「血の掟」で支配された指定暴力団・工藤會に対し、警察・法務当局は如何なる手段でトップの摘発に至ったのか。その全貌を描いたドキュメント『工藤會事件』6月30日発売。 

株式会社新潮社

上意下達が徹底され強固な組織力を誇る工藤會に対して展開された「史上最大の頂上作戦」。警察庁、法務省、検察庁がタッグを組んだオペレーションの詳細を描く『工藤會事件』が6月30日、新潮社より刊行されます。


 2014年に福岡県警が着手した工藤會への強制捜査は、いきなりトップを逮捕する=頂上作戦という電撃的な展開を見せました。この捜査は、県警だけでなく、上部組織の警察庁、検察庁、法務省が捜査の目的(必ずトップを逮捕する)を明確にし、現場の福岡県警・福岡地検へ強力なバックアップを行ったことで成功したものです。しかし、そこまでの道のりは決して平坦ではなく、紆余曲折の連続でした。著者は、捜査に携わった多くの警察、検察幹部を取材し、また膨大な資料を駆使して、この史上最大のオペレーションに関わった人々のドラマを描きだしました。
 検察・法務当局への取材には定評のある著者が、工藤會をめぐる「頂上作戦」に関心を抱いた最大の理由は「凶悪な犯罪集団の摘発にとどまらず、法執行当局、特に検察にとって歴史的な意味があると思うようになった」からだといいます。2009年、大阪地検特捜部が摘発した厚生労働省局長の郵便不正をめぐる無罪事件で、検察側に都合のいいように押収証拠に手を加えたほか、翌10年には特捜部の主任検事らが逮捕され、検察の信頼は地に落ちました。工藤會に対する頂上作戦はちょうどこの頃、水面下で始まっています。担当した検事や警察官たちは適正手続きを最優先に考え、工藤會組員や関係者の説得に当たり、供述を拾い上げていきました。暴力団トップが関わる組織犯罪という「大きな山」を攻略したのは、基本に忠実な、いわば教科書通りの適正手続きを重視した捜査の結果でもあったといいます。頂上作戦に携わった多くの検事や警察官は文字通り、職務に体を張りました。彼らの凄まじいまでの執念のドラマを本書で味わっていただきたいと思います。


■あらすじ
「必ずトップを逮捕せよ!」――一般人への攻撃を繰り返す組織犯罪集団を、当局はいかに攻略したのか? 警察庁と法務省・検察庁が強力なタッグを組み、「血の掟」で支配された指定暴力団・工藤會に対して展開された、前例のないオペレーションの全貌と、失敗から始まった紆余曲折の舞台裏を、豊富な資料と当事者の生証言で描く。


■目次
はじめに
 捜査への追い風 最高検の「待った」 突然の異動 成功と失敗の教訓
第一章 工藤會トップらが罪に問われた事件
 元漁業組合長射殺事件 恫喝、威嚇発砲、そして…… 野村、田上を取り逃がした第一次捜査 因果応報
 元福岡県警警部への銃撃事件 女性看護師襲撃事件 歯科医師事件
第二章 「無法地帯」
 産業国策が生んだ『花と龍』の土壌 工藤會の歴史 暴排・標章掲示店の経営者襲撃 反社テロの系譜
 安倍晋三宅に火炎瓶 建設業者も標的 金の切れ目は、射殺
第三章 動き出す福岡県警・福岡地検
 暴走の原因は何か? 「みかじめ料市場」独占の帰結 取締り側の問題 「ひね」
 検察と警察の不毛ないがみ合い 追い詰められた警察庁 不退転の決意 反転攻勢体制の構築
 県警のエース起用 捜査手法の転換と体質改善 熱血本部長の投入 事件を食うか、食わないか
 検察の「ミッション・インポッシブル」 未解決事件の山 「全員起訴」方針 「無罪」で勢いづく暴力団
第四章 ターニングポイント
 写真週刊誌での発言が引き金? 原点は洋上石油基地利権 政界と暴力団に工作 草野―梶原コネクション
 県警の「反社」通報と指名停止 「絆」 強引な捜査が招いた漁業関係者の不信 「警察に売られる」
 適正手続きを怠ったつけ
第五章 トップを逮捕!
 「反撃」の手がかり 共謀共同正犯理論の「成熟」 「二転三転」 田上不起訴処理の疑問
 被害者遺族への説得 非協力から協力へ 元組員の協力 後ろ髪を引かれる思いで 後任支部長の判断
 福岡県警の苛立ち 「陳情」 被害者とともに泣く 高検、最高検の了解
 捜査資料と関係者証言の齟齬 パジャマで逃げ出した野村 「梶原の顔を見たこともない」
 トップ逮捕の効果 画像解析捜査の威力 市民襲撃事件の摘発 組員の動揺
第六章 捜査のはらわた
 「鉄壁」への挑戦 「メッセンジャー」の転向 10人の供述 工藤會組員が「落ちた」理由
 取調官が「親分」になる 協力者保護プログラム
第七章 検察=警察のてこ入れブースター
 アグレッシブな指揮官配置 もうひとつの再捜査事件 裁判員恫喝事件 工藤會と戦う検事の覚悟
 情報収集体制の近代化 コラボの象徴「脱税摘発」 早すぎる死
第八章 綱渡りの捜査が暴いたみかじめビジネスの実態
 逮捕直後に崩壊した容疑 「みかじめ料原資」に容疑転換 建設会社会長射殺事件の「怨念」
 「紐付け」に成功 工藤會のみかじめ料ビジネス 裁判は検察側の圧勝
第九章 法廷での激闘
 初公判は逮捕から5年後 裁判の構造と争点 弁護側の言い分 検察側の戦略
 極刑言い渡しに安堵した福岡県警 裁判長への「捨て台詞」 福岡地裁の判断 極刑を選択した理由
 判決の意味 暴力団事件への抑止効果? 複雑な思いの検事
第十章 工藤會対策の成果と課題
 「警察、行政、民間」による工藤會追い込み 安全・安心を実感 「失敗」の本質
 建設業界との向き合い方 暴力団「統治」新時代
あとがき
 「全員参加の地域社会」で解決へ 「怖いまち」から「希望のまち」へ
 原点は31年前の中学生ホームレス襲撃 ヤクザ組織に変わる受け皿に 抱樸の名の由来 謝辞

 

■著者紹介:村山治
1950年徳島県生まれ。1973年に早稲田大学政治経済学部を卒業し毎日新聞社入社。1988年、東京社会部記者として「薬害エイズキャンペーン」を手掛け、1989年の新聞協会賞を受賞した連載企画「政治家とカネ」取材班。1991年に朝日新聞社入社。東京社会部記者として金丸事件、ゼネコン汚職事件、大蔵省接待汚職事件などの大型経済事件報道に携わる。2017年からフリー。著書に『特捜検察vs.金融権力』(朝日新聞社)、『検察 破綻した捜査モデル』(新潮新書)、『市場検察』(文藝春秋)、『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』(同)など。


■書籍データ
【タイトル】『工藤會事件』
【著者名】村山治
【発売日】6月30日
【造本】ソフトカバー
【本体定価】1650円(税別)
【ISBN】978-4-10-354681-8
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/354681/

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会社概要

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業種
情報通信
本社所在地
東京都新宿区矢来町71
電話番号
03-3266-5220
代表者名
佐藤隆信
上場
未上場
資本金
8000万円
設立
1896年07月