コンテンツ業界の方々を対象とした交流イベントを初開催!「ヒットクリエイトMeeting!Vol.1 心を動かすストーリー作りのメソッド」 アフターレポート
株式会社ボルテージ(本社:東京都渋谷区 代表取締役:津谷祐司)は、2019年3月28日に、ヒットを目指す全てのコンテンツ業界の方々の交流をメインとしたイベントとして「ヒットクリエイトMeeting!」を開催いたしました。第一回目となる今回は、「JIN-仁- 」「義母と娘のブルース」等のヒット作を手掛け、数々の受賞歴もある脚本家・森下佳子さんをお招きし、「心を動かすストーリー作りのメソッド」をテーマに、弊社の取締役副会長・東奈々子と「天下統一恋の乱 Love Ballad」ディレクター・長島麻衣子の3人でトークショーを実施いたしました。
■登壇者
写真右から)脚本家 森下佳子さん
ボルテージ取締役副会長 東奈々子
天下統一恋の乱 Love Ballad ディレクター 長島麻衣子
◆原点は少女漫画、20代で会社を辞めて脚本の道へ
東:脚本家になられたきっかけは何でしょうか?
森下さん(以下敬称略):学生時代に演劇をしていて、就職しても演劇への熱がさめやらずそのまま続けていました。社会人になると学生と違って演劇に向き合う時間が取れなくなり、会社を辞めてしまいました。さてどうしようかと一人できる演劇の仕事を考えたときに選択肢として浮かんだのが脚本家でした。働きながら芝居を続けて、映像の脚本を書き始めたのは25、6歳くらいからです。
東:子供のころからお話が好きでしたか?どんな作品を読んでいましたか?
森下:一番初めに触れたのは少女漫画ですね。木原敏江さんの漫画がすごく好きでした。名作がたくさんあります。夢の碑シリーズなど作品に歴史を絡めたお話がとても面白いです。池田理代子さんのベルサイユのばらも大好きですし、私のベースは少女漫画だといって過言ではないと思います。
現在ではクリント・イーストウッド監督の映画なども好きでよく観ています。
東:いろいろな作品を書かれていますが、ご自身が一番印象に残っているものは?
森下:「白夜行」です。主人公が殺人を犯して生きて行くお話で、原作は主人公の2人を他者から見た視点全部書かれていて視点がころころ変わります。ドラマでは、小説とドラマを合わせたら全てが分かるようにしたいという構造的な目標があったので、ドラマでは原作ではほとんど描かれていなかった亮司と雪穂の関係を描きました。原作では他者からの視点だけだったので、そんなに気にならなかったのですが、改めて2人をきちんと見直すと、やはり殺人をいくつも犯していることでモンスターに映ってしまった。およそ理解できない殺人鬼の殺人紀行を放送しても意味がない。なので、2人をモンスターにしないというのが当時のプロデューサーの目標でした。ギリギリ共感できる事情や心情を模索し説明するために、「どうしても殺さざるを得なかった」という説得力を持たせることが大命題であってしんどかったです。
◆史実モノは外せないポイントを探り、視聴者の期待を裏切らない
長島:大河ドラマなど実在の人物を扱う際は、ゆかりの地に取材に行くことはありますか? 取材できない場合、頼りにしている資料があれば教えてください。
森下:取材は時間的に沢山は行けないですが、もちろん行くこともあります。
定番として頼りにしている資料はこれといってはありませんが、ネットで調べたり、さらに詳しいことが知りたくなれば関係書籍などを読みます。ほかにも既に同じテーマで創作物がある場合は自分の先に色々な方たちがテーマに対しての考えや想いを繰り返している跡を見ることが出来るので、参考にしています。それらを複数読むと、絶対に外せないポイントが分かるようになります。
一方であまり他の人の登場しない事件を広げていくということもしますね。
「おんな城主 直虎」に今川氏真という、あまり他の作品では描かれていない登場人物がいるのですが、実際調べてみると彼自身かなり面白い人生を歩んでいて、「おんな城主 直虎」ではそれをさらに膨らませてストーリーに組みこんで行ったりしました。
東:逆に史実のキャラクターだと視聴者が事前に期待している像がありますが、そういうものは意識することはありますか? 信長だと破天荒な感じとか。
森下:「おんな城主 直虎」の織田信長は皆さんのイメージのままでやろうという気持ちがありました。「おんな城主 直虎」は織田信長が主人公ではなく無名の直虎さんが主人公、他の登場人物もあらかじめのイメージがない人が多い。ここで信長まで最新の研究によった形でイメージを刷新してしまうのは得策かどうか。そう考えた上で主人公から見た信長像はイメージ通りのキャラクターで出しました。信長が主人公ならもちろん考え方は別ですよ。
◆オリジナル企画は、小さな種を人との対話で膨らます
長島:オリジナルの作品について、テーマは自分の中の描きたいものなのか、今これが世間に求められているというものか、もしくはキャラクターが先行して生まれるのか――。どこから作品作りが始まることが多いのでしょうか?
