不良ミトコンドリアを色で見つけるセンサーを開発
-パーキンソン病のメカニズム解明に期待-
千葉大学大学院理学研究院 板倉英祐准教授らの研究グループは、パーキンソン病(注1)や癌の一因とされている不良ミトコンドリアを蛍光タンパク質によって可視化する「不良ミトコンドリアセンサー “Mito-Pain”」を開発しました(図1)。
Mito-Painを用いた解析と、ミトコンドリアにダメージを与えうる化合物のスクリーニングとを組み合わせることで、パーキンソン病の原因遺伝子のはたらきについて、これまで知られていた機能の他に、ミトコンドリアストレスの種類に応じて違うはたらき方をすることが明らかになりました。
この研究成果は、米国科学雑誌Journal of Biological Chemistryに10月4日(米国東部時間)に発表されました。
Mito-Painを用いた解析と、ミトコンドリアにダメージを与えうる化合物のスクリーニングとを組み合わせることで、パーキンソン病の原因遺伝子のはたらきについて、これまで知られていた機能の他に、ミトコンドリアストレスの種類に応じて違うはたらき方をすることが明らかになりました。
この研究成果は、米国科学雑誌Journal of Biological Chemistryに10月4日(米国東部時間)に発表されました。
- 研究の背景
- 研究内容詳細
Mito-Painを細胞に導入すると、1つのmRNAからPINK1-GFPとRFP-Omp25タンパク質が等量ずつ産生されます。RFP-Omp25はすべてのミトコンドリア膜上に局在します。一方でPINK1-GFPは不良ミトコンドリアの膜上のみに安定して局在します(図2B)。つまり健康なミトコンドリアはRFPのみ、不良ミトコンドリアはRFPとGFP両方を保持するため、黄色(赤と緑の混合色)の比率増加を不良ミトコンドリアの増加の指標として定量解析可能になりました。また、蛍光顕微鏡観察を用いて、細胞内の一部の不良ミトコンドリアのみを観察することで、局所的なミトコンドリアストレスの解析も可能です。
ミトコンドリアがストレスを受け不良ミトコンドリアとなると、PINK1と、この他にパーキンソン病の原因遺伝子産物として知られているParkinタンパク質が一緒にはたらき、オートファジーを介して不良ミトコンドリアを分解除去(マイトファジー)することが分かっています。Mito-Painによってミトコンドリアストレスを生じる種々の化合物について調べてみたところ、化合物の種類によってはPINK1だけでミトコンドリアストレスに応答する場合があることがわかり、PINK1はマイトファジーだけでなく、単独でミトコンドリア修復にはたらく機能をもつことが示唆されました。
- 研究者のコメント(千葉大学大学院理学研究院 板倉英祐准教授)
- 用語解説
(注2)PINK1遺伝子:パーキンソン病の原因遺伝子の一つ。遺伝子産物であるPINK1タンパク質は不良ミトコンドリア膜上で安定化すると、Parkinタンパク質にはたらきかけ、不良ミトコンドリアを分解除去するマイトファジーを誘導する。
(注3)DNAベクター:細胞に外来遺伝子を発現させるためのDNAからなる供与体。本研究ではMito-Pain DNA配列とそのタンパク質発現に必要なDNA領域をコードしたDNA。
- 論文情報
・論文タイトル:Labeling and Measuring Stressed Mitochondria Using a PINK1-Based Ratiometric Fluorescent Sensor
・著者:Rie Uesugi, Shunsuke Ishii, Akira Matsuura, Eisuke Itakura
・DOI:https://doi.org/10.1016/j.jbc.2021.101279
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