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国境なき医師団(MSF)日本
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アフガニスタン:貧困、女性への規制、機能不全の医療体制で、市民の医療アクセス困難に――MSF報告書

国境なき医師団

アフガニスタンでは、広がる貧困、女性への規制強化、機能不全な医療体制により、医療や人道的ニーズが急増している――。国境なき医師団(MSF)はこのたび、医療データやスタッフと患者の証言をもとにした報告書『Persistent Barriers to Access Healthcare in Afghanistan』(英文)を発表した。アフガニスタンの人びとが医療を受ける際に直面する主な課題を浮き彫りにし、政策立案者、資金援助国、地方自治体が、地区レベルでの基礎医療の強化に緊急に注力すべきであると指摘する。また、国際機関・団体は経済危機への対応策を講じる必要があり、女性には高等教育や雇用の機会を許可することで、家族のために収入を上げ、国内に必要かつ十分な女性医療従事者を確保しなければならないと主張する。

クンドゥーズ外傷センターに入院する、足を撃たれて負傷した女性=2022年11月25日 © Nava Jamshidiクンドゥーズ外傷センターに入院する、足を撃たれて負傷した女性=2022年11月25日 © Nava Jamshidi

 
  • 9割以上が収入減少

報告書の調査対象となった全回答者のうち、91.2%が2022年に収入が減少したと答え、その数は前年に比べて15%増加した。また、95%が過去12カ月間で食料購入に困ったことがあると回答。これは主に、失業率の上昇と食料品を中心とした物価の上昇に対し、給与が伸び悩んだことにある。国際社会による経済制裁で経済活動がまひしていることに加えて、アフガニスタン中央銀行の資産70億米ドル(約9235億円)が海外で凍結されていることが影響している。

MSFが支援するヘラート州立病院で勤務する医療スタッフ、ハディアは「栄養失調のあまり、母乳が出ない母親がいます。代わりに哺乳瓶にお茶を入れて生後7~8日の赤ちゃんに飲ませる非常に危険な行為を見かけることもあります」と懸念を示す。
 
  • 病院に行くために借金

多くのアフガニスタン人は経済危機の中で、最善の選択肢を奪われている。全回答者の88%が2022年に医療を受けることを先送りするか、治療を中断するか、または治療を受けない決断をしたと回答し、これは前年と比べて14.3%増加した。MSFが支援するヘラート州立病院を受診したマリーエさんは、「子どもが病気になったとき、私立の診療所に行って、1000アフガニ(約1470円)の薬を処方してもらいましたが、症状は改善しませんでした。近くの公立病院にも行ってみましたが、そこでは必要な薬の半分しかくれませんでした。それでこの病院にきたのです。すでに子どもの具合は悪化してしまい、私は病院に行くために多額の借金をしてしまいました」と答えた。

アフガニスタンでMSFの代表を務めるフィリップ・リベイロは、「アフガニスタンにおける大きな問題の一つは、地方の医療施設が設備も資金も人材も、何も確保できないことです。それにより、地方に暮らす人びとは、質の高い治療を受けるために、借金して遠方まで行かなければなりません。戦争が終われば医療へのアクセスは容易になるだろうという期待は、新たな障壁によって打ち砕かれました。戦争終結後、病院までの道のりの危険性は薄れたものの、金銭的な余裕がなくなったのは確かです」と指摘する。
 
  • 女性の医療アクセスに立ちはだかる壁
 

ヘルマンド州ラシュカルガにあるブースト病院で新生児の診察をする医師==2020年10月19日 © Andrew Quiltyヘルマンド州ラシュカルガにあるブースト病院で新生児の診察をする医師==2020年10月19日 © Andrew Quilty


調査対象者の60%以上が、女性が医療を受ける際、男性よりも大きな困難に直面していると回答した。その多くがマフラム(男性親族)と呼ばれる長年の社会文化的慣習に即した移動制限によるものだ。この慣習は、外出する女性に男性親族の同伴を義務付けるもので、同伴する男性の親族がいない場合や、1人分でさえ難しい旅費を2人分工面しなければならなくなるなど、患者、付き添い看護人、人道援助従事者全ての人にとって、病院へたどり着くための障壁になる。

2022年12月、アフガニスタン政府は、女性がNGOで働くことや、大学レベルの教育を受けることを禁止する決定を発表した。これにより、女性が一層医療にアクセスしづらくなると予想される。

「MSFのいくつかのプロジェクトでは、婦人科医を含む必要なポジションに適任者を見つけることが困難になっています。女性への教育が制限されたら、次世代の医師、助産師、看護師は育ちません。アフガニスタンにおけるMSFの産科プロジェクトは、昨年、4万2000件以上の分娩を介助し、そのうち8000件以上は直接的な産科合併症を伴っていました。女性の教育や就労を禁止すれば、母親や子どもの命をより大きなリスクにさらすことになります」とリベイロは結論付ける。

 ※本稿で引用されている女性の名前は、安全確保のため全て仮名を使用している。
 
本報告書は、ヘルマンド州、ヘラート州、カンダハール州、ホースト州、カブールにおけるMSFのプロジェクトにおいて、患者、付き添い看護人、スタッフからの医療データ、インタビュー、アンケートをまとめたものである。MSF は、アフガニスタンにおける医療アクセスの障壁について、2014年と2020年、2021年に発表された報告書でも記録している。

 

報告書『Persistent Barriers to Access Healthcare in Afghanistan』(英文)はこちらから
https://www.msf.or.jp/publication/pressreport/pdf/Report_Persistent_Barriers_to_Access_Healthcare_in_Afghanistan.pdf


 

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業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
電話番号
03-5286-6123
代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月
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