血行促進により表皮細胞が活性化するメカニズムを、ヒトの肌で新たに確認
毛細血管が広がり、酸素が行き渡ることでミトコンドリア代謝機能が活発に
花王株式会社(社長・長谷部佳宏)スキンビューティ第1研究所・解析科学研究所は、炭酸ガス配合組成物を塗布すると毛細血管が拡張し血行が促されることにより、エネルギーを生み出す働きを担う表皮細胞のミトコンドリア代謝機能が活性化することを、ヒトの肌で捉えることに成功しました。表皮細胞のミトコンドリア代謝機能が高まることは、美しく健やかな肌につながる重要なステップと期待されます。

今回の研究成果の一部は、第103回日本生理学会大会(2026年3月10~12日・東京都)にて発表予定です。
背景
血行が促進されると肌の状態がよくなると言われており、花王でもこれまで、毛細血管の状態や機能に関する研究を通じて、血行と表皮の肌状態との間に確かに関連があることを見いだしてきました。しかし、血行促進することで、肌の細胞の中でどのような変化が起きているのか、そのしくみは実は十分に解明できていませんでした。
炭酸ガスは肌に浸透すると毛細血管を拡張し、血行を促進することが知られています。そこで花王は、毛細血管拡張によって表皮細胞への酸素供給量が増えると、ミトコンドリアの代謝状態が変化することで、細胞そのものの機能にもよい影響を与えるのではないかと考えました。この仮説のもと、本研究では、血行を促す手段として炭酸ガス配合組成物を用いて、ヒトの肌上での検証を行いました。

ヒトの肌で、表皮細胞のミトコンドリア代謝状態を高精度に評価する技術を確立
仮説を検証するためには、生きているヒトの肌において表皮細胞のミトコンドリア代謝状態を評価できる計測技術が必要でした。そこで着目したのが、細胞内に存在する天然の蛍光を利用する自家蛍光スペクトル解析です。細胞が酸素を使ってエネルギー(ATP)を作る過程では、ミトコンドリアの働き具合が変化します。この変化は、エネルギー代謝に関わる物質の酸化・還元反応として表れ、それに伴って自家蛍光の特徴も変わることがわかっています。花王はこの性質を利用し、自家蛍光を指標として、ヒトの肌で細胞のエネルギー状態を評価する技術の開発を進めました。
具体的には、共焦点蛍光顕微鏡による測定条件を最適化するとともに、表皮有棘層の細胞を自動抽出する深層学習モデルを構築したことで、自家蛍光スペクトルデータを安定的に取得し、ヒトの肌における表皮細胞のミトコンドリア代謝状態を高精度に評価可能な手法を確立しました。
炭酸ガス配合組成物の塗布により表皮細胞のミトコンドリア代謝機能が高まることを、ヒトの肌で確認
花王は、2025年10月、30~40代の日本人男女7名を対象に、炭酸ガス濃度を高濃度に保持できる炭酸ガス配合組成物を前腕内側に2分間塗布する試験を実施。塗布前、および製剤を除去してから10分後までの間、表皮細胞の自家蛍光スペクトルを経時的に取得して解析を行いました。その結果、炭酸ガス配合組成物を塗布すると、炭酸ガスを含まない組成物と比較してミトコンドリア代謝機能が高まる*1ことを確認しました(図1)。

この変化が生じているときの毛細血管の状態を、花王が開発した毛細血管領域自動抽出技術*2により解析したところ、毛細血管の拡張とミトコンドリアの代謝機能の活性度合いが連動していることが確認できたことから、血行促進は細胞代謝によい影響を与えていると考えられます。
*1 同じ量の栄養からより多くのエネルギーを生み出す「酸化的リン酸化」というしくみが活発になり、エネルギー産生効率が高まった状態。
*2 2019年8月2日 花王ニュースリリース
花王 | 肌状態と毛細血管の血流調節機能との関わりを確認 顔肌の毛細血管を効率よく抽出できる画像解析技術を開発
さらに花王は、そのメカニズムを検証するため、ヒト由来の培養表皮細胞を酸素濃度が異なる環境で培養し、自家蛍光スペクトル解析を行いました。その結果、酸素濃度の上昇に伴ってミトコンドリアの代謝機能が高まることが確認できました(図2)。この結果から、今回ヒトの肌に炭酸ガス配合組成物を塗布した際に認められた表皮細胞におけるミトコンドリア代謝機能の向上は、毛細血管拡張に伴う酸素供給量の増加が要因であることが示唆されました。

まとめ
花王は今回、皮膚科学研究で培ってきた知見を活かし、ヒトの肌で表皮細胞のミトコンドリア代謝状態を可視化する新たな評価技術を確立し、炭酸ガス配合組成物による血行促進が表皮細胞のミトコンドリア代謝機能を高めることを明らかにしました。本研究は、「血行が良いと肌状態がよくなる」と言われてきた現象を、細胞レベルで裏付けるものです。今後も炭酸の肌への多面的な作用を追求するとともに、美しく健やかな肌と毛細血管血流との関係について、研究を深めていきます。
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