ブルガリ 第一回 「ブルガリ メチェナーテ」最優秀作品・優秀作品を発表
ブルガリ文化支援プロジェクト×東京藝術大学 工芸の技と創造力の出逢い
70を超える応募から選出された11作品のうち、優秀作品に選ばれた3作品の制作者には奨学金を支給、また優秀作品のうち最優秀作品には、副賞としてイタリア・ローマを訪れて美と伝統を巡る「シークレット ブルガリ ツアー」がブルガリ ジャパンより贈られました。優秀作品の選考は、東京芸術大学美術学部長 日比野克彦氏、同 美術学部副部長 藤原信幸氏、同工芸科 漆芸(漆工)教授 小椋範彦氏、そしてブルガリ ジャパン代表取締役社長 ウォルター・ボロニーノが担いました。
本プロジェクトの発起人のひとりである内閣総理大臣夫人安倍昭恵氏は、以下の賛辞を寄せております。
日本の伝統工芸品は高い技術を持つ匠の手仕事による素晴らしい美術品であり、生活の中で使用される実用品でもあります。匠の手仕事を支えるのは、貴重な原料を生産する生産者と高度な技術をサポートする数々の用具と熟練した技であり、完成するまでには、多くの工程を経て、人々の心を尽くし、細やかな気遣いが施されます。大量生産、大量消費の生活様式が普及し、伝統工芸品の需要が低迷している中で、原材料の枯渇、職人の高齢化、後継者不足などの現状があります。品質の良い物を、手入れをしながら大切に受け継いでゆく心が環境や人を慈しむ豊かな心を育てるものと思います。今回のブルガリ メチェナーテがその一助となればと思います。
最優秀作品に選ばれた山口桂志郎氏は次のようにコメントを述べました。
この度は最優秀賞に選出いただき、誠にありがとうございます。今まで素材と向き合い、その性質を理解し誠実に手を加える事を大事にしながら製作を続けてきました。そのなかで自分の表現以上に、素材同士が、また手を加える事で反応し変容する場面があったように思えます。今回使った素材、鬼胡桃の木、漆、それぞれの魅力を引き出すことができたと思います。それを評価していただけた事、それ以上に私と素材の対話を深く理解していただけた事が何よりの喜びです。ありがとうございました。
優秀作品に選ばれた松崎森平氏は次のようにコメントを述べました。
この度は、素晴らしい賞をいただき本当にありがとうございました。私は芸大で漆芸を学び、卒業後は多くの方が思い浮かべる伝統工芸の世界で作品を発表してきました。そんな中、今回のBVLGARI MECENATE X TOKYO UNIVERSITY OF ARTという機会では、これまで培ってきた漆の伝統技法を生かし、今までにない新しい絵画表現を目指しました。今回用いた「蒔絵」という技法は、漆を塗り、それを接着剤にして金銀粉を蒔き付けていきます。漆黒の闇の中に、粉をぼかして蒔き分けることで、細かい粒子の濃淡を生み出し、自らが感じる「都会の夜の気配」を表現したいと制作しました。展覧会では、既存の漆芸作品では出会えない、新しく刺激的なアイデアや表現がたくさん見られ大変勉強になりました。これまで寄り添ってきた漆という素材に、新たな視点で挑戦し向き合う機会をいただけたことに感謝し、これからも描き続けたいと思います。
優秀作品に選ばれた李沛沛氏は次のようにコメントを述べました。
漆をちゃんと勉強してから、もうすぐ六年目になります。近年は漆に関する展示会に作品を出していましたが、賞を受けたことがありませんでした。今回は初めてです。ずっと漆に魅了され、蒔絵の国である日本へ留学にきました。東京藝術大学の小椋範彦先生の下で、漆芸技法を学んでいます。ブルガリは中国でもとても有名なブランドで、学部の時に、中国国家博物館でブルガリのジュエリー展がありました。それを観に行きました。真っ暗な展示室で、美しいジュエリーがキラキラして、とても感動しました。漆を自分の言葉として、世界の方々に色んな気持ちをお伝えできればと思っています。いつもは花が咲いている生命力の強いサボテンのイメージを、制作していますが、今回は初めて乾漆箱を挑戦しました。まだまだ経験不足の私が、素晴らしい審査員に作品を選ばれるとは、本当に思わなかったです。こんなに良い場所で展示できて、受賞式も参加させていただき、心から感謝しております。一生忘れない思い出になると思います。MECENATEのきっかけでお会いになった全ての方々に、感謝申し上げます。
