【国立劇場】2月文楽公演 名物企画が登場! 『近松名作集』
日本近世文学の巨人・近松門左衛門 円熟期の傑作3作品を堪能する
近松門左衛門(1653年-1725年)は、偉大な浄瑠璃作者であるにとどまらず、日本の近世文学を代表する巨人です。国立劇場では、2月の文楽公演において、たびたび、『近松名作集』と銘打ち、近松の傑作の数々を上演してまいりました。
初代国立劇場さよなら公演の一つである令和5年2月文楽公演は、現在の国立劇場小劇場公演としては最後の『近松名作集』として、近松門左衛門の円熟期に書かれた傑作3作品を上演いたします。
いずれも日本文学史に燦然と輝く名作を、人形浄瑠璃文楽座の一同が精力を傾けて上演いたします。
近松の浄瑠璃の精髄を存分に堪能できるまたとないチャンスです。
近松心中物の最高傑作 『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』
『心中天網島』は享保5年(1720年)12月に竹本座で初演されました。
執筆時、近松門左衛門は67歳で、前年に『平家女護島』、翌年には『女殺油地獄』を発表する、円熟味を増して浄瑠璃作者として最も充実していたころの作品です。
近松の心中物の多くが、実際に起きた事件を脚色して書かれたことは有名です。この作品も、同年10月に大坂・網島の大長寺(大阪市都島区中野町)で起きた心中事件を元に書かれました。
近松の心中物の代表作である『曽根崎心中』や『冥途の飛脚』のように、若い恋人同士が切羽詰まった状況に追い込まれ、まっすぐに心中に邁進していく物語とは異なり、本作品で描かれるのは「避けようとしても避けられなかった悲劇」です。
特に、紙屋治兵衛を愛する二人の女、紀伊国屋小春と妻おさんが、「最悪の悲劇」を避けるために、互いに“義理”を果たそうとする姿が本作品の大きな見どころです。
本作品は“女たちの物語”でもあるのです。
治兵衛、小春、おさんのほかにも、治兵衛の兄の孫右衛門、恋敵である太兵衛、そしておさんの父の五左衛門など多彩な人物が、細緻な心理描写により描かれており、彼らの思惑が錯綜し、運命は避けられない悲劇へと進んでいきます。近松の筆による充実した作劇は、その文章も大変優れたものと評価されています。
近松門左衛門の心中物の到達点、最高傑作との呼び声も高い本作を、充実した配役で、存分にお楽しみいただきます。
「父は唐土、母は日本」大スケールで描く時代物の金字塔 『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』
『国性爺合戦』は正徳5年(1715年)11月に竹本座で初演されました。この前年、義太夫節を確立した近松の盟友竹本義太夫(筑後掾)が没しました。竹本座を引き継いだ竹本政太夫(後の二代目竹本義太夫)は、まだ弱冠24歳。この若手の太夫のために本作は書き下ろされました。
中国人の父、日本人の母を持ち、台湾で清朝に抵抗した明の遺臣鄭成功を題材に、日本と中国大陸を股にかけた壮大なスケールの物語が繰り広げられる近松の時代物の代表作で、そのドラマチックな展開と異国情緒の物珍しさから、初演から足かけ3年、17ヶ月ものロングランを記録した大ヒット作となりました。
中国人の父、日本人の母を持つ青年・和藤内と巨大な虎が大立ち回りを演じる「虎狩りの段」に続く、「楼門~獅子が城の段」が本作品の眼目で、初演以来絶えず上演される名場面です。
佞臣の裏切りにより韃靼国に滅ぼされた大明国の再興のため、中国人の父と日本人の母とともに中国大陸へ渡った和藤内は、元明国の将軍である五常軍甘輝を味方に引き入れるべく、今は彼の妻となっている腹違いの姉・錦祥女を訪ねていきます。力ずくで話をつけようとする和藤内を制して、錦祥女と老母は、何とか甘輝の説得を試みます。
「夫が味方になれば白粉を、敵となるなら紅を流す」との錦祥女は約束し、和藤内は城の外でその知らせを待つのですが、女たちの必死の説得もむなしく、水路には紅が流れ、物語は一気に和藤内と甘輝、二人の英雄が対峙するクライマックスへ。
