業種別でみると、特に化学品メーカーや食品関連で高かった。一方で値上げしたいもののできない企業の割合をみると、「運輸・倉庫」は全体を大きく上回っている
- 2022年1月から本調査回答時点までの自社の主な商品・サービスの値上げ回数は「0回」が33.5%、「1回」が40.7%となった。また、2回以上値上げを行った企業は25.8%となり、約4社に1社が複数回の値上げを行っていた
企業の 3割が今後約1年以内に値上げ予定、特に10~12月で勢い増す
自社の主な商品・サービスの値上げ動向について尋ねたところ、48.7%の企業が「2022年4~6月の間にすでに値上げした」と回答(複数回答、以下同)。また「2022年7月にすでに値上げした」は10.6%、「2022年8月に値上げした/する予定」は8.7%、「2022年9月に値上げ予定」は10.5%となった。さらに、「2022年10~12月ごろに値上げ予定」は16.7%となるなど、企業は今後も値上げを考えていることが分かった。
この結果、2022年8月以降に「値上げした/する予定」の企業は31.4%となった。「2022年4~6月の間にすでに値上げした」および「2022年7月にすでに値上げした」企業と合わせると、「値上げ実施済・予定」企業は69.6%と約7割にのぼっている。他方、「今後1年以内で値上げする予定はない」は8.6%、「値上げしたいが、できない」は14.3%だった。
6月に実施した同様の調査と比較すると、とりわけ「2022年10月~12月ごろに値上げ予定」の企業は7.4ポイント増(6月調査:9.3%→8月調査:16.7%)となり、この2カ月の間に秋から初冬に値上げを考える企業の割合が急増した。
特に化学品メーカーや食品関連で値上げがさらに進む見込み
「値上げ実施済・予定」割合を業種別にみると、「機械・器具卸売」は87.7%となり、「建材・家具、窯業・土石製品卸売」や「鉄鋼・非鉄・鉱業」、「飲食料品卸売」などにおいても値上げがとりわけ進んでいる。
うち2022年8月以降約1年以内に値上げする予定の企業は、「化学品製造」で47.9%と全体(31.4%)を16.5ポイント上回っている。また、「飲食料品卸売」(47.3%)や「飲食料品・飼料製造」(46.4%)などにおいても値上げが続くとみられる。なかでも値上げの勢いが増す2022年10~12月において、「飲食料品卸売」では34.5%の企業が値上げを行う予定となっており、全体(16.7%)を大幅に上回っている。
企業からは、「原材料や容器、運賃などの値上がりによって製造コストが大幅に上がったため、販売価格に転嫁した。ただし、販売先によっては競合他社の動向を見ながらなので転嫁できる幅が限られており、コストの値上がり分をそのまま転嫁できないケースも多い」(ゼラチン・接着剤製造)や「客先によって、円安でコストが上がった分をそのまま販売価格に転嫁できたが、一部商品については、値上げのスピードが円安のスピードに追いついていない」(乾物卸売)など、原材料費の高騰や円安の進行によるコスト増を受け、値上げに踏み切ったといった声が多くあがっていた。
一方で「値上げしたいが、できない」割合をみると、「運輸・倉庫」は34.2%と、全体(14.3%)を大きく上回っている。企業からは、「食品運送業であるが、荷主企業も資材コスト等の上昇で値上げ要請を受け入れてもらえない」(一般貨物自動車運送)や「他社と相見積を取られることが多く、値上げすることで契約が取れないことが多い」(ソフト受託開発)など、他社との競合から値上げがしにくい状況や値上げの交渉が困難になっている様子がうかがえる。
企業の25.8%が今年に入り「2回以上値上げ」
2022年1月から本調査回答時点までの値上げ回数について尋ねたところ、有効回答のうち「0回」が33.5%、「1回」が40.7%となった。また、「2回」は14.9%、「3回」は5.2%だった。総じてここ約8カ月間で2回以上値上げを行った企業は25.8%となり、4社に1社が複数回の値上げを行っていた。
企業からは、「仕入商品の値上がりにともない、その都度値上げを実施」(塗料卸売、値上げ回数4回)といった声があがっていた。
「値上げ実施済み・予定」と回答した企業の声
- あらゆる資材が毎月のように値上げされている状況では、その都度、販売先に値上げ交渉していては間に合わない。とりあえず仕入価格の値上がり分を値上げして、様子を見るしかないという判断になった(配管冷暖房装置等卸売)
- メーカーからいきなり値上げの通知文があるが、都度値上げについて対応している(精密機械器具卸売)
- 商品ごとに値上げの時期が違うためその都度価格に転嫁できるよう得意先にはお願いしている。ビール類など報道されている値上げはお願いしやすい(酒類卸売)
- 既存商品は値上げすることを認めてもらえないが、新商品については、原価計算を行い価格設定している。スーパー関係は既存商品の値上げは大手企業には認めてもらえるが、小規模事業者は値上げを提出した時点で商品が打ち切りになる(米菓製造)
- 値上げを受け入れてもらえるクライアントもあれば、値上げを受け入れないクライアントもある。感覚では、6割くらいが値上げ済み(印刷)
「値上げしたいが、できない」と回答した企業の声
- 販売対象物が資源高等に直結していないため、消費者が納得しづらい(個人教授所)
- 物流費高騰と世間では値上げの材料にされているが、荷主は値上げの交渉に乗ってくれない。運送会社の代わりはあるからと言われると交渉ができなくなる(一般貨物自動車運送)
- 賃料・共益費ともに契約によって決まっており、新型コロナの感染拡大で経営の厳しいテナントに改定の提案は難しい(貸事務所)
本アンケートの結果、2022年8月以降に「値上げした/する予定」の企業は約3社に1社となり、2022年4月よりすでに値上げを実施した企業と合わせると約7割にのぼった。なかでも、化学品メーカーのほか、食品メーカーおよび卸売といった食品関連の川上から川中産業で値上げを予定している企業の割合が高く、今後も川下産業および家計への影響が懸念される。また、今年に入り2回以上値上げを行った企業は25.8%となり、約4社に1社が複数回の値上げを行っていた。
一方で、値上げによる顧客離れに対する懸念などで企業の14.3%は値上げしたいが、できない状況にあった。また、「値上げはしているが、すべてが価格に転嫁できるわけではないので収益率は急速に悪化している」(動力伝導装置製造)といった声にあるように、すでに値上げした企業においてもコストアップ分すべてを販売価格に反映できていない状況がうかがえた。
エネルギー価格や原材料費などの上昇はとどまる気配を見せない。そうしたなか、為替動向の不透明感の高まりや深刻化する人手不足なども相まって、コスト増は続くと想定される。企業が厳しい状況を乗り越えるために適正な価格転嫁が急務となっており、今後も値上げの動きは続くであろう。
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