第一回ブルガリ メチェナーテのメンターであり、漆芸家そして蒔絵の重要無形文化財保持者である室瀬和美氏は、次のようにコメントを寄せております。
日本の工芸文化は千年を超える歴史を持ち、数多くの芸術作品を生み出してきた。日本の美術は「公」であれ「私」であれ、常に生活空間の中で使用する役割を持ちながら表現されてきた。最も重要な点は日本の工芸文化には「自然」が根底に流れている事である。日本の国土は豊かな自然に恵まれ、四季折々の表情を持っている。その自然を享受しながら養われた感性を基に、土・布・紙・木・竹・金属・玉・貝、さらに漆液という自然からの素材を用い、「技」を通して美を表現してきたのが日本の工芸文化である。さらに素晴らしい事は長い歴史の中で、時代毎に新たな表現を生み出し、それが現在まで途絶える事なく現代に繋がっている事である。今回の場が伝統の価値観を伝えながらも新たな感性を通し、多くの作品が未来に向けて生み出される場となる事を期待している。
東京藝術大学美術学部長であり、第一回ブルガリ メチェナーテ講演会のモデレーターでもある日比野克彦氏は、次のようにコメントを寄せております。
世界中の地域にはそこから生まれた物をつくる技がある。気候、地形、植物体系と人は対話をしながら想像する力を学び、物を生み出してきた。私たちは今、地球環境が、社会のネットワークシステムが大きく変化する時代に対面している。未来をあらゆるもの、こと、に対して寄り添い、眼差しを向けるようにする為に、私たちは、先人たちが会得した技に、人が持っている想像する力を注ぎ込み、心に語りかけてくる何かを創り出していきたい。
ブルガリ ジャパン代表取締役社長 ウォルター・ボロニーノは、次のようにコメントを寄せました。
ラグジュアリー業界は恵まれています。だからこそ我々には道義的責務があるのだと確信しております。「美しいものが失われないよう保存し、次世代へ引き継いでいくこと」かつてパオロ・ブルガリから言われた言葉です。ブルガリ本社は、ローマのスペイン階段やヴェネツィアのドゥカーレ宮殿、直近ではトルロニア・コレクションなど様々な文化遺産の保護活動を支援しています。日本においてもブルガリ メチェナーテを通じて、美術工芸における職人技やその知識を保護し、若い芸術家へ伝承する一助になれれば大変嬉しく思います。このように皆さまに知っていただけることで、美しきものをより長きにわたって保存していけるのだと信じております。
様々な美術工芸品を誇る日本において、その一部は重要文化財・重要有形民俗文化財に指定され、職人とその好事家たちにより、伝統と継承が守られてきました。現代に生きる私たちは、先人が残した逸品を愛で、その美を求める崇高な人々の想いに痛み入り、雅やかなる時代へ想いをはせて参りました。たとえ時代が移り変わろうと、美を創造するのは偉大なる自然と人々の情熱だといえましょう。ローマで誕生し「宝石の魔術師」と称されるブルガリもまた、美を極めるという使命のもと職人を守り、130年以上に及ぶ歴史を刻む一方で、先見の明を持ち、コンテンポラリーなブランドとしての地位を確立してまいりました。その共通する精神と価値観は、「ブルガリ メチェナーテ」の設立に深く起因しております。
