【界 加賀】 日本初、温泉旅館内に誕生した 「金継ぎ工房」利用者1,800人突破

〜器を繕い、新たな美を愛でる。サステナブルな伝統技法「金継ぎ」体験を通じたCSV活動報告~

星野リゾート

石川県山代温泉の温泉旅館「界 加賀」では、2023年4月19日に日本で初めて(*1)温泉旅館内に誕生した「金継ぎ工房」の利用者が、工房オープンから約10か月で1,800人を突破しました。界 加賀を運営する星野リゾートでは、本業を通じて社会課題の解決を目指す「CSV経営」を重視しており、金継ぎの取り組みはCSV活動(*2)の一環です。界 加賀スタッフによる累計修復数は500点を超えたほか、金継ぎに従事したスタッフは工房オープン時より4人増え、累計38人となりました。これにより、宿泊者に対して提供する、九谷焼や金継ぎに関するサービスの深化に繋がっています。
*1 2023年4月時点「金継ぎ工房を構える温泉旅館」を調査 自社調べ
*2 CSV経営:共通価値の創造。事業を通じて、社会課題の解決を目指す考え方。



活動背景

界 加賀では、当館ゆかりの文化人である北大路魯山人の「器は料理の着物」という言葉に倣い、器と料理のマリアージュにこだわり、器を宝物として大切に扱っています。しかしながら、2015 年の開業当初より、九谷焼や山中塗の作家の器を用いてきたものの、毎日使用することにより、どうしても器の劣化や破損が生じてしまいます。それを廃棄するのはもったいないと感じた元蒔絵師(*3)のスタッフが、自分たちの手で大切な器を守っていくことを目的に2019 年から金継ぎの技術を界 加賀のスタッフに広めました。

*3 蒔絵師(まきえし):漆器に金・銀の粉で絵や文様を描く「蒔絵」の職人のこと



界 加賀の金継ぎの取り組み

2021年には、宿泊者にも金継ぎの技術や器を大切に扱う想いを知っていただきたいと考え、器に施された金継ぎを解説する「金継ぎ語り」、金継ぎされた抹茶椀を使った茶の湯にまつわる体験、金継ぎでアクセサリーを作るワークショップなども開催し、好評の声をいただきました。また、スタッフ内で金継ぎ文化に対する興味が深まったことを受け、難易度の高い天然漆にこだわった器の修復や定期的なスタッフ向けのワークショップ開催など、より本格的に金継ぎの活動に取り組んでいくため、2023年4月19日に界 加賀施設内に「金継ぎ工房」が誕生するとともに、宿泊者が金継ぎの一部の作業を体験できるプログラム「金継ぎいろは」をスタート。現在、工房では、天然漆と自然の材料を用いた本格的な技法で、スタッフ自らが日々、修復作業を行うほか、宿泊者は修復作業の見学、作業への参加ができ、その後滞在中の様々な場面で九谷焼をはじめとした工芸品に触れることで、器を取り巻く豊かな文化に触れることができます。



金継ぎ工房オープン後の活動進捗

1 モノを大切にする心と新たな美を生み出す「金継ぎ工房」体験者1,800人突破

金継ぎ工房で行っている体験「金継ぎいろは」では、金継ぎの歴史と界 加賀での取り組みを知り、金継ぎの工程の一部を学ぶことができます。「金継ぎいろは」は宿泊者が金継ぎ文化に触れる足がかりとなり、体験者は2024年2月末で1,800人を超えました。
界 加賀では、ご夕食やご朝食で金継ぎが施された器を使用しています。「金継ぎいろは」の体験者の中には、スタッフが説明する前に自ら金継ぎが施された箇所を発見し、じっくりと観察する方が多くいます。このように、金継ぎについて学び、修復作業を体験するだけでなく、実際に食事の席で金継ぎが施された器を使うことで、器の新たな美しさやモノを大切にすることの良さを感じられるのは、温泉旅館ならではの金継ぎの学び方です。
体験者からは「金継ぎを体験することで、九谷焼の良さを改めて知ることができた」「物を大切にするという基本的な事の大切さに改めて気づいた」 「金継ぎの歴史や界 加賀の取り組みを知り、こんな形のSDGsもあるのかと勉強になった」「スタッフが器を大切にしている様子を見て、改めて自宅でも食器を大事に扱いたいと思った」などのお声をいただき、界 加賀での体験を通じて、金継ぎや器への興味関心が増したり、モノを大切にするライフスタイルを考えるきっかけになっています。