森下:プロデューサーの方から「こんな話をやりたいです」とお話を頂き、それを受けて手段や方法を提案することが多いです。
「ごちそうさん」はどういうところから企画を立てていったかというと……最近の朝ドラでは「女性が目標を持って何かを達成する」というのが定型になっていますが、「今の女の子には目標達成は最上の幸せではないのでは? 違う幸せのモデルを描けないか?」という問いかけがプロデューサーからあったんです。そこで名もなき夫婦の幸せな毎日そのものを目標・テーマとするという方向性が定まりました。そこに料理というモチーフが加わり、主人公の夫である悠太郎の職業を考えたとき、人間の生活でまず大切なのは料理(食事)、次に大切なのは住居だから建築関係の仕事にする、など夫婦の形でまた違った意味を発信することが出来るようにしました。
企画は本当に小さな種で良いです。一人でそれを大きくしていくことが出来る人も居ますが、私自身は「最近こういうことあって……」とか「こういうことを思っていて……」とか、人と話すことで大きくなることが多いですね。
◆何かを達成しながら恋愛を育むほうが、恋愛だけよりも書きやすい
長島:「ごちそうさん」執筆の際は、視聴者をキュンとさせるため、意識的にされたことはありますか?
森下:キュンとさせることを作為的にやろうとはしていませんでした。実は私もプロデューサーもラブコメを作ったことがなくて、「単純にラブコメって楽しい!」と言いながらやりました。イメージとしてあったのは「はいからさんが通る」ですね。
長島:恋愛ものと恋愛がメインじゃないものを書くときの違いは何かありますか?
森下:恋愛ものと恋愛がメインじゃないものの場合、「白夜行」なら犯罪、「義母と娘のブルース」なら家庭というテーマが先にあって、恋愛が後です。恋愛以外のテーマから考えてそこから恋愛を展開して行く作り方をしています。例えば刑事もので「付かず離れずな感じだけどある時恋に落ちる」とか、「犯人に恋してしまう」とか色々な展開があると思いますが、何を共同作業としてさせるか、どういう一面を見せるかなど作りながら見つけていくという感じです。何かを達成しながら恋愛を育むという方が書きやすいです。恋愛だけ書いている人は尊敬します。
◆長期でキャラクターが煮詰まったら、成長前の未熟なキャラに戻す
長島:「ごちそうさん」のような長期連続ドラマでは、人物の魅力を伝えるシーンをどのように設計されているのでしょうか?
