電力小売事業の2割が継続断念 「撤退」は半年で倍増 急速に販売価格転嫁進むも薄氷の利益水準
「新電力会社」事業撤退動向調査(11月)
帝国データバンクは、2021年4月時点で判明した新電力会社706社の事業動向について調査・分析を行った。
<調査結果(要旨)>
新電力の2割が契約停止・撤退
最も多いのは、新規申し込み停止を含めた「契約停止」が91社となり、6月の69社から22社増加した。また電力販売事業からの「撤退」は33社で、6月(16社)から倍増。「倒産・廃業」は22社で、FTエナジー(東京、7月破産)、石川電力(石川、10月破産)などの倒産が発生した。
新電力業界は2016年の電力小売自由化以降、事業者登録に発電設備の有無を問わないなど参入障壁の低さから、業界を問わず数多くの事業者が新規参入し、2022年1月末時点では744社が登録していた。結果として価格やサービス面で多様な事業展開が生まれた半面、卸電力取引市場からの調達に依存した事業者も増加。2020年末以降の断続的な市場価格の高騰で、従来のビジネスモデルが立ち行かなくなる事業者が続出し、事業からの撤退や倒産・廃業を余儀なくされるケースが相次いでいる。
8月の販売1メガワット時の利益は前年同月比98%減 暖房需要増える冬を乗り越えられるか
この結果、新電力の1MWh当たり販売利益(電力販売価格-電力調達価格)は、2022年8月は183円にとどまり、前年同月(8763円)から98%減少。7月は461円の赤字で、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態にいつ陥ってもおかしくない薄利の状況が続いている。9月以降の市場価格も高値で推移しており、冬の電力需要期を迎えて、逆ザヤ解消に向けた新電力各社の値上げの動きと需要家である企業への影響に注目が集まる。
新電力の撤退や倒産で「電力難民」、5月から3倍超 大手でも撤退の動き
2022年に入り、急激な燃料高を受けて電力各社の採算が悪化している。大手電力10社の2022年度上半期(4~9月期)決算は9社が最終赤字を計上、近時値上げの動きも活発化しているが価格転嫁は追いついていない。
一方で、電力小売業者(新電力会社)の倒産や撤退などで契約の継続が難しくなり、無契約状態となったため大手電力会社等から供給を受ける「電力難民」企業は、この1年で急増し10月には4万5866件に達した。その後はわずかに減少しているものの、電力調達価格の高騰で利益確保が困難になった新電力の相次ぐ撤退や倒産が、利用者にも大きな影響を及ぼしている。市場価格の高騰が続くなか、財務基盤のぜい弱な事業者だけでなく大手企業グループでも、電力小売事業から撤退を余儀なくされる事態が相次いでいる。
- 新電力の2割が契約停止・撤退
- 8月の販売1メガワット時の利益は前年同月比98%減 暖房需要増える冬を乗り越えられるか
- 新電力の撤退や倒産で「電力難民」、5月から3倍超 大手でも撤退の動き
新電力の2割が契約停止・撤退
電力の市場価格高騰のあおりを受けて撤退に踏み切る新電力業者が増加している。2021年4月までに登録のあった「新電力会社」(登録小売電気事業者)706社のうち、11月28日時点で21%を占める146社が倒産や廃業、または電力事業の契約停止や撤退などを行ったことが分かった。3月末時点では31社だったが、6月には104社に急増、その後も増加が続き3月末から11月までで5倍近くに達した。
最も多いのは、新規申し込み停止を含めた「契約停止」が91社となり、6月の69社から22社増加した。また電力販売事業からの「撤退」は33社で、6月(16社)から倍増。「倒産・廃業」は22社で、FTエナジー(東京、7月破産)、石川電力(石川、10月破産)などの倒産が発生した。
新電力業界は2016年の電力小売自由化以降、事業者登録に発電設備の有無を問わないなど参入障壁の低さから、業界を問わず数多くの事業者が新規参入し、2022年1月末時点では744社が登録していた。結果として価格やサービス面で多様な事業展開が生まれた半面、卸電力取引市場からの調達に依存した事業者も増加。2020年末以降の断続的な市場価格の高騰で、従来のビジネスモデルが立ち行かなくなる事業者が続出し、事業からの撤退や倒産・廃業を余儀なくされるケースが相次いでいる。
8月の販売1メガワット時の利益は前年同月比98%減 暖房需要増える冬を乗り越えられるか
日本卸電力取引所(JEPX)のデータをみると、2022年8月のシステムプライス平均は1キロワット時あたり26円だった。今年のピークであった3月(26円)に匹敵し、前年同月より2倍以上高い水準で推移している。一方で、電力・ガス取引監視等委員会のデータから帝国データバンクが推計した、8月の新電力における電力販売価格平均は、供給1メガワット時(MWh)当たり約2万5700円だった。前年同月の約1万7300円を上回り、1年間で約50%上昇。各社が調達価格の上昇分を売電価格に反映させる動きが続いている。
この結果、新電力の1MWh当たり販売利益(電力販売価格-電力調達価格)は、2022年8月は183円にとどまり、前年同月(8763円)から98%減少。7月は461円の赤字で、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態にいつ陥ってもおかしくない薄利の状況が続いている。9月以降の市場価格も高値で推移しており、冬の電力需要期を迎えて、逆ザヤ解消に向けた新電力各社の値上げの動きと需要家である企業への影響に注目が集まる。
新電力の撤退や倒産で「電力難民」、5月から3倍超 大手でも撤退の動き
2022年に入り、急激な燃料高を受けて電力各社の採算が悪化している。大手電力10社の2022年度上半期(4~9月期)決算は9社が最終赤字を計上、近時値上げの動きも活発化しているが価格転嫁は追いついていない。
一方で、電力小売業者(新電力会社)の倒産や撤退などで契約の継続が難しくなり、無契約状態となったため大手電力会社等から供給を受ける「電力難民」企業は、この1年で急増し10月には4万5866件に達した。その後はわずかに減少しているものの、電力調達価格の高騰で利益確保が困難になった新電力の相次ぐ撤退や倒産が、利用者にも大きな影響を及ぼしている。市場価格の高騰が続くなか、財務基盤のぜい弱な事業者だけでなく大手企業グループでも、電力小売事業から撤退を余儀なくされる事態が相次いでいる。
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