メチェナーテは芸術と文化の援護活動を意味するイタリア語です。その語源はローマ帝政時代の初代皇帝アウグストゥスの腹心であったガイウス・メチェナス/Gaius Cilnius Maecenenasに由来するといわれています。メチェナスは皇帝アウグストゥスの外交・政治面のアドバイザーであり、またアウグストゥス時代に輩出した新世代の詩人・文学者の最大の支援者として広く知られた人物でした。この素晴らしき古代ローマ史実にインスピレーションを得て、ブルガリは「ブルガリ メチェナーテ」の設立に至りました。「ブルガリ メチェナーテ」は、若者たちに芸術活動のチャンスを提供することにより、日本の伝統的美術・工芸技術技法の継承に役立ち、古き良き技術とコンテンポラリーの融合・出逢いを目的としています。
漆とは:
第一回ブルガリ メチェナーテのテーマは「漆」です。
日本の漆芸は高度な技法が現代に伝えられていますが、多くの行程で継承が難しい局面を迎えています。漆芸とは、漆の木から出る樹液を器の表面に塗ったり模様を描いて作品をつくる技術のことをいいます。漆は固まると水をはじき、くさらない被膜を作るので、昔から生活の道具に用いられてきました。椀や箸、盆や重箱など、漆が塗られた器をすぐに見つけることができます。漆は石器時代から接着剤として使われ、塗料としては9000年前の縄文遺跡から赤い漆が塗られた装飾品が見つかっています。この漆の特徴をいかし、金・銀や貝で美しく装飾し、大切な文書や衣装を入れる箱や、楽器、刀の鞘や鎧などがつくられてきました。漆芸はいろいろな素材と道具と様々な技法によって出来上がります。漆塗りをするためには素材を加工し器物(形)=素地にする必要があります。その素材には木材、麻布等の布、竹、紙、皮革、金属や陶磁器などもあります。漆を箆(へら)や刷毛(はけ)で素地に塗ることを髹漆(きゅうしつ)といいます。素地を堅牢なものにするための下地を施した後、様々な上塗り(仕上げ)をします。漆の塗り肌はそれだけでも深く柔らかな美しさと魅力的な造形があります。
さらに漆の持つ特性を活かし、豊かな表現力を持った加飾技法の一つに蒔絵(まきえ)があります。漆器の表面に漆で文様などを描き、それが硬化しないうちに金や銀の粉を蒔きつけて定着させる技法です。 蒔絵は日本独自に発達した漆芸の代表的な技法で1200年ほど前から行われています。
ブルガリ メチェナーテ スケジュール:
6月6日 「ブルガリ メチェナーテ 講演会」 於 東京藝術大学 上野キャンパス
東京藝術大学美術学部長である日比野克彦氏をモデレーター、蒔絵の重要無形文化財保持者である漆芸家の室瀬和美氏をメンターに、ファッションデザイナーの舘鼻則孝氏、アート集団チームラボ代表の猪子寿之氏、モデルの森星氏をパネリストに迎えて、東京藝術大学在校生に向けたトークショーを開催しました。
8月 19, 20, 21日 アートキャンプ開催 於 東京藝術大学 取手キャンパス
東京藝術大学の在学生、卒業生を対象に募集にて選出された15名が、東京藝術大学 取手キャンパスにて二泊三日に及ぶ漆芸装飾「蒔絵技法」「沈金技法」を体験するアートキャンプに参加しました。初日に重要無形文化財「蒔絵」保持者である室瀬和美氏を招き講義を行いました。
・漆芸研究室講師が取手漆樹植栽地を引率し見学、漆掻き漆精製の講義、映像鑑賞(40分程度)
・漆で絵を描き、金属粉を蒔き付け表現する「蒔絵体験」
・沈金刀という特殊なで刀で漆面に溝を彫り金を埋める「沈金体験」
11月 28日 作品展示 於 ブルガリ 銀座タワー
東京藝術大学の在学生、卒業生を対象に公募で選出された11作品をブルガリ 銀座タワーに展示しました。11作品のうち、優秀作品に選ばれた3作品の制作者には奨学金が支給されました。優秀作品のうち最優秀作品には副賞としてイタリア・ローマを訪れて美と伝統を巡る「シークレット ブルガリ ツアー」がブルガリ ジャパンより贈られました。
夢と創造を胸に抱く若者たちの情熱とともに、日本の伝統工芸の伝統が未来へと紡がれていくことをブルガリは願ってやみません。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像