森下:連続ドラマは最初から人間が出来上がった人が主人公なことは半分くらいなのでは?半分の主人公は成長型です。成長して行くなら最初は欠点があるほうが書きやすいですし、共感を呼ぶため人気が出ます。ただ、キャラクターが経験を積んで成長するとだんだん丸くなって、良い人――まぁ、普通の人になってしまいます。そういう時に行き詰まってストーリーがつまらなくなったら、キャラクターを最初の成長前の状態に戻します。視聴者の方も作中のキャラクターたちも忘れていたけれど、最初からこういう(未熟な)人だった、と振り返ってからもう一度話を進めて行きます。
一方で、成長しなくてもキャラクターが動かなくなってしまう時もあります。そういう時は私の師匠の湯川和彦さんから言われた「煮詰まってどうしようなくなったら、このキャラクターが絶対にやらないようなことをやらせてみなさい」という言葉を思い出します。
それによってお話が一気に動いたりすることもあるので、煮詰まったらぜひ使ってみてください。
キャラブレを恐れないで、キャラブレした部分も厚みだと思わせるようなくらいでも許されるのではないかと思います。
◆伏線は2タイプある。初めに張るものと、後から振り返って回収するもの
長島:「義母と娘のブルース」や「おんな城主 直虎」など、ラストの伏線回収の華麗さが度々話題になりますが、壮大な伏線とどんでん返しはどのように思いつくのでしょうか? プロット作りの工夫等があれば教えてください。
森下:伏線には2種類あります。1つ目は張ろうと思って張っているもの。2つ目は執筆を進めて中盤になってきて、前に登場人物のしていたこと、言っていたことなどを振り返って回収するものです。こうすると、結果的に伏線を回収することが出来ます。私はどちらかというと、後者が多いですね。
伏線を張るのには技術が必要です。自分ですごく巧妙に出来たと思っていても視聴者の方に先に読まれてしまうこともあります。それよりも振り返ると結構いろいろなネタが落ちている。自分で読み返して拾ってくることが多いです。
◆作り手の強い想いを伝えあってこそ、良い作品が生まれる
長島:ボルテージのシナリオディレクターの中にはシナリオライターさんへの適切な指示の伝え方に悩む者も多いのですが、書かれる側として、プロデューサーさんからどのような指示出しがあると助かる、等はありますでしょうか。
森下:書き手のタイプに拠りますね。私はリアクションタイプの人間なので、相手の想いが強い方が良い。とにかくこれを伝えたいんだ、これがやりたいんだというものをもらってやりたい。それで出したものが「伝わってない」って言われるのは全然OKです。逆にアドバイスをもらえるだろうと思って見せた時に何も言われなくて「凄い良いですね」って言われると不安になります。伝わってるのかなって。想いの強い指示者だったら「絶対わからないじゃん」とかなるんですよ。それは腹の立つ嫌な作業なんですけど、それを重ねて行くことで確実に幹が太くなるというか、ぶれない方向性を得ていけるんです。
◆日々の生活で気になったキーワードをメモして漬け込んでおく
東:日々の生活の中で脚本家として心掛けていることや気を付けていることはありますか?
森下:インプットはあちこちでします。面白い記事があったらプロデューサーに共有しますし、ドキュメント作品などもキャラクターの宝庫なので見た方が良いです。漬け込んでおくネタとしては、キーワードみたいなものをメモしています。例えば、「とんぼを切る」という言葉。歌舞伎の名もない役者さんのする宙返りのことなんですけど、とんぼをたくさん切って体を壊して引退する人もいるんです。引退後の保証もなく、それでもひたすらとんぼを切り続けて舞台を去っていく人がいるという話を聞いた時に、このキーワードだけでお話が出来るんじゃないか、と思いました。
あとは「どて山」って知っていますか? 鉱山だったところを閉山したあと、残っていた鉱物が発熱してブスブスと音を立て続けている山のことです。山火事や火山ではないのですが、人知れず熱くなり続けている。なんかそういう「どて山」みたいな人、身近にいませんか? いつまでも胸に熱を秘め続けているような人。あだ名などで使えると思っています。
東:現在の時代やテーマを意識してらっしゃると思うのですが、「時代」についてはどう捉えていますか?
