ユナイテッドアローズ栗野宏文氏、ファッションデザイナー中里唯馬氏、Hat & Head-piece designer日爪ノブキ氏によるトークイベント開催
それぞれが考える”ものづくり”と”道具”について語る
グローバル刃物メーカーの貝印株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長兼COO:遠藤浩彰)は、11月8日(金)に、 Shibuya Sakura Stageにて「KAI Hat & Head-piece Competition 2024 最優秀賞授賞式」を開催しました。イベントでは、株式会社ユナイテッドアローズの栗野宏文さんとファッションデザイナー中里唯馬さんをゲストに迎え、 KAI Hat & Head-piece Competitionの審査員も務められた Hat&Head-piece designerの日爪ノブキさんとトークショーを行いました。
日爪ノブキ氏×栗野宏文氏×中里唯馬氏によるトークショー
「KAI Hat & Head-piece Competition 2024 最優秀賞授賞式」のイベント後半で、株式会社ユナイテッドアローズ 上級顧問クリエイティブディレクション担当の栗野宏文さん、ファッションデザイナー中里唯馬さんをゲストにお迎えし、「KAI Hat & Head-piece Competition 2024」の審査員でフランス国家最優秀職人章の称号をもつHat & Head-piece designer日爪ノブキさんの3名で対談形式のトークショーを行いました。
トークショーは、本コンテストの受賞者の方々の作品のクオリティの高さの話題から始まり、どの作品が受賞されてもおかしくない仕上がりで本当に驚いたこと、またこの会場に入ってすぐ、作品の話題で盛り上がったと栗野さんよりお話しいただきました。
また、日爪さんからはご自身の帽子デザイナーになるまでの歩みをお話しいただき、その中でも日爪さんは「帽子経験ゼロのなかで、たまたま日本で開催したブロードウェイミュージカルの帽子・ヘッドピースのチーフをやってほしいというオファーがあったことをきっかけに帽子を作るようになり、これこそ自分自身が得意としていることだということに気づき、帽子デザイナーになった。」と説明しました。日爪さんの話を聞いて栗野さんは、「帽子はそもそも必需品ではないが、シンプルな格好をしていても帽子を被るだけで違う世界に連れて行ってくれる。本来ファッションはそういうものだと思っていて、本コンテストの作品もどれもクリエイティブで自由な発想が本当に素敵だと感じた。」と語りました。
中里さんは、「現代ファッションはどれだけ温かいかや動きやすいかなどの機能性というのがすごく重要だが、一方で装飾は不必要に思われがちだったり、着飾っていくカルチャーよりも快適さを選ぶことが現代だと思っている。しかし、アフリカを旅したときに出会った部族の方がビーズを纏っており、暑く過酷な環境下のなかでも装飾性を非常に大切にしていた姿を見たときに、現代は非常に勿体ないものを排除してしまっていると感じた。」とお話ししました。また、中里さんは「学生時代に帽子デザイナーのスティーブン・ジョーンズの授業を受けたことがあり、その際にA4の紙をねじって頭に乗せたときに、急に立ち姿が美しくなり、ただのA4の白紙が変わることに感銘を受けた。人の頭になにかを乗せるという行為は非常に大きい意味を持つことを痛感した。」と語られました。
帽子のカルチャー/オートクチュールについて / 縫製ハサミ「O(オー)」について
次に栗野さんから日爪さんへ「フランスは帽子のカルチャーが根付いていると思うけど、肌感で日々感じていることはありますか?」と伺うと、日爪さんは「正直現代では私生活でそういうカルチャーを垣間見ることはないが、ドレスコードがあるような場所に行くと”帽子”はなくてはならないものと痛感する。日本人はそもそも帽子を被る習慣がないからそういう意味で最初は新鮮だった。」とコメントしました。また、「フランス語のなかでも帽子にまつわる言い回しが複数あることなどからも国の中で帽子というものは格が高いもののように扱っている。」と話しました。
そして、日本人として唯一、パリ・オートクチュール・ファッションウィークにてコレクションを発表し続けている中里さんにフランスで対応しているお客様はどんな方がいらっしゃるかを伺ったところ、「非常に特殊なお客様が多く、やはり人前に立つお仕事をされている方がほとんどで、既製品だとどうしても他人と被ってしまったり自分の個性を出していきたいときにオーダーしてくださることが多い。大量生産だと同じデザインをどれでけ多くの人に届けるかということがデザインの基準になってくると思うが、一点ものというのは、世界で一つだけということに意味があるので、お客様の印象や雰囲気を対話の中で感じつつ考えていくことほとんど。今の時代と真逆のものづくりではあるが、手づくりとかクラフトマンシップのならではのものづくり、なのかなというふうにも思ったりして、なのでこれからもなんとか続けていきたい。」と話しました。この話を聞いて栗野さんより、日本は国内で服も帽子も靴も作れる数少ない国になってしまい、フランスはファッションの街でありながらmade in Franceが少ない中で活動している日爪さんへも話を伺い、日爪さんは「こういう時代だからこそ、一点もののものづくりをしたいと思った。自分の相棒みたいなものに出会えたら、それが自分にとって高い値段でもほしいと思える生き物が人間だと思う。そういうものと出会えるように、お客様としっかり会話して作っている。帽子は特に似合わないからと諦めている人が多いが、絶対にそういうことはなく顔に合うバランスの帽子を見つけることができれば誰でも似合うからそれを探すためにも会話というのは大切にしている。」と伝えました。
