NASAハッブル宇宙望遠鏡、地球から129億光年離れた星を発見
ー単独の星を観測した最遠方記録をおよそ40億光年更新ー
千葉大学先進科学センターの大栗真宗教授が参加する国際共同研究チームは、重力レンズと呼ばれる自然の集光現象を用いることで、129億光年離れた単独の星からの微弱な光を捉えることに成功しました。2018年に同様の手法により90億光年離れた単独の星の観測が報告されましたが、今回の発見は当時の記録を大幅に上回る、単独の星としては最遠方の観測となります。
この星の光は現在の宇宙年齢138億年の7%にあたる宇宙年齢9億年の宇宙初期の時期に発せられたものであることから、宇宙の進化の過程でどのように星や銀河ができてきたかなど、重要な手がかりをもたらすことが期待できます。
本科学成果は英学術誌 Nature 3月31日発行号に掲載されました。
この星の光は現在の宇宙年齢138億年の7%にあたる宇宙年齢9億年の宇宙初期の時期に発せられたものであることから、宇宙の進化の過程でどのように星や銀河ができてきたかなど、重要な手がかりをもたらすことが期待できます。
本科学成果は英学術誌 Nature 3月31日発行号に掲載されました。
- 研究の背景
遠方宇宙の研究は、星の集合体である銀河の観測によって行われてきました。銀河を構成する個々の星が観測できれば、宇宙の歴史の中で星形成がどのように変化していったか、あるいは宇宙の初期にできた星の典型的な質量はどの程度かなど、宇宙の進化を理解するうえで貴重な情報が得られます。このような遠方銀河を構成する単独の星の観測を可能にする方法として、重力レンズと呼ばれる自然の集光現象を利用する方法があります。2018年にこの手法により90億光年離れた単独の星の観測が報告されました(注1)。ただし宇宙年齢に対応する138億光年に比べると十分遠方とは言えず、より遠くにある宇宙誕生から間もない星からの光の観測が望まれていました。
- 研究の成果
更なる解析の結果、この星は少なくとも太陽の50倍の質量を持ち100万倍以上明るいと見積もられています。129億光年離れたこの星は重力レンズ効果による集光がなければ到底観測できませんでした。しかし、星が「焦線(注2)」と呼ばれる、いわば空間の構造のさざなみに近づいたことで数千倍かそれ以上の極端に大きな増光率が達成され、これまで観測された星の中でも最も地球から遠方に存在する、単独の星の観測につながりました。
- 今後の展望
またこのような宇宙初期の大質量星は、近年重力波観測により多数発見されつつあるブラックホールの祖先に対応する可能性もあるため、ブラックホールの起源に関する研究の進展も見込まれています。さらに、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による今後の銀河団の観測により、Earendelよりさらに遠方の星の発見、ひいては宇宙で最初に誕生した、いわゆる”初代星”発見への期待が寄せられています。
- 補足情報
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/5802/
注2)焦線:焦線の形成とそれによる大幅な増光は、重力レンズにより起こる現象のひとつです。
- 研究プロジェクトについて
- 論文情報
著者:Brian Welch, Dan Coe, Jose M. Diego, Adi Zitrin, Erik Zackrisson, Paola Dimauro, Yolanda Jiménez-Teja, Patrick Kelly, Guillaume Mahler, Masamune Oguri, F. X. Timmes, Rogier Windhorst, Michael Florian, S. E. de Mink, Roberto J. Avila, Jay Anderson, Larry Bradley, Keren Sharon, Anton Vikaeus, Stephan McCandliss, Maruša Bradač, Jane Rigby, Brenda Frye, Sune Toft, Victoria Strait, Michele Trenti, Soniya Sharma, Felipe Andrade-Santos & Tom Broadhurst
掲載誌:Nature
DOI:https://doi.org/10.1038/s41586-022-04449-y
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