森下:凄く窮屈になっているように感じます。発言がしにくいですよね。真面目な話をするにはちょっと怖いですね。
東:そうですよね。それは作品にも反映されますか?
森下:作品については、嫌われないようにすることを考えてしまいますね。キャラクターとかキャラクターの言動とか。でもそんなわかりやすく好かれるためだけに生まれてきたようなキャラクターだらけの作品のどこに存在意義があるんだろうと思うところも。人間は多面体でありあらゆる局面で変化をする、そういうことを伝えるのがドラマが現実社会に還流できる価値ではないのかとも思うので……。
東:ボルテージの作品は「イケメン」が一つのキーワードなのですが、森下さんの作品でイケメンはずばり誰でしょうか?
森下:不憫キャラが大好きなので、「白夜行」の亮司や、「おんな城主 直虎」の小野但馬守政次など、世の中的には悪人である人物がヒロインのために命を散らすっていう構図が好きですね。リアルで好きになったり、憧れたりするのは「おんな城主 直虎」の龍雲丸のような明るいキャラクターですね。
◆まずは、キャラクターと向き合って自分自身が楽しむこと
東:最後はお集まり頂いた脚本家、シナリオライターの皆さんにメッセージをお願いします。
森下:キャラクターを作りだしたり、キャラクターのお話を作ったり、基本的には楽しい時間の多い仕事だと思います。ほかにも、嫌いなキャラクターでも好きになれたりとか。そういう色々な楽しい瞬間があると思うんですけど、なんせキャラクターって勝手に動き出したりはしてくれなくて、自分が作っていかないとなかなか進まない。だから大変な時もありますよね。
しかしそこで話を無理に進めていくよりも、まずはキャラクターを楽しむことを優先すると、また楽しい時間を過ごせるのではないかと思います。私も締め切りまでになんとか形にしなくては、と書き進めるのですが、その時にキャラクターのことを考えずにとりあえず動かしている時って、楽しくないです。なので、その時は締め切りや決まりごとはまず置いておいて、キャラクターを楽しんでみようとやり直したら、すごく楽しくなるのではないでしょうか。
東・長島:本日は、大変貴重なお話しありがとうございました!
登壇者のご紹介
脚本家
森下 佳子(もりした よしこ)氏
【代表作】
・テレビドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」
・テレビドラマ「白夜行」
・テレビドラマ「JIN-仁-」
・テレビドラマ「義母と娘のブルース」
・映画「花戦さ」
【受賞歴】
・ザテレビジョンドラマアカデミー賞 脚本賞
第42回(『世界の中心で、愛をさけぶ』)
第98回(『義母と娘のブルース』) ほか
・第32回向田邦子賞『ごちそうさん』
・第41回日本アカデミー賞優秀脚本賞『花戦さ』
【ボルテージについて】
当社グループの事業は、モバイルコンテンツの企画・制作・開発・運営を行う、モバイルコンテンツ事業を主軸としております。現在、日本語女性向けの恋愛ドラマアプリ、英語圏女性向けの恋愛ドラマアプリ、日本語男性向けのサスペンスアプリを配信しており、恋愛ドラマアプリの累計利用者数は2017年11月30日に6,000万人※を突破いたしました。新たな領域として人気コンテンツのキャラクターを用いたグッズ等のIP事業、アニメ事業も行っております。
※ボルテージが提供中の、携帯キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)公式月額サイト登録者数、SNSプラットフォーム(GREE、Mobage、dゲーム、Ameba、自社プラットフォーム 女子ゲーほか)向けソーシャルアプリ登録者数、およびApp Store、Google Playで提供中のアプリのインストール数、各タイトルの合計数
※記載されている会社名・商品名・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
【ボルテージ会社概要】
社名:株式会社ボルテージ (1999年9月設立)
所在地:東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー28階
代表取締役社長:津谷 祐司(つたにゆうじ)
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