住まいの空気環境の向上による健康増進効果を実証

化学物質濃度の低減は休息時のリラックス効果を高める

国立大学法人千葉大学

 千葉大学予防医学センターの中山誠健特任准教授らによる研究グループは、計169名を対象とした脳波測定実験によって、化学物質濃度が極めて低い室内環境では休息時のリラックス状態を向上させる効果があることを実証しました。
 この結果により、化学物質の濃度を低減させることは、シックハウス症候群(注)の予防だけでなく休息時のリラックス効果を高める効果があることが明らかになりました。
 本研究成果は国際学術誌International Journal of Environmental Research and Public Healthに2021年9月29日に掲載されました。

  • 研究の背景と目的
 室内の化学物質濃度を低減させることは、シックハウス症候群の発症を予防する方法の一つであることが報告されています。その一方で、化学物質濃度を低減させたことによる空気環境の向上が、生活者の日常的な作業効率や休息に与える影響など、健康維持や増進効果について調査・報告する研究はありませんでした。
 研究グループは、住環境の空気環境を改善することが、化学物質に敏感で悩みを持つ人々だけでなく、一般的な人々の健康にも重要であることを把握するために、住環境の向上と健康の関係を調査する必要があると考えました。
 本研究では、感性や印象だけでは評価しにくいリラックス状況を脳波測定によって定量的に解明することを目的としました。
  • 研究の内容

間取りや内外装の見た目は同じだが、化学物質濃度のみ異なる実験住宅棟間取りや内外装の見た目は同じだが、化学物質濃度のみ異なる実験住宅棟

 内外装の見た目や環境が同等で化学物質濃度だけが異なる2棟の実験住宅棟(写真)で、様々な年齢や性別の計169名を対象とした90分間の滞在実験を実施しました。部屋には被験者のみで、快適に過ごせる実験環境下で実施しました。滞在中には、20分間の作業(計算や暗記課題)と10分間の休息(目を閉じて安静にする)時間をもうけて、脳波を測定しました。その他の60分間は、自由にくつろいでもらいながら、臭気の強さや好み、空気環境に対する印象や快適性などのアンケートに回答してもらいました。
 なお、被験者には環境の違いを知らせずに行う「ブラインドテスト」で実施し、事前に年齢や性別、体温、血圧、アレルギー反応、ストレス状況なども測定・調査しました。休息時のリラックス状況は、個人差や多様な環境条件を考慮して解析しました。
  • 今後の展望
 昨今の感染症の影響もあり、多様な働き方や生活スタイルの変化によって、住環境のあり方が変わってきています。住環境の空気環境と健康の関係について、身体的な影響だけでなく精神的な影響(メンタルヘルス)の観点から、継続的な調査・分析を続けていく予定です。
  • 研究資金について
 この研究は、積水ハウス株式会社と日本学術振興会、科学研究費助成事業の基盤Cおよび若手(助成金番号:19K12455、18K13885)、JST OPERA(JPMJOP1831)のサポートを受けています。データ解析、論文執筆に関して一切の関与はありません。
  • 論文情報
タイトル:Assessment of Personal Relaxation in Indoor-Air Environments: Study in
Real Full-Scale Laboratory Houses.
著者:Nakayama Y, Suzuki N, Nakaoka H, Tsumura K, Takaguchi K, Takaya K,
Hanazato M, Todaka E, Mori C.
掲載雑誌:International Journal of Environmental Research and Public Health
DOI:https://doi.org/10.3390/ijerph181910246
  • 用語解説
(注)シックハウス症候群:室内には多くの汚染物質があり、それらを吸い込んだりすることで起こる「鼻のムズムズ・鼻水」「頭痛」「のどの乾燥」「目のチカチカ」など様々な健康障害の総称。症状の重さや頻度は人によって異なり、外気に触れる事で症状が緩和する事もあるため、そのまま過ごしてしまうケースが多くあり、アレルギー疾患増悪との関連を示す報告もされています。

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会社概要

国立大学法人千葉大学

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URL
https://www.chiba-u.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33  
電話番号
043-251-1111
代表者名
横手 幸太郎
上場
未上場
資本金
-
設立
2004年04月