がんの新しい治療薬開発に光明~がんの進行を早める新たな鍵分子の発見~
千葉大学大学院医学薬学府 堀 直人 博士課程大学院生、薬学研究院 高野 博之 教授、山口 憲孝 准教授のグループは、がんの悪性化を促進する新しい鍵分子である、遺伝子発現調節因子Vestigial-like family member 3(VGLL3)を発見しました。
この成果により、VGLL3を阻害する作用をもつ、新しいがん治療薬開発が可能になると期待されます。
本研究成果は、2022年4月2日に米国医学誌Journal of Cellular and Molecular Medicineにオンライン掲載されました。
この成果により、VGLL3を阻害する作用をもつ、新しいがん治療薬開発が可能になると期待されます。
本研究成果は、2022年4月2日に米国医学誌Journal of Cellular and Molecular Medicineにオンライン掲載されました。
- 研究の背景
- 研究成果
さらに、VGLL3安定発現株について細胞全体の遺伝子発現解析を行い、VGLL3によるEMT誘導メカニズムについて解析を行いました。その結果、VGLL3は、遺伝子発現調節タンパク質High mobility group AT-hook 2(HMGA2)の発現誘導を介して細胞間接着の低下や運動性の増進を導くことがわかりました。このことから、VGLL3によるHMGA2を介した細胞間接着の低下や運動性の増進は、TGF-β刺激によるEMTにも重要であることが明らかになりました。
次に、実際のがんの悪性化におけるVGLL3によるHMGA2を介したEMT誘導の重要性について解析しました。まず、様々なヒトがん細胞におけるVGLL3の発現量について遺伝子発現データベースを用いて解析したところ、VGLL3は高悪性度の間葉系がん細胞において高く発現することがわかりました。そこで細胞内で特定の遺伝子の発現を抑制する作用をもつRNAであるsiRNAを用いて、間葉系がん細胞におけるVGLL3の発現を抑制したところ、HMGA2発現量が減少し、細胞間接着の回復や運動性の低下が認められました。さらに、VGLL3の発現とがん患者の予後との関連性について、がん患者における遺伝子発現と予後のデータベースを用いて解析を行ったところ、乳がん、結腸がん、卵巣がん、頭頸部がん、膵臓がん、腎臓がん、胃がん、子宮頸がんなどの様々ながんにおいてVGLL3を高く発現するがん患者の予後が悪いことが判明しました。これらのがん組織において、VGLL3が増加するとHMGA2の発現も増加することがわかりました。以上の結果から、VGLL3はHMGA2の発現を介してEMTを誘導し、がん悪性化を促進する鍵分子であることが明らかとなりました(図3)。
- 今後の展望
- 論文情報
・著者: 堀 直人*1、高倉 勇気*1,2、杉野 歩美*2、岩澤 修斗*2、野溝 航太*1、山口 直人*2、高野 博之*1、
山口 憲孝*1,2
*1千葉大学大学院薬学研究院 分子心血管薬理学、*2千葉大学大学院薬学研究院 分子細胞生物学
・雑誌名: Journal of Cellular and Molecular Medicine
・DOI: 10.1111/jcmm.17279
Link to https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jcmm.17279
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザーログイン既に登録済みの方はこちら
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像