【国立科学博物館】日本では3種目のマリモ類の発見!モトスマリモと命名
独立行政法人国立科学博物館(館長:篠田謙一)の辻彰洋研究主幹(植物研究部)は、山梨県の民家の水槽から発生したマリモ類がAegagropilopsis(アエガグロピロプシス)属の日本新産種と明らかにし、「モトスマリモ」と命名しました。
日本で見つかった球状になるマリモ類としては、「マリモ」「タテヤママリモ」についで3種目です。
【研究のポイント】
今回、山梨県甲府市の民家の水槽からマリモが発生した(図1、図2)と連絡があり、調査を行いました。
顕微鏡観察の結果、「マリモ」「タテヤママリモ」と同様に枝分かれした糸状体が絡み合って球形の群体を作っていました(図3)。また、「マリモ」ではほとんど観察例がない遊走子(鞭毛を持って水中を遊泳する胞子:図4)も見つかりました。
種の区別に重要な遺伝子解析の結果(図5)から、今回の藻の配列はAegagropilopsis clavuligera(アエガグロピロプシス・クラブリゲラ)と一致しました。Aegagropilopsis clavuligeraは、スリランカから最初に報告され、オランダの熱帯水族館および中国の河川などから見つかっている種で、「マリモ(Aegagropila linnaei)」や「タテヤママリモ(Aegagropilopsis moravica)」とは明確に分かれます。Aegagropilopsis属は二枚貝に付着して生活することが知られており、この山梨県の民家の水槽には国内産地のタイリクバラタナゴ以外の外来種の導入例がないため、本種はこの水槽で飼育しているタイリクバラタナゴの産卵用に導入した本栖湖産の二枚貝に付着してもたらされたと推定し、和名をモトスマリモ」と命名しました。
今回見つかったモトスマリモは、「マリモ」や「タテヤママリモ」と極めて似ているため、いままで混同されてきた可能性があります。本発表によって、様々な地域から報告される可能性があります。
私たちは2021年に山中湖のマリモの減少が地球温暖化によってもたらされている可能性があると発表しました。世界遺産・名勝・富士箱根伊豆国立公園として手厚く保護されている富士五湖ですが、その生物相については分かっていないことが多く、今後も調査を継続していく必要があると考えています。
「タテヤママリモ(Aegagropilopsis moravica)」は、立山市の民家に作られた池に突然発生し、当初は「マリモ」と同じと考えられていましたが、羽生田岳昭氏らによって1999年に「マリモ」とは遺伝子が異なる別種として報告されました。山中湖から亀田良成氏によって採集され、絵本「富士山のまりも(福音館書店)」によって知られるようになったマリモ類は遺伝子解析の結果、この「タテヤママリモ」であることが分かっています。これらのことから山中湖には2つのマリモ類がいたことが分かります。
これらのマリモ類は形態変異が大きく顕微鏡によって形態を調べるだけでは確実に分類することは難しく、最終的には遺伝子解析によって種を同定する必要があります。
著者:辻彰洋 (Tuji, Akihiro)・新山優子 (Niiyama, Yuko)
掲載誌:国立科学博物館研究報告 B類(植物学) (11月22日出版予定)
Bulletin of the National Museum of Nature and Science Series B (Botany)
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/bnmnsbot/-char/ja
本研究は、国立科学博物館の館内プロジェクト「文化財と自然史の関係を捉え直す−文化財の保護と活用に新たな視点を導入する自然史研究−」の一環で実施しました。
日本で見つかった球状になるマリモ類としては、「マリモ」「タテヤママリモ」についで3種目です。
【研究のポイント】
- 山梨県の民家で、淡水魚(タイリクバラタナゴ)を飼育していた水槽にマリモに似た藻類が大量に発生しました。
- この藻類の種レベルの差違をみるのに重要な遺伝子を解析した結果、オランダの熱帯水族館や中国の河川から報告されたAegagropilopsis clavuligera(アエガグロピロプシス・クラブリゲラ)の配列と一致しました。また、顕微鏡観察の結果、形態的特徴とも矛盾しませんでした。
- Aegagropilopsis clavuligeraは、日本で今まで報告がない日本新産種であり、本栖湖の二枚貝から発生したと推定されることから「モトスマリモ」と命名しました。
- マリモに似た球状の群体をつくるものとしては、「マリモ」「タテヤママリモ」についで3種目です。
- 研究の背景
今回、山梨県甲府市の民家の水槽からマリモが発生した(図1、図2)と連絡があり、調査を行いました。
- 研究の内容
顕微鏡観察の結果、「マリモ」「タテヤママリモ」と同様に枝分かれした糸状体が絡み合って球形の群体を作っていました(図3)。また、「マリモ」ではほとんど観察例がない遊走子(鞭毛を持って水中を遊泳する胞子:図4)も見つかりました。
種の区別に重要な遺伝子解析の結果(図5)から、今回の藻の配列はAegagropilopsis clavuligera(アエガグロピロプシス・クラブリゲラ)と一致しました。Aegagropilopsis clavuligeraは、スリランカから最初に報告され、オランダの熱帯水族館および中国の河川などから見つかっている種で、「マリモ(Aegagropila linnaei)」や「タテヤママリモ(Aegagropilopsis moravica)」とは明確に分かれます。Aegagropilopsis属は二枚貝に付着して生活することが知られており、この山梨県の民家の水槽には国内産地のタイリクバラタナゴ以外の外来種の導入例がないため、本種はこの水槽で飼育しているタイリクバラタナゴの産卵用に導入した本栖湖産の二枚貝に付着してもたらされたと推定し、和名をモトスマリモ」と命名しました。
- これからの研究について
今回見つかったモトスマリモは、「マリモ」や「タテヤママリモ」と極めて似ているため、いままで混同されてきた可能性があります。本発表によって、様々な地域から報告される可能性があります。
私たちは2021年に山中湖のマリモの減少が地球温暖化によってもたらされている可能性があると発表しました。世界遺産・名勝・富士箱根伊豆国立公園として手厚く保護されている富士五湖ですが、その生物相については分かっていないことが多く、今後も調査を継続していく必要があると考えています。
- マリモ類の分類学解説
「タテヤママリモ(Aegagropilopsis moravica)」は、立山市の民家に作られた池に突然発生し、当初は「マリモ」と同じと考えられていましたが、羽生田岳昭氏らによって1999年に「マリモ」とは遺伝子が異なる別種として報告されました。山中湖から亀田良成氏によって採集され、絵本「富士山のまりも(福音館書店)」によって知られるようになったマリモ類は遺伝子解析の結果、この「タテヤママリモ」であることが分かっています。これらのことから山中湖には2つのマリモ類がいたことが分かります。
これらのマリモ類は形態変異が大きく顕微鏡によって形態を調べるだけでは確実に分類することは難しく、最終的には遺伝子解析によって種を同定する必要があります。
- 発表論文
著者:辻彰洋 (Tuji, Akihiro)・新山優子 (Niiyama, Yuko)
掲載誌:国立科学博物館研究報告 B類(植物学) (11月22日出版予定)
Bulletin of the National Museum of Nature and Science Series B (Botany)
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/bnmnsbot/-char/ja
本研究は、国立科学博物館の館内プロジェクト「文化財と自然史の関係を捉え直す−文化財の保護と活用に新たな視点を導入する自然史研究−」の一環で実施しました。
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