【国立科学博物館】世界28か国73の自然史博物館コレクションの全貌が明らかに

生物多様性の喪失など社会的課題に対処する画期的なデータベースを構築

文化庁

 独立行政法人国立科学博物館(館長:篠田謙一)は、アメリカ・ワシントンDCのスミソニアン国立自然史博物館、ニューヨーク市のアメリカ自然史博物館そしてイギリスの大英自然史博物館が主導したグループに参加し、世界28カ国の国を代表する73の自然史博物館が保有するコレクションの内訳を調査して明らかにしました。
 この成果は科学者や政策決定者が、気候変動や食料安全保障、人びとの健康、パンデミックへの対応、野生生物の保護など、緊急かつ広範囲に影響を及ぼすような問題を解決するための、基礎となる地球規模のコレクションを取りまとめる挑戦的な取り組みの第一歩です。
  • 研究のポイント
●自然史博物館の持つ標本は、現在の複雑な危機に対応するための価値を持っています。これらは過去300年にわたって収集されてきたもので、野生生物の保護、パンデミックへの対策、食料不安、外来種の問題、生物多様性の喪失など、多岐にわたる喫緊の課題に直接関連しています。しかしながら、世界中の博物館がどのような標本を持っているかというカタログは存在していません。

●今回の調査には、28カ国の73の博物館や植物標本館の約4,500人の研究者と4,000人のボランティアが参加し、合わせて約11億の標本が調べられました。これらの資料の大部分は外部からアクセスができないもので、ネット上で発見可能な標本データはコレクション全体のわずか16%に過ぎません。

●本研究では、これらの標本を16の地域と、19のカテゴリーに分けて分類しました。その結果、熱帯や極地域、海洋、節足動物および微生物の多様性に関しては目立った標本の欠落があることが明らかとなりました。
 
  • 研究の概要(スミソニアン国立自然史博物館のリリースより)
 世界の自然史博物館は一般に公開している展示以外にも、地球と太陽系が持つ膨大な資料を保管・保存するという役割があります。これらの自然史のコレクションは、将来を予測するための具体的な手がかりとなります。博物館は従来、独立した組織として活動してきましたが、今回の新たな取り組みは、世界中のすべての博物館が持つすべてのコレクションから構成されるグローバルなコレクションの構築を目指しています。
この膨大なコレクションの内訳をより理解するために、自然史博物館の科学者たちは、彼らの持つコレクションの規模や構成を迅速に評価するための、革新的かつシンプルなフレームワークを作り、その結果を「自然史博物館コレクションのグローバルアプローチ」という論文で公表しました。この論文はScience誌に掲載され、Scienceのプレスパッケージの https://www.eurekalert.org/press/scipak/ でオンラインで閲覧することができます。

 調査にあたった研究者は、生物学、地質学、古生物学、人類学のコレクションの全体を19のタイプに分類し、陸地と海洋を地球の全体をカバーするように16の地域に分けて、博物館の保有するコレクションを迅速に調査するための方法を作りました。
この調査には標本を管理する4,500人の科学者と4,000人のボランティアが参加し、全体では11億を越える標本が確認されました。その結果、地域としては熱帯や極地、海洋系、そして分類群としては節足動物や微生物の多様性などの分野において博物館のコレクションには大きな欠落があることが示されました。このことを顕在化させたことは、今後の標本収集に関しての指針となるでしょう。
 
  • 篠田謙一・国立科学博物館館長のコメント
 この調査によって初めて世界中の自然史系の博物館が保有する標本の実態が明らかになった。本論文は博物館標本の現代的な重要性を指摘しており、今後の博物館の活動に対する重要な提言である。
 
  • 国立科学博物館の取り組み
 国立科学博物館では、例えば総合研究「極限環境の科学」(令和3年度〜6年度)では、極圏、深海、高地、火山地域など、これまで標本資料の収集が十分に行われていなかった環境で、分野横断型の研究を実施するなどして、コレクション、調査研究の空隙を埋めるような取り組みを実施している。また、標本資料のデジタル化による情報共有をさらに促進するため、科学系博物館サイエンスミュージアムネット(S-Net)によって、日本国内の100を超える自然史系博物館から標本情報を収集し、一元的に閲覧できるようにするとともに、これらの情報を国際的な生物多様性情報収集活動であるGBIF(Global Biodiversity Information Facility, 地球規模生物多様性情報機構)に提供している。これらの活動を通じて、標本の情報が点から線へ、さらに面的な広がりを形成していくようなことが望まれる。
 
  • 発表論文

https://www.eurekalert.org/press/scipak/

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本社所在地
京都府京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85番4
電話番号
075-451-4111
代表者名
都倉俊一
上場
未上場
資本金
-
設立
1968年06月