2 2倍以上のスピードで修復、累計500点へ

金継ぎの活動を始める前は破損した器は捨てざるを得ず、多数の廃棄が生じていました。金継ぎの活動を始めてからは器を廃棄せず、金継ぎを施して再利用しています。しかしながら、金継ぎ工房ができるまでは、限られた場所、限られた時間で修復を行ってきたため、作業が思うように進められないという課題がありました。金継ぎ工房の誕生により、毎日2時間半、スタッフが工房に常駐し、安定して修復作業に取り組めるようになり、器の保管場所も増えたことから、修復できる器の数が大幅に増加しました。金継ぎ工房ができるまでの約3年間は年平均100点ほどだったのに対し、工房誕生後は1年足らずで200点以上を修復することができ、累計修復数は500点を越えました。


3 スタッフ自らが学び、サービスの深化と文化継承を両立

金継ぎ工房で器を継ぐのは、温泉旅館で接客サービスを行う界 加賀のスタッフです。天然漆を使用した金継ぎは難易度が高く、指導者レベルになるには年月がかかりますが、地元の金継ぎ作家である中岡庸子氏を講師に招き、スタッフが日々学び続けながら活動しています。地元の作家が心を込めて作った大切な器を守ることと、金継ぎ技術を継承していく思いを胸に、失敗を重ねながら技術を磨いてきました。漆で接着する本格金継ぎは、1つの器を継ぐのに少なくとも 1 か月以上を要する根気のいる作業ですが、スタッフは破損が生じた器にも愛着を持ちながら大切に修復活動に取り組み、学んだことを宿泊者に紹介する機会も増えました。自ら経験しているからこそ、宿泊者により詳細に金継ぎについて伝えられています。

界 加賀では、金継ぎ工房がオープン後も定期的に勉強会や研修を開催し、継続的なスタッフの技術力向上に努めてきました。1か月に2~3回時間を設け、中岡氏から直接指導を受けられる環境をつくっています。工房オープンから2024年3月時点までで全14回開催し、19名のスタッフが参加しました。新しく技術の習得を始めたスタッフもおり、金継ぎでの修復作業に携わるスタッフは工房オープン後から4名増え、金継ぎに携わったスタッフは、累計で38人となりました。



金継ぎ技法専門家 中岡庸子氏

加賀市の漆工芸大下香仙工房(現:漆工芸大下香仙株式会社)で蒔絵を学び、その後蒔絵の修復について学びに漆芸家 更谷富造氏に師事。金継ぎを中心に、漆を使った表現など創作活動をしている。



中岡氏からのメッセージ

2023年4月に工房がオープンしてから早くも1年が経とうとしています。金継ぎスタッフの方たちと毎月2〜3回、金継ぎ技術を学んでいく中で、一緒に試行錯誤を続けてあっという間に時間が経ったような長かったような不思議な感覚です。作業をしながら、お一人ずつの個性も煌めき始め、得意な作業や工程が見えてきたり。何気ない会話から、お仕事を労働以上のものとして捉え日々創意工夫されていることも感じてきました。こうした心ある皆さんと、「どうしたら器が再活用できるか」「お客様へご提供できる安全なクオリティとは」について、今年も考えながら、お客様へも地元へも繋がっていく取り組みができればと楽しみにしております。



4 日々の生活に金継ぎや工芸品を取り入れるきっかけを提供

九谷焼は全国的に認知が高まってきているものの、高価であることから破損が気になり、なかなか購入につながらない背景がありました。界 加賀での金継ぎ体験を通して、宿泊者からは「これまでは高価な器は破損を心配して購入をためらうこともあったが、金継ぎという技術を知り、万が一割れても修復して使えるとわかったので、購入意欲が沸いた」といった声も聞かれます。金継ぎ工房オープン後、2023年の館内ショップでの陶磁器類の売上は、コロナ禍前の2019年よりも27%増加しました。界 加賀での金継ぎに触れる滞在が、日々の生活に九谷焼を取り入れるはじめの一歩になっています。