また、貝印と日爪さんが縫製ハサミ「O(オー)」共同開発した経緯についても詳しく伺いました。日爪さんは「貝印さんから、貝印の縫製ハサミを使っているフランスのクラフトマンに会うというプロジェクトで初めてお会いした。そのときに愛用していた貝印の縫製ハサミについて話したところ、作り手の悩みを解決するハサミを一緒に作ろうとこのプロジェクトが始まった。」と説明しました。その「O」について日爪さんからこだわりを詳しくお話いただきました。「まずハンドルは、普通の丸いハンドルだと開閉するときにすごく無駄な力を使ってしまうため毎日・毎週使っていると手にタコができてしまう、そうなると第2の手にならず使いづらいため、第2の手となるようなハンドルを意識した。そして刃は、「理美容ハサミ」から発想を得て今回オリジナルで作り、いかに劣化することなく縫製ハサミとして使用できるのかを多くの時間をかけて研究、道具(ハサミ)は重心が大事になってくるため、ハサミそれぞれの種類で適切な重心を確認し追求した。」と語った。普段から貝印の縫製ハサミを使用している中里さんも「O」の切り心地に驚き、早く発売してほしいとコメントいただきました。
時間内では語りきれないほど盛り上がり、参加者の方々も第一線で活躍されている皆さんの話に耳を傾け、熱心に聞かれておりました。
切れ味とやさしさ展 展示会概要
「KAI Hat & Head-piece Competition 2024」にて優秀賞に選出された帽子作品は一般向けの展示も実施しています。
展示会概要
展示期間:2024年11月9日(土)〜11月14日(木)全日程 11:00~21:00
※最終日14日のみ17:00まで
会場:Shibuya Sakura Stage SHIBUYA SIDE 4F 404 Not Found
(東京都渋谷区桜丘町1−4 Shibuya Sakura Stage SHIBUYA SIDE 4F)
登壇者 プロフィール
日爪ノブキ氏
2004年に文化服装学院アパレルデザイン科を首席で卒業後、渡伊。イタリアのメーカーよりアンダーウェアのデザイナーとしてコレクションを発表する。帰国後、国内外の舞台やミュージシャンの帽子・ヘッドピースを手がけ、同時にアーティスト活動として「NOBUKI HIZUME」を展開。2009年よりフランスに拠点を移し、数々のグランメゾンのパリコレクション用の帽子を手掛けている。2019年、フランス国家最優秀職人章に認定。※フランス国家最優秀職人章(Meilleur Ouvrier de France:M.O.F.)は、フランス文化の継承者にふさわしい高度な技術を持つ職人に授与される称号で、日本の重要無形文化財(通称、人間国宝)認定制度に相当すると言われている。同年、帽子ブランド「HIZUME」をスタートさせる。FW22、FW23のLOEWEのコレクションにおいては伝統的な帽子作りの技術を生かし洋服作りにも挑戦している。
栗野宏文氏
1953年生まれ。大学では美学を学び卒業後はファッション小売業会へ。
Suzuya, Beamsを経て1989年にユナイテッドアローズ創業に常務取締役として参画。
2008年、CCO等の役員職を辞して上級顧問に就任。
アントワープ王立アカデミー、英国王立アカデミー(RCA),ポリモーダ・フィレンツェ、ここのがっこう、LVMHプライズetc…と日本及び世界のファッション・スクールの卒業審査やメンターを引き受ける。2020年“モード後の世界”を扶桑社にて上梓。
中里唯馬氏
1985年、東京生まれ。芸術家の両親のもとで育ち、高校卒業後ベルギー・アントワープ王立芸術大学ファッション科に入学。在学中に ドリス・ヴァン・ノッテンやウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、リンダ・ロッパらの指導を受ける。2008年に同校修士課程を卒業。卒業作品はアントワープ6の一人アン・ドゥムルメステールよりイノベーション・アウォードを受賞した他、数々の賞を受賞。2016年 から現在に至るまで、日本人として唯一、パリ・オートクチュール・ファッションウィークにてコレクションを発表し続けている。近 年では、単独回顧展 BEYOND COUTURE がフランスのカレー・レース・ファッション美術館にて開催された。日本人ファッションデ ザイナーの回顧展がフランスの公立美術館で行われるのは、三宅一生、山本耀司、森英恵以来の4人目となる。また、アメリカのボス トン・バレエ団やスイスのジュネーブ国立劇場等で行われるオペラやバレエ等の舞台芸術の衣装デザインを行う。
貝印株式会社
1908年、刃物の町として有名な岐阜県関市に創業。現在、生活に密着した刃物を中心とするカミソリ、メンズグルーミング、ツメキリなどの身だしなみやビューティーケア、包丁をはじめとする調理・製菓、医療用など1万アイテムにもおよぶ商品を展開し、商品の企画開発から生産、販売、物流までの一連を行っているグローバル刃物メーカー。
本社:東京都千代田区岩本町3-9-5
代表取締役社長兼COO 遠藤 浩彰 https://www.kai-group.com
本件に関する読者の皆様からのお問い合わせ先
貝印株式会社 お客様相談室
〒101-8586 東京都千代田区岩本町3-9-5
TEL:0120-016-410 (フリーアクセス・ひかりワイド)
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