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【国立科学博物館】自動車排ガス浄化触媒を高耐久化する画期的な手法を開発〜貴金属使用量の低減や環境負荷の軽減の鍵に〜

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独立行政法人国立科学博物館(館長:篠田謙一) の林峻研究員(理工学研究部理化学グループ)、東京都立大学大学院 都市環境科学研究科の遠藤伸二(博士前期課程修了)、三浦大樹准教授、宍戸哲也教授からなる研究グループは、自動車排ガス浄化触媒の耐久性を劇的に向上させる触媒調製手法を開発しました。活性成分である貴金属元素の複合クラスター化を利用する画期的手法によって調製した触媒は、1000ºCにも及ぶ高温で劣化処理を施しても性能がほとんど低下しませんでした。先進国では電気自動車の普及が進むものの、新興国を中心として自動車需要が増加し排ガス規制が強化される中、貴金属を大量に使用する自動車排ガス浄化触媒の耐久性向上は、貴金属使用量の低減や環境負荷の軽減のために重要な技術です。本手法は既存の技術との組み合わせが可能であり、相乗効果が期待されます。
本研究成果は2023年5月31日にアメリカ化学会が発行する英文誌「ACS Materials Au」に掲載されました。
  • 研究のポイント

・貴金属元素であるロジウムをモリブデンと複合クラスター化するという触媒調製手法を開発しました。
・自動車排ガス浄化触媒の耐久性が劇的に向上し、1000ºCでの劣化処理後も性能の低下がほとんど見られませんでした。
・耐久性を向上させる触媒調製手法の開発は、貴金属使用量の低減や環境負荷の軽減につながります。


  • 研究の背景

 自動車排ガス浄化触媒は、自動車の排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、未燃焼の炭化水素などの有害成分を無害化する材料で、活性成分(*1)として貴金属元素(ロジウム、パラジウム、プラチナなど)が使用されています。自動車排ガス浄化触媒の課題として、1000ºC近くにおよぶ高温のエンジン排気ガスに長時間晒されることで劣化し、性能が低下する点が挙げられます。長い走行距離においても排ガス浄化性能を維持するために、触媒には大量の貴金属が使用されています。特にロジウムはプラチナやパラジウムよりも価格が10倍近く高いにも関わらず、その優れた性能から年間生産量のうち8割近くが自動車排ガス浄化触媒として用いられている元素です。先進国では有害な排気ガスを排出しない電気自動車の普及が進むものの、新興国を中心とした自動車需要の増加や排ガス規制の強化により、自動車排ガス浄化触媒の市場規模は拡大が見込まれています。ロジウムをはじめとする貴金属を大量に使用する自動車排ガス浄化触媒の耐久性向上は、貴金属使用量の低減や環境負荷の軽減につながります。


  • 研究の内容

 本研究では、活性成分であるロジウムを比較的安価な元素であるモリブデンと複合クラスター(*2)化するという調製手法を開発し、得られた担持ロジウム-モリブデン触媒(図1)が優れた耐久性を示すことを見いだしました。一般的な手法では、担持ロジウム-モリブデン触媒は、ロジウムおよびモリブデンの別々の前駆体(*3)を用いて調製されます。一方、本研究では、あらかじめロジウムとモリブデンを複合クラスター化したうえで触媒を調製します(図2)。一般的な手法ではロジウムとモリブデンが別々の微粒子を形成するのに対し、本手法では、ロジウムとモリブデンが効率的に混ざった微粒子が形成されます。1000ºCという高温で劣化処理(*4)を施し、触媒の耐久性を評価したところ、一般的な手法の触媒では、大きな性能の低下が見られました。一方、本手法の触媒では耐久性が劇的に向上し、劣化処理による性能の低下はほとんどありませんでした(図3)。触媒の構造解析や反応メカニズムの評価から、複合クラスター化によってロジウムとモリブデンが微粒子中で効率よく混ざり、ロジウムとモリブデンの界面が高密度に形成されたことが重要であることを明らかにしました。


図1図1

 図1. 本研究で開発した担持ロジウム-モリブデン触媒の電子顕微鏡写真。ロジウムとモリブデンからなる微粒子は、数ナノメートル(nm)程度の白い粒状の部分。


図2図2

 図2. 複合クラスター化を利用した担持ロジウム-モリブデン触媒の調製手法


図3図3

 図3. 劣化処理前(破線)と処理後(実線)の触媒性能

 上:一般的な調製手法 下:本研究で開発した手法(複合クラスター化)


  • 今後の展開

 自動車排ガス浄化触媒の高性能化は、これまでおもに担持材(*5)や助触媒(*6)の開発によって行われており、活性成分が貴金属元素であるにもかかわらず、その前駆体の改良は注目されていませんでした。これは、自動車排ガスの浄化のような過酷な反応環境下では、反応中に触媒の構造が大きく変化し、前駆体の違いが触媒の性能にほとんど影響しないと考えられているためです。本手法は活性成分の前駆体に関する高耐久化の新手法として、これまでの担持材や助触媒に関する技術との組み合わせによる相乗効果が期待されます。

【注  釈】
*1 活性成分
多様な元素を含む触媒のなかで、主として触媒の機能に寄与する成分。


*2 複合クラスター
金属原子、有機配位子、酸化物クラスターから構成される分子状の化合物。本研究では、金属原子としてロジウムを、酸化物クラスターの構成元素としてモリブデンを用いた。


*3 前駆体
触媒の原料となる化学物質。


*4 劣化処理
耐久性を評価するため、触媒を過酷な条件で劣化させる処理。本研究では、触媒を空気中、1000ºCで5時間加熱することで行った。


*5 担持材
活性成分を固定する土台となる物質で、活性成分の反応性、分散性、安定性に影響する。


*6 助触媒
活性成分の働きを向上させるために加えられる成分。

【発表論文】
表題:Highly Active and Durable Rh−Mo-Based Catalyst for the NO−CO−C3H6−O2 Reaction Prepared by Using Hybrid Clustering
(複合クラスター化を利用したNO–CO–C3H6–O2反応に高活性・高耐久性を示すロジウム-モリブデン触媒の調製)
著者:Shun Hayashi, Shinji Endo, Hiroki Miura, Tetsuya Shishido
掲載雑誌:ACS Materials Au
(オープンアクセス)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsmaterialsau.3c00001

本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(21K14463)および文部科学省 触媒・電池元素戦略プロジェクトの支援のもとで行われました。

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未上場
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設立
1968年06月
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