また、工房オープンと同時期に、ショップにて、自宅で金継ぎをはじめられる道具と材料が一式入った「金継ぎコフレ」(¥16,500/税込)の販売を始めました。界 加賀での滞在をきっかけに、この商品を購入し、日々の生活でも金継ぎを取り入れる方もいます。


界 加賀のそのほかのCSVの取り組み

総務省が実施した伝統工芸に関する実態調査によると、これまでも支援策が講じられてきたものの、生活様式や社会経済の変化、安価な類似品の流入といった背景事情により、伝統工芸品の需要が減少しています。これに伴い、伝統工芸品の生産額や従事者数も減少傾向にあり、今後、伝統工芸や伝統文化の継承が途絶えてしまうことが懸念されています。温泉旅館ブランド「界」では、「ご当地部屋(ごとうちべや)」「ご当地楽(ごとうちがく)」という2つの取り組みを推進しており、これらを通じて「伝統文化や伝統文化の継承」を支援しています。伝統文化や伝統工芸、その土地の食文化などを温泉旅館のおもてなしに活用し、「界」が地域の魅力を発信し旅行者と地域をつなぐ架け橋になることで、次の世代に伝統工芸や伝統文化が継承されることを目指しています。

「界 加賀 施設について」
https://drive.google.com/drive/folders/0B2n4zGt6qZIKM3Z0RW8xM2J4QW8?resourcekey=0-Otr70OYoM2muQgUWNgfZdg&usp=drive_link



SDGs への貢献について

星野リゾートは経済価値と社会価値を両立する CSV 経営が重要だと考えています。SDGs(SDGs:持続可能な開発目標)を CSV 経営を促進するためのフレームワークとして捉え、各施設でさまざまな取り組みを推進しています。界 加賀の金継ぎに関する取り組みは、SDGs の目標4「質の高い教育をみんなに」、目標12「つくる責任 つかう責任」に寄与することを目指しています。








「金継ぎ工房」概要

時間:見学 15:00〜17:30

金継ぎいろは 15:30〜30 分間/16:30〜30分間

定員:金継ぎいろは 15:30〜6 名/16:30〜4名

対象:宿泊者、12 歳以上を対象

予約:金継ぎいろは 当日現地フロントにて予約

料金:無料

詳細:https://hoshinoresorts.com/ja/sp/kaikaga_kintsugi/



界とは

「界」は星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランドです。
「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、季節の移ろいや和の趣、伝統を生かしながら現代のニーズに合わせたおもて なしを追求しています。また、その地域の伝統文化や工芸を体 験する「ご当地楽」や、地域の文化に触れる客室「ご当地部 屋」が特徴です。2024年4月には、宮城県・秋保温泉に「界 秋保」、秋には岐阜県・ 奥飛騨温泉郷に「界 奥飛騨」を新規開業します。
URL:https://hoshinoresorts.com/ja/brands/kai/



 界 加賀(石川県・山代温泉)

 加賀水引・加賀友禅などの伝統工芸をちりばめた客室や、スタッフが披露する加賀獅子舞など、伝統とモダンが融合した宿。山中漆器や九谷焼の器で料理とのマリアージュを楽しめます。名物料理「活蟹のしめ縄蒸し」は、ミシュランガイド富山・石川(金沢)に紹介されました。
所在地 :〒922-0242 石川県加賀市山代温泉 18-47
電話 :050-3134-8092(界予約センター)
客室数 :48 室・チェックイン:15:00/チェックアウト:12:00
料金 :1 泊 31,000 円~(2 名 1 室利用時 1 名あたり、サービス料・税込、夕朝食付)
アクセス:加賀温泉駅よりタクシーで約 10 分/小松空港より車で約 30 分
URL :https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikaga/ 



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会社概要

星野リゾート

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URL
https://www.hoshinoresorts.com/
業種
サービス業
本社所在地
長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉2148
電話番号
-
代表者名
星野佳路
上場
未上場
資本金
-
設立
1914年04月