シリア:人道援助唯一の越境地点──決議の更新を国連安保理に要請
シリア北西部に対して、周辺国から国境を越えた人道援助を認める、国連安全保障理事会決議(第2585号)が7月10日に期限を迎える。同地域に住む440万人余りのおよそ60%は国内避難民で、決議が更新されなかった場合、生活に欠かせない人道・医療援助を受けられなくなることが危惧される。国境なき医師団(MSF)は、国連安全保障理事会(以下、「安保理」)に対し、同決議の更新を強く要請する。
- 唯一の越境地点
現在、シリアとトルコの国境にあるバブ・アル・ハワ国境検問所が、シリア北西部へ人道援助目的で入るために唯一認められた越境地点となっている。しかし決議が更新されなければ、この最後に残ったシリアへの越境地点までもが7月10日までには閉鎖される恐れがある。
国連によると、シリア北西部に住む440万人のうち、410万人が人道援助を、310万人が医療援助を必要としている。医療を受けようにも、治安の悪さ、医療施設までの長い道のり、診療や移動にかかる費用など、さまざまな障壁があり、毎月、240万人もの人が国境を越えた援助活動を頼りに暮らしている。越境許可が更新されなければ、すでに絶望的なシリア北西部の人道状況をさらに悪化させることになる。
- 越境許可の更新は必須
MSFシリア現地活動責任者クレア・サン・フィリポは「圧倒的な人道・医療ニーズと深刻な経済危機を背景に、越境援助が認められなくなるという脅威が、シリア北西部の人びとに常につきまとっています。安保理は、国境を越えた援助活動を引き続き認める必要があります。この命綱が遮断されれば、数百万人にとって最低限の食料、水、医療を利用する機会が激減します。防げる死が防げなくなる事態です」と訴える。
2021年には、MSFのシリア北西部への人道援助物資の99%以上がバブ・アル・ハワ経由で運ばれた。決議が更新されなければ、ほとんどの病院や医療施設は、稼働に必要な医療物資不足に見舞われるため、患者の命は危険にさらされることになる。MSFも、医療援助活動を量・質共に見直すほかなく、現在のような規模の対応ができなくなる見通しだ。
11年にわたる紛争、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行、深刻化する経済危機、制裁、ウクライナ戦争による食料・燃料価格への波及などにより、シリアの人びとの生活環境はさらに悪化している。国連によると、シリアでは1460万人以上が人道援助を必要としており、2021年から120万人増加した。政府からの食糧配給の価格も急騰しており、2013年のモニタリング開始以来、過去最高の平均価格を記録。人口の9割が生活に必要なものを手に入れる最低限の収入を得ることができていない。
バブ・アル・ハワ国境検問所を通して援助物資を輸送することは、スピード・効率・透明性・費用面、いずれの点においても利点が多く、この仕組みに代わるものがないのが現状だ。MSFは、安保理の常任理事国および非常任理事国に対し、バブ・アル・ハワを通してシリア北西部に人道援助を行うための安保理決議(2585)の更新を改めて要請する。
シリア越境支援決議の詳細はこちら(英文)
https://www.msf.org/access-healthcare-northwest-syria-risk-over-potential-border-crossing-closure
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