第1回メタンハイドレート海洋産出試験に関する高被引用論文表彰のお知らせ
JOGMEC(本部:東京都港区、理事長:細野 哲弘)が国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)および日本メタンハイドレート調査株式会社(JMH)とともに組織するMH21-S研究開発コンソーシアム(MH21-S)が実施した第1回メタンハイドレート海洋産出試験(2013年)に関する論文が2件、権威ある国際学会より高被引用論文として表彰されましたのでお知らせします。
このたび、MH21-S研究開発コンソーシアム(旧MH21)メンバーにより発表された、第1回メタンハイドレート海洋産出試験に関する論文2件が、それぞれ、Royal society of Chemistry (英国王立化学会)の出版する6雑誌において2019年の高被引用論文(Top 5%)として、また米国化学会(American Chemical Society)の出版するEnergy and Fuels誌において2017年出版論文の被引用数上位25件の論文(Top 25 most cited articles in 2017)として、表彰されました。
■ Royal society of Chemistry (英国王立化学会)からの表彰
受賞論文の概要
2013年に行われた第1回海洋産出試験で取得した温度モニタリングデータを解析した結果をまとめています。この解析によりメタンハイドレート分解が生じた深度がわかり、またハイドレートの分解が早く進んだ区間や、水を特異的に生産した区間が存在するなど、不均質な生産特性がみられることがわかりました。さらに、貯留層の初期浸透率を見積もることができました。さらに、試験の早期終了につながった出砂現象の発生深度を見積もることができました。
これらの成果は、第2回メタンハイドレート海洋産出試験の計画の基礎となったほか、諸外国の研究計画構築の基盤となったと考えられます。
タイトル・書誌
「Thermal responses of a gas hydrate-bearing sediment to a depressurization operation」
RSC Advances(インパクトファクター3.070), 2017, 7, 5554-5577
著者
山本 晃司(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
菅野 貴行(Schlumberger K. K., Kanagawa, Sagamihara, Japan)
X.-X. Wang(Baker Hughes Inc., Houston, TX, USA)
玉置 真知子(日本オイルエンジニアリング株式会社)
藤井 哲哉(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
S.-S. Chee(Schlumberger K. K., Kanagawa, Sagamihara, Japan)
X.-W. Wang(Schlumberger K. K., Kanagawa, Sagamihara, Japan、現マスワークス合同会社)
V. Pimenov(Schlumberger Moscow Research Centre, Moscow, Russia)
V. Shako(Schlumberger Moscow Research Centre, Moscow, Russia)
論文
Thermal responses of a gas hydrate-bearing sediment to a depressurization operation
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2017/RA/C6RA26487E#!divAbstract
Open Access Article. Published on 17 January 2017.
This article is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported Licence.
■ 米国化学会(American Chemical Society)の出版するEnergy and Fuels誌からの表彰
受賞論文の概要
第1回海洋産出試験のガス・水生産レートの実測とシミュレーション結果を比較することにより、合理的な初期及び絶対浸透率のモデルを構築し、実測とモデルの良好な一致を見ることができました。この結果は、岩相およびハイドレート飽和率を考慮した浸透率決定の指針となりました。また、低飽和率の層が水生産層として働き隔離の対象となることなど、その後の生産計画立案の目安ともなりました。さらに、減圧を長期に延長できた場合、日産9万立法メートル以上のガス生産が期待できることを示し、研究計画の立案に寄与しました。これらの成果は、諸外国のメタンハイドレート研究にも取り入れられています。
タイトル・書誌
「Key Findings of the World’s First Offshore Methane Hydrate Production Test off the Coast of Japan
:Toward Future Commercial Production」
Energy & Fuels(インパクトファクター3.280), Vol. 31, Issue 3, pp. 2607-2616, 2017.
論文
Key Findings of the World’s First Offshore Methane Hydrate Production Test off the Coast of Japan: Toward Future Commercial Production
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.energyfuels.6b03143
Reprinted with permission from 「Konno, Y., Fujii, T., Sato, A., Akamine, K., Naiki, M., Masuda, Y., Yamamoto, K., & Nagao, J. (2017). Key findings of the world’s first offshore methane hydrate production test off the coast of Japan: Toward future commercial production. Energy & Fuels, 31(3), 2607-2616.」. Copyright (2017) American Chemical Society
著者
今野義浩(国立研究開発法人産業技術総合研究所、現東京大学)
藤井哲哉(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
佐藤明彦(日本オイルエンジニアリング株式会社)
赤嶺耕也(日本オイルエンジニアリング株式会社)
内木元義(日本オイルエンジニアリング株式会社)
増田 昌敬 (東京大学)
山本晃司(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
長尾二郎(国立研究開発法人産業技術総合研究所)
MH21-Sホームページには、論文・学会等掲載情報もございますので是非アクセスいただければ幸いです。
本プロジェクトは経済産業省資源エネルギー庁からの委託事業として実施されています。
■ 参考
メタンハイドレート
メタンガスと水が低温・高圧の特定の条件下で氷状に固まっている物質で、主に深海底面下や永久凍土地域の比較的浅い層に存在しています。
我が国におけるメタンハイドレート開発計画(2001~2018年度)
2001年度に経済産業省により策定された「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」のフェーズ1(2001~2008年度)、フェーズ2(2009~2015年度)およびフェーズ3(2016~2018年度)は、経済産業省資源エネルギー庁からの委託を受けてJOGMEC、産総研等が組織したメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21)が実施しました。この期間には、陸上及び海洋において、いずれも世界で初めて(当時)、メタンハイドレートからのガス生産実験を実現するなど多くの成果を収め、その成果は「総括成果報告書(和・英)」としてホームページで公開しています。この研究事業と成果は、2019年度から、MH21-S研究開発コンソーシアムが引き継いでいます。
MH21-S研究開発コンソーシアム(MH21-S)ホームページ
https://www.mh21japan.gr.jp
論文・学会等掲載情報ページ
https://www.mh21japan.gr.jp/publications.html
リリース本文はこちら↓
http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_01_000168.html?mid=pr201223
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