人形浄瑠璃の時代物の金字塔を、ぜひお見逃しなく。
“キレる若者”の虚無と衝動殺人を描いた 『女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)』
『女殺油地獄』は、『心中天網島』初演の翌年、享保6年(1721年)7月に竹本座で初演されました。『天網島』同様、実際に起こった殺人事件をもとに脚色したといわれています。
上演当時はそれほど評判にならず、初演以降、ほとんど再演されることのない、“埋もれた名作”でした。
明治になり、坪内逍遥が近松の再評価をした際に再発見され、まずは歌舞伎で、そして昭和に入ってから文楽で上演されるや、瞬く間に人気作品となりました。
本作の主人公河内屋与兵衛は、遊ぶ金欲しさによる借金で首が回らなくなり、ついに殺人を犯します。忠義や義理のため、やむにやまれず人に手をかけることが多い浄瑠璃のキャラクターの中でも、与兵衛の造形は特に異質なものです。殺されるお吉は、与兵衛と色恋沙汰もなく、与兵衛にとっては姉のような存在です。しかし、家業をかえりみぬ与兵衛のことを思うがゆえに、彼を更生させようとして、無残にも殺されてしまいます。衝動的に刃を手にする与兵衛の姿は、現代の“キレる若者”にも通ずる普遍性を帯びています。
近代心理劇を見ているかのように全編を漂う緊迫感、すべてが終わった後の圧倒的な虚無感。現代でも十分に起こりうるような切実さをもって我々に迫ってくるこの殺人の物語は、近松門左衛門の類まれなる先見性を感じさせます。
人間では表現することが難しい、人形ならではの激しい動きで、油にまみれながら繰り広げられる凄惨な殺し場は
作品随一の見どころで、必見です。
近松が描いた異色の作品をたっぷりとご堪能ください。
プレスリリースはこちらから
https://prtimes.jp/a/?f=d47048-20230123-955921a5edb3b3f4427e84f1531767c2.pdf
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初代国立劇場さよなら公演
2月文楽公演 近松名作集
第1部(午前11時開演)
心中天網島
北新地河庄の段
天満紙屋内の段
大和屋の段
道行名残の橋づくし
第2部(午後3時15分開演)
国性爺合戦
千里が竹虎狩りの段
楼門の段
甘輝館の段
紅流しより獅子が城の段
第3部(午後6時30分開演)
女殺油地獄
徳庵堤の段
河内屋内の段
豊島屋油店の段
※字幕あり
※休憩あり
主催=独立行政法人日本芸術文化振興会
【公演詳細】
令和5年 2月4日(土)~21日(火)
国立劇場 小劇場(〒102-8656 千代田区隼町4-1)
【料金[各部・税込]】
1等席 7,000円(学生4,900円)
2等席 6,000円(学生4,200円)
※障害者の方は2割引です。(他の割引との併用不可)
※車椅子用スペースがございます。
チケットのお求めは
国立劇場チケットセンター 0570-07-9900
https://ticket.ntj.jac.go.jp/
プレスリリースはこちらから
https://prtimes.jp/a/?f=d47048-20230123-955921a5edb3b3f4427e84f1531767c2.pdf
国立劇場について
日本の伝統芸能の保存及び振興を目的として昭和41年(1966)に開場。外観は奈良の正倉院の校倉造りを模している。大劇場・小劇場・演芸場・伝統芸能情報館を備え、多種多様な日本の伝統芸能を鑑賞できる。初心者や外国人を対象とした解説付きの鑑賞教室も開催している。
所在地:東京都千代田区隼町4-1
03-3265-7411(代表)
https://www.ntj.jac.go.jp/
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