アパレル・ファッション業界の「転職求人倍率」(2022年4~6月期)を発表採用活動が活発化し、求人数は過去最高レベル
求人の復活により転職希望者も増加し、転職求人倍率は1.79倍
※前期:2022年1~3月
■全国の転職求人倍率
転職求人倍率は1.79倍(前期比−0.28ポイント) 企業の採用活動が活発化したしたことを背景に、転職希望者数も大幅に増加。転職市場は活発に |
アパレル・ファッション業界の2022年4~6月期の転職求人倍率は、1.79倍でした(表①参照)。例年、新卒社員が入社する春頃は、中途採用が落ち着く傾向にありますが、今年は多くの企業が採用活動を継続したため、求人数は微増。こうした動きを受け、登録者数も増加したため、転職求人倍率は前期比で微減しました。
一方、2021年4~6月期の転職求人倍率(1.13倍)と比較すると+0.66ポイントと大きく増加し、2022年に入り転職市場が活発化していることがわかります。
新規求人数も引き続き好調に推移。2021年4~6月期の新規求人数は、コロナ流行前の2019年4~6月期と比較し110.7%で、本データを取得し始めた2019年4~6月期以降、過去最高の水準まで回復しています(グラフ①参照)。また、前年同期比は121.9%でした。
●利益の拡大を目的に、「生産管理」や「店舗開発」では優秀な人材を求める企業が増加
客足の回復とともに実店舗の売上が伸長している企業では、売上や利益の拡大を見込み、「生産工程の見直し」や「新規出店」「店舗のリニューアル」、すなわち「営業/店舗開発」に注力する傾向が高まっています。
こうした動きを受け、販売時期や生産枚数の予測、素材調達や納期管理、価格設定といった、商品を生産する工程の管理を担う「生産管理」の採用を強化する企業が増加。新規求人数は前期比148.3%と大きく伸長しました。店舗の新規出店の際には、エリアや立地、さらにはどの百貨店やショッピングモールに店舗を構えるかが非常に重要になります。そのため「営業/店舗開発」では、市場調査や分析のスキルに長けた人材の採用に注力する企業が増加し、新規求人数は前期比127.6%となりました。
また、両職種は、事業の成長を左右させるポジションであることから、経験や知識を持ち即戦力となる人材を求める企業がほとんどです。そのため、採用が活発化する動きを受け、より良い条件の企業への転職を希望する人が増え、結果、登録者数の伸びが求人数のそれを上回り、転職求人倍率は前期比で微減しました。
●販売職は、コロナ流行以降変わらずラグジュアリーブランドがけん引
国内ブランドでは、採用難から未経験採用を復活させる企業も
「販売/店舗」の転職求人倍率は、新規求人数は微減したのに対し登録者は微増したため、前期比−0.23ポイントの1.82倍となりました。転職求人倍率は微減したものの、「販売/店舗」に含まれる販売職の転職市場は、2022年に入り、転職希望者優位の状態が続いています。
店舗への客足が回復した今、顧客体験に直結する販売員の重要性はより一層高まっています。そのため、買い手から売り手市場へと変化をしても採用基準は落とさず、接客力やマネジメント力、ブランディング力といったスキルに長けた人材を採用したいという企業が多い状態が続いています。特に、求人数をけん引している外資系ラグジュアリーブランドでは、その傾向が顕著に表れています。
一方で、採用基準が高まったことにより、採用に至るまでの期間が長期化する傾向が見られています。また、国内ブランドでは、2020年に新卒・中途採用の中断や抑制を行ったことによるマイナス分を埋めるための「人員補充」、新規店舗出店の見越した「新規募集」を理由に採用を行う企業が増加しています。そのため、人員確保が急務な企業では、未経験や経験が浅い層の採用も再開する動きが見られています。
■エリア別 転職求人倍率
※前期:2022年1~3月 ※北海道・北陸・中国四国エリアは参考値
<対象エリア>
北海島・東北:北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島
関東:東京、千葉、埼玉、神奈川、群馬、栃木、茨城、
北陸・甲信越:山梨、長野、新潟、富山、石川、福井
中部:愛知、岐阜、三重、静岡
関西:滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
中国・四国:鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、高知.
