『平成27年版 パートタイマー白書』を本日発行 「限定正社員」の現状と可能性に関する調査発表
本ニュースリリースは、本日発行した『平成27年版 パートタイマー白書』(全45項目・85ページ)の中から、調査結果を一部抜粋した発表です。
- 調査担当者のコメント
主任 小杉 雅和
企業における人材の不足感が高まっています。厚生労働省が公表している職業安定業務統計における有効求人倍率は、平成27年7月時点で1.21倍とバブル期以来23年ぶりの高水準となっています。既に、少子高齢化による生産年齢人口の減少も始まっており、企業にとって人材の確保は、今後ますます困難になっていくことが予想されています。一方で、総務省「労働力調査」(平成26年平均)では、役員を除く雇用者全体に占める非正規雇用労働者の割合は37.4%と約4割になっています。無期雇用である正社員と、有期雇用である非正規社員との二極化は、両雇用形態間における待遇の違いや有期雇用の不安定さ、非正規社員から正社員への転換の難しさなどの問題を抱えており、労働市場における大きな課題となっています。
人材の確保に悩む企業と、より積極的・安定的・継続的に働きたいと願う労働者。お互いが必要としあう環境にありながら、相反する課題となっているのはなぜなのでしょうか。今年の『パートタイマー白書』は、雇用の現状を検証しつつ、「企業と労働者の溝を埋めることができる“働き方”はどのようなものなのか」を探っていきます。
- 調査内容の抜粋
◆「限定正社員に該当する従業員がいる」と回答した企業は33.4%
企業に、限定正社員の有無と導入の意向を聞いた。「限定正社員に該当する従業員がいる」と回答した企業は33.4%と約3割。「限定正社員に該当する従業員はいないが、会社のしくみ・制度上では就業可能である」が15.6%、「限定正社員に該当する従業員はおらず、会社のしくみ・制度上では就業不可能であるが、今後導入に興味がある(導入を検討している)」が13.5%、「限定正社員に該当する従業員はおらず、会社のしくみ・制度上も就業は不可能であり、導入に興味もない(今後の導入も検討していない)」が37.4%となった。
◆正社員区分が複数ある働き方のメリット
限定正社員がいる企業といない企業で回答に大きな差
限定正社員がいる企業の方がさまざまな利点を感じている結果に
企業に、正社員区分が複数ある働き方についてのメリットを聞いたところ、「一般的な正社員よりも賃金等
の人件費が抑えられる」が最も多く28.1%、次いで「能力を考慮した人員配置ができる」24.8%、「メリットはない」22.6%、「業務に習熟した人材が定着する」21.9%、「限定正社員本人のモチベーションが向上する」19.3%、「評価に応じた適切な処置ができる」17.1%となっている。
「限定正社員がいる」企業と「限定正社員はいない」企業で大きな差が出た項目は「メリットはない」で、「限定正社員がいる」企業の方が22.1ポイント低くなっている。一方、「限定正社員本人のモチベーションが向上する」では11.5ポイント、「業務に習熟した人材が定着する」では10.5ポイントと、それぞれ「限定正社員がいる」企業の方が高くなっている。「限定正社員がいる」企業の各メリット項目に対する回答も多いことから、正社員区分が複数ある働き方の導入に対して、ある程度満足していることがうかがえる。
◆限定正社員の解雇について
「解雇のしづらさは正社員と変わらない」が68.4%
企業に、雇用調整を行う場合、限定正社員は一般的な正社員に比べて解雇しやすいと思うかと聞いたところ、「当然、正社員よりも解雇しやすい」が8.4%、「どちらかと言えば、正社員よりも解雇しやすいと思う」が23.2%で、両者を合わせると企業の31.6%が「正社員よりも解雇しやすい」と回答している。一方、「解雇のしづらさは正社員と変わらない」は68.4%となっている。
これを限定正社員の有無別にみると、「正社員よりも解雇しやすい」は「限定正社員がいる」企業で29.7%、「限定正社員はいない」企業で32.5%となり、「限定正社員がいる」企業の方が2.8ポイント低かった。
限定正社員という働き方について、「安易な解雇につながるのではないか」という意見を散見するが、今回の結果からは、そのような考えをもっていない企業が多いことがうかがえる。
◆限定正社員の今後の増減
「現状と変化なし」が多いものの、
限定正社員がいる企業では、いない企業よりも増加予想が高い
企業に、限定正社員の種類別と一般的な正社員について、それぞれ今後の増減を聞いた。
全体を通してみると、限定正社員については、「現状と変化はないと思う」が8割強と大勢を占めるものの、「増える(増やす)と思う」も約11%~16%の幅で回答がある。
これを限定正社員の有無別でみると、「増える(増やす)と思う」との回答は、「限定正社員がいる」企業の方が「限定正社員はいない」企業をすべての限定正社員の種類で上回っている。特に、「<勤務時間>のみ限定(22.6%)」、「<職種・職務+勤務地>が限定(22.3%)」、「<勤務地+勤務時間>が限定(20.6%)」、「<勤務地>のみ限定(19.8%)」が2割前後で上位となり、今後、これらの種類が限定正社員として普及していく可能性を感じる。
一般的な正社員についても今後の増減を聞いているが、「増える(増やす)と思う」が26.7%、「現状と変化はないと思う」64.3%、「減る(減らす)と思う」8.9%という結果となった。
【労働者からみた限定正社員】
◆限定正社員の認知度、限定正社員という働き方について
「聞いたことがある」が36.4%、「聞いたことはない」が63.6%
個人の回答者全員に、限定正社員という働き方を知っているかを聞いた。結果は、「聞いたことがあり、内容も知っている」が11.5%、「聞いたことはあるが、内容はよく知らない」が24.9%で、両者を合わせると回答者の36.4%が、限定正社員という働き方について「聞いたことがある」と回答した。一方、「聞いたことはない」は63.6%と6割を超えていた。
