誰もが納得する文章を、はやく、正確に書くための「新聞記者のテクニック」。『即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術 数字・ファクト・ロジックで説得力をつくる』、発売!
必要なのは、人をその気にさせ、納得して読み進めてもらうための方法です。
それを身につけるのに、新聞記者のテクニックが役に立つのです。
データを揃え、資料も読み込み、いざ企画書作成に取りかかろうとしたのに、パソコンを前に固まってしまった……。
そんな経験ありませんか。
情報が爆発的に生み出される時代にあって、文章に苦手意識を持っているビジネスパーソンは多いようです。作成に膨大な時間がかかったり、それにもかかわらず書き直しを命じられたり、文意が伝わらないために発生したミスの対応に追われたり。
そんなことが重なれば、帰宅する時間も遅くなるし、デートをすっぽかすはめにもなるし、さらには周囲の信頼を失ってしまうかもしれません。
しかし、文章の上手い下手は、生まれつきの能力ではありません。
バレエのプリンシパルらを対象にした研究結果から導き出された「1万時間の法則」をご存じでしょうか。ある分野でスキルを磨いて一流になるには1万時間の練習が必要というものです。実際、一流あるいはプロフェッショナルと呼ばれる人たちは数々の経験や長期間にわたる訓練を積んでいます。
私自身、学生時代の国語の成績はほめられたものではありませんでした。新聞記者になりたての頃は「ベタ記事」のような短い文章を書くのに半日以上四苦八苦しました。しかし、これまで30年間、1万時間を優に超える記者としての経験を積んだ結果、苦手意識を克服し、「伝わる文章」を書けるようになりました。
もちろん、ムダな努力をする必要はありません。
文章には「型」があり、伝えるためには「コツ」があります。その種類は多くありません。「結論」あるいは「主張」を先に書き、それを補足する理由や客観的事実を重要な順に書いていく──ただそれだけです。
わかりやすく伝わる文章をはやく書ければ、生産性が上がり、働き方も変わります。デートに遅れることもなくなるし、周囲の評価も変わってくるでしょう。
文章に苦手意識はなく、作文の成績も良かったのに、上司から「なんだこの文章は! 意味不明だぞ!」とダメ出しを食らった。SNS(交流サイト)では共感を得られる文章が書けるのに、職場では今ひとつ評価されず、納得がいかない。そんな人も意外と多いようです。
こうした〝悲劇〟が起きるのはなぜでしょう。それは、ビジネス文章とSNSとでは求められるものが違うからです。そもそも読み手が違いますし、オン(ビジネス)とオフ(プライベート)、娯楽と実用というように、読まれる場面もまったく異なります。
ビジネスの文章は、書くこと自体が目的ではありません。特に企画・提案書は、相手にこちらが思うように動いてもらうことが目的です。だから、〝きれいな文章〟が〝良い文章〟とは限りません。
ビジネスの現場で川端康成のような名文家やスティーブ・ジョブズのような名スピーカーになる必要はないのです。私たちは彼らとは違った「近道」を見つけ、「簡単に伝わる」文章のテクニックを身につけたいものです。その「近道」として、新聞記者のテクニックが役に立つのです。
本書は新聞記者として培った文章術をお伝えするのが目的です。具体的には、ファクト(客観的事実)、データ(数字)、ロジック(論理)の3つの要素が揃った「説得力」と「納得感」のある文章をはやく書くテクニックです。
すぐにビジネスで使えるように、ポイントごとに例文を入れました。第8章では、長めの文章を書く人のための練習問題を揃えてみました。手を動かしてみることで理解が深まり、コツが身についていきます。
「ローマは一日にしてならず」とは歴史的事実ですが、ムダな努力や遠回りをしない「伝わる文章術」を丁寧にお伝えしていきます。
白鳥和生(しろとり・かずお)
日本経済新聞社 編集 総合編集センター 調査グループ次長。
明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を長く担当した。『日経MJ』デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に『ようこそ小売業の世界へ』(商業界)、『2050年 超高齢社会のコミュニティ構想』(岩波書店)、『流通と小売経営』(創成社)などがある。仕事の旁ら日本大学大学院総合社会情報研究科でCSR(企業の社会的責任)を研究し、2020 年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。
http://books.cccmh.co.jp/list/detail/2533/
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