NEC、NTTコムウェア、長崎大学 橋梁維持管理高度化に向け連携開始
~インフラメンテナンス画像認識AIと3Dデータ解析を組み合わせ、橋梁点検実証に成功~
日本電気株式会社(以下、NEC)、NTTコムウェア株式会社(以下、NTTコムウェア)、国立大学法人長崎大学(以下、長崎大学)は、点検・診断・措置・計画というメンテナンスサイクル構築による橋梁の維持管理高度化をめざし、2023年10月より共同研究および技術的連携を開始しました。連携の第一弾として2024年1月、橋梁等インフラ構造物の維持管理における長崎大学の工学的知見に基づく、NTTコムウェアのインフラメンテナンス画像認識AIとNECの3Dデータ解析技術を活用した橋梁点検の実証に成功しました。
日本の道路や橋梁といったインフラ構造物の多くは高度経済成長期に整備されており、今後老朽化が進行していきます。特に、橋梁は構造物として部材の種類が多く、点検・診断には熟練者のスキルや川辺・高所など多様な環境条件への対応が必要で、メンテナンス品質や安全性を確保することが課題となっています。さらに将来を見据えた修繕計画策定や予防保全といった全体のメンテナンスサイクルの構築による、戦略的な維持管理とライフサイクルコスト(LCC)最適化が必要となっています。
このような背景のもと、NEC、NTTコムウェア、長崎大学は、橋梁の維持管理高度化を実現するソリューション提供に向け、メンテナンスサイクルの点検・診断工程での実証を行いました。本実証はNTTコムウェアのSmartMainTech®※1のインフラメンテナンスで培ってきた画像認識AIによる劣化検出技術とNECの3Dデータ解析技術を連携し、長崎大学の橋梁診断の知見を得て実現したものです。ソリューション化にむけては、点検・診断・措置・計画のメンテナンスサイクルの各工程をAIで支援するとともに、基盤上にデジタルツイン化して記録を蓄積、統合的なデータ活用を可能とします。
本実証では2024年1月、長崎市内のコンクリート橋梁2基を対象に、インフラメンテナンス画像認識AIによる損傷検出や、3Dモデルでの損傷個所管理などNTTコムウェアとNECの技術を組み合わせて点検データを取得し、長崎大学の診断モデルへ連携することに成功しました。メンテナンスサイクルにおいて、AIによる点検判定をデジタル出力し診断を行うまでの処理フローを確立、デジタルツイン化による点検業務の省力化と品質の均一化の実現性を確認することができました。これらの技術が点検・診断業務に活用されることにより、点検・診断業務に要する時間の約3割削減を見込んでいます。
さらに、ライフサイクルコストの最適化に繋がる統合的なソリューション提供に向け、措置・計画工程では、修繕計画策定を支援するAIや、劣化予測AIとの組み合わせにより予防保全を可能とするなど、メンテナンスサイクル全体で蓄積したデータを分析・活用することで戦略的な維持管理を実現するために3者で連携し取り組みます。
今後は長崎県内の各市町村における橋梁点検業務への展開をはじめとし、全国への展開をめざします。3者で連携し、点検・診断・措置・計画のメンテナンスサイクル全体を支援するソリューションを社会実装することにより、橋梁維持管理の社会インフラコストの最適化に貢献します。
※1:SmartMainTechについては以下をご覧ください。SmartMainTechは、NTTコムウェア株式会社の登録商標です。
https://www.nttcom.co.jp/smtech/
【お問い合わせ先】
日本電気株式会社
NEC テレコムサービス企画統括部
E-mail:contact@nwsbu.jp.nec.com
NTTコムウェア株式会社 広報室
E-mail:kouhou@nttcom.co.jp
長崎大学
工学研究科 准教授 山口浩平
E-mail:kohei@nagasaki-u.ac.jp