《雇用形態/正社員意向》別にみると、「聞いたことがある」との回答は、「非正規雇用/正社員意向なし」で28.5%、「非正規雇用/正社員意向あり」で38.5%、「正社員」で41.7%となった。
◆自身に健康の問題や家族に介護の必要などが発生した際、
限定正社員という働き方が「有効だと思う」51.1%
現在正社員で働いている者に、今後も正社員で働き続けるにあたり、今までの働き方では働き続けられない事情が生じた場合、限定正社員のような働き方は正社員として継続就業するのに有効かと聞いたところ、「有効だと思う」51.1%、「有効ではないと思う」13.8%、「わからない」35.1%という結果となった。
また、「今までの働き方では働き続けられない事情が生じた場合」を想定してもらったが、「自身の心身の健康状態に問題が生じた場合」54.8%と「家族に介護・看護の必要が生じた場合」53.4%が拮抗している。次いで「高齢になった場合」40.9%、「自身や配偶者に出産・育児の必要が生じた場合」28.7%、「転居が必要な転勤・異動を命じられた場合」26.4%となっている。
上位に挙がった2項目は、いつ誰に起こっても不思議ではない項目である。現状と同じ働き方ができなくなった場合に、正社員から限定正社員へと移行できれば、退職せずに働き続けられるかもしれない。
◆転居を伴う転勤の可否
異動の辞令を断り、退職する」は正社員男性が24.7%、正社員女性では48.2%
個人の回答者全員に、転居を伴う勤務先の異動を命じられた場合にどのように対応するかを聞いた。全体では、「異動の辞令を受ける」が45.6%、「異動の辞令を断り、退職する」が54.4%で、退職意向がやや強くなっている。
≪雇用形態/正社員意向/男女≫別にみると、「非正規雇用/正社員意向なし」の者は男女とも「異動の辞令を断り、退職する」が7~8 割に上る。一方、「非正規雇用/正社員意向あり」の者では、男性は「異動の辞令を受ける」が62.8%に上るものの、女性では37.0%に留まり、退職意向が強い。「正社員」も同様の傾向で、男性では「異動の辞令を受ける」者が75.3%に上るのに対し、女性は51.8%と大幅に低く、女性にとって転居を伴う転勤は大きな障壁であることがうかがえる。
◆現在正社員で働いている女性の45.0%が
「勤務地限定正社員で働きたい」と回答
現在正社員で働いている者に、一般的な正社員よりも労働条件が免除されている限定正社員という働き方が今後整備された場合、限定正社員として働きたいかを、限定正社員の種類別に聞いている。
職種限定正社員については、男性は「働きたい」20.6%、「働きたくない」31.8%。女性は「働きたい」31.3%、「働きたくない」23.0%となっている。
勤務地限定正社員については、男性は「働きたい」31.8%、「働きたくない」26.0%。女性は「働きたい」45.0%、「働きたくない」16.6%となっている。
勤務時間限定正社員については、男性は「働きたい」22.0%、「働きたくない」31.8%。女性は「働きたい」36.4%、「働きたくない」20.8%となっている。
現状の正社員という働き方から、単純に限定正社員として働きたいかを聞いているので、「働きたくない」との回答が多く集まると予想していたが、女性では3種類の限定正社員のすべてで、「働きたい」が「働きたくない」を上回っており、特に勤務地限定正社員でその傾向が顕著だった。また、男性では勤務地限定正社員だけが、「働きたい」が「働きたくない」を上回った。
本ニュースリリースは、本日発行した『平成27年版 パートタイマー白書』(全45項目・85ページ)の中から、調査結果を一部抜粋しています。全文は以下ウェブサイトでもご覧いただけます。
https://apj.aidem.co.jp/examine/
- 調査概要
【企業調査】雇用に関するアンケート調査
調査期間 :2015年6月25日~29日
調査方法 :WEBアンケート調査
有効回答者数:1,178社
調査対象 :30人以上の正社員を雇用し、かつ、パート・アルバイト、契約社員、嘱託社員の
いずれかの雇用形態の従業員を雇用している企業の経営者または人事関連部署の監督職以上の者
【個人調査】働き方に関するアンケート調査
調査期間 :2015年6月12日~16日
調査方法 :WEBアンケート調査
有効回答者数:1,814名
調査対象 :20歳から59歳までの男女で、現在、正社員、パート・アルバイト、契約・嘱託社員の
いずれかの雇用形態で就業している者
- アイデム人と仕事研究所について
https://apj.aidem.co.jp/
1971年に設立したアイデムは求人広告事業を展開し、創業以来、求人と求職の双方の視点から市場を見続けてきました。1993年には「アイデム人と仕事研究所」を立ち上げ、パート・アルバイトを中心とした労働力の活用・戦力化に関する研究を進め、企業と労働者双方への調査を毎年行っています。
- 株式会社アイデム 会社概要
http://www.aidem.co.jp/
【求人媒体事業】 アピール型就職活動サイト「JOBRASS新卒」・求人サイト「イーアイデム」運営
新聞折込求人紙「しごと情報アイデム」、求人フリーペーパー「ジョブアイデム」企画・発行
【人材紹介事業】 「Aidem Smart Agent(新卒・転職・シニア)
<発表内容ならびに取材に関するお問い合わせ>
広報担当/望月・栗木 電話:03-5269-8780 kouhousitu@aidem.co.jp
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