九州・沖縄:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
【解説】
全エリアで転職求人倍率は下降トレンドに 郊外エリアでは、販売職を中心に採用に苦戦。間口を広げて採用活動を行うケースも |
エリア別でみると、全体的に転職求人倍率は低下傾向でした(表②参照)。一方、求人数はエリアによって傾向が分れる結果となりました。コロナの影響を受け、アパレル業界以外も視野にいれて転職活動を行う人が増加しています。特に首都圏以外のエリアではその傾向が強まり、転職求人倍率の数値以上に採用難易度が高まっています。そのため、即戦力採用から育成を見越したポテンシャル採用に踏み切るなど、条件を見直し、間口を広げて採用を行うケースもみられています。
●中部・関西エリア:首都圏同様、「新規出店」「店舗拡張」を背景に販売職の採用は継続
東海・関西エリアでは、転職求人倍率・求人数ともに前期比がマイナスとなりました。例年4月~6月は、求人数が減少傾向にあり、今年も同様の動きが見られています(グラフ②参照)。とくに、本社管轄のポジションで採用が落ちつきました。その一方で、「新規出店」や、リニューアルに伴う「店舗拡張」などを背景に販売職の採用は継続して行われています。販売職の採用ニーズは非常に高く、従来あまり見られなかった採用における2つの特徴が浮き彫りになりました。
1つ目は、エリアを限定した採用説明会の実施です。採用説明会は今まで首都圏で行われることが多かったですが、最近では、ラグジュアリーブランドを中心に中部・関西などのエリアで説明会を実施する企業が増えています。これには、転職希望者が企業やブランドについての興味を深めた状態で、選考を進めることで採用成功率を高めたいという企業の意向があると考えられます。
2つ目は、雇用形態の見直しで、中部エリアを中心に派遣社員や契約社員で募集していたポジションを正社員へ切り替える動きが見られています。この背景には、外国人観光客の受け入れ再開などにより、コロナ以前の状態に徐々に戻りつつあるなか、インバウンドの復活を見越して、販売力を強化したいと考える企業が増加したことが挙げられます。
●中四国エリア:引き続きラグジュアリーブランドが求人を牽引
中四国エリアの求人数は、前期比で186.7%と大幅に増加しています。元々、他エリアと比較して求人が少ないエリアではありますが、2021年終わりごろから、ラグジュアリーブランドが関東・中部・関西を除く郊外エリアでも採用を活発化させています。中四国では、引き続きラグジュアリーブランドの採用が活発化していること、また岡山・広島エリアを中心に国内ブランドでも人員補充を背景に採用が復活したことから、求人数が大きく伸びました。
<算出方法>
求人倍率算出方法:転職求人倍率=求人数(採用予定人数)÷登録者数
求人数:算出期間に新たに登録された新規求人数(採用予定人数)と、算出期間以前からの繰越求人数(採用予定人数)の合算
登録者数:算出期間に新たに登録した新規登録者数と、算出期間以前から継続登録している繰越登録者のうち算出月に1件以上の求人に応募した登録者の数を合算
■解説者プロフィール クリーデンス 事業責任者 河崎 達哉(かわさき たつや)
1984年、兵庫県生まれ。
2008年、株式会社インテリジェンス(現社名:パーソルキャリア株式会社)入社。
キャリアアドバイザーとして、IT・ウェブ領域や金融、医療を担当。また、さまざまな業界のハイクラス層の転職も支援。これまでに支援した転職希望者は、1,500名を超える。
キャリアアドバイザー部門のゼネラルマネジャーを経て、2019年4月からは「クリーデンス」の事業責任者として、アパレル・ファッション領域の人材サービスをけん引している。
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