別紙
橋梁点検 実証概要
時期 2024年1月
実証対象 長崎県長崎市の2基のコンクリート橋梁(戸根原橋 および 清観橋)
目的
橋梁メンテナンスサイクルの点検・診断工程において下記を確認するため
・NTTコムウェアとNECの技術を組み合わせたデータ取得が可能であること
・取得したデータを長崎大学の診断モデルで活用可能であること
対象業務と課題
・橋梁点検工程では点検員が国土交通省の判定基準に従い、部材、損傷種別ごとに損傷程度を原則5段階で評価。画像も含む点検結果について分析等可能な形式として蓄積されていないことから、過去評価との比較などが難しい。
・橋梁診断工程では、損傷程度の評価を見て、診断員が過去の経験や知識から対策区分、健全性を診断。診断員のノウハウによって診断結果が異なる場合もあり、診断品質の均一化、適正化が課題である。
実証内容
点検工程における技術検証
・コンクリート橋梁について2D画像撮影、3Dデータの取得(LiDAR撮影)
・インフラメンテナンス画像認識AIにより撮影画像から「ひび割れ」「はく離鉄筋露出」の損傷種別検出
・実寸大3Dモデルとしてコンクリート橋梁をデジタル化、損傷を検出した2D画像を照合
・損傷のサイズ・位置を算出、3Dモデル上で損傷部を表示してデジタルツインとして管理
・損傷種別・サイズ・位置情報から、国土交通省の判定基準に従い、損傷程度の評価を実施
診断工程におけるデータ連携の確認
・点検結果(損傷の程度評価)を診断モデルで解析し、診断結果が出力されることを確認
3者の役割
NEC :3Dデータ解析技術の提供
NTTコムウェア:インフラメンテナンス画像認識AI技術の提供
長崎大学 :橋梁メンテナンスの知見および診断モデル技術の提供
本実証に利用した技術
・3Dデータ解析(NEC)
LiDARで計測して得られる橋梁の実スケール点群の3Dモデルと、点検時に損傷を撮影・記録するカメラの画像(2D)とを、3Dデータ解析技術により自動的にマッチング。損傷の3次元的な位置を特定し、2D画像解析で得た画像内で特定された損傷部に基づき損傷のサイズと位置の実スケールをデジタルツイン上で自動的に算出。その情報を利用し、対象橋梁に生じている「ひび割れ」に関する損傷の程度を判定。
・インフラメンテナンス画像認識AI(NTTコムウェア)
社会インフラメンテナンスのソリューションブランド「SmartMainTech」におけるマルチAI技術をベースに、インフラメンテナンス画像認識AIにより橋梁の「ひび割れ」「はく離・鉄筋露出」を検出。検出結果に3Dデータ解析のため、検出箇所の頂点座標位置の情報を付加するなどデータ連携方式を確立。
・診断モデル(長崎大学)
橋梁の診断工程で行われる対策区分、健全性の判断結果について、機械学習を用いて自動判定。診断員のノウハウにより判定結果が異なる現状を踏まえ、点検調書などから診断に至った点検結果以外の判断基準を洗い出し、点検結果、判断基準、診断結果の関係性を機械学習によって算出しモデル化。
実証結果
・2 基の橋梁を対象に損傷部を撮影した画像から、コンクリート橋梁の損傷のうち多くを占める「ひび割れ」、「はく離・鉄筋露出」について自動抽出を実現。
・「ひび割れ」の例では、撮影画像に映り込む「ひび割れ」のうち、約80%※2を検出しました。
・NECとNTTコムウェアの技術を組み合わせて取得した点検データを、長崎大学で開発された診断モデルの入力情報(損傷種類・部材・程度)とすることで、点検から診断までの一連の動作を確認しました。
※2 本検証で撮影したサンプルデータの中から50枚の画像を対象に評価。画像内のひび割れ部分に対して人手で正解ラベルを付与し、AI解析結果との差分を算出。ひび割れがあることを検出できた割合が80%を達成。
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