チャド:スーダンの紛争から逃れてきた負傷者に対応
重傷を負い取り残された人びと
MSFとチャドの保健当局がアドレの病院で治療した負傷者のほとんどは、スーダンの西ダルフール州の首都、ジェネイナの南にあるマステレイでの戦闘で銃によるけがを負っていた。MSFの緊急対応コーディネーター、クリストフ・ガルニエは、「5月中旬以降、負傷者が少しずつ到着し、ここ数日は医療を必要とする約50人が詰め掛けています。そのほとんどが、人口約8万人の国境の町、マステレイでの衝突や攻撃で銃弾を受けていて、周辺の村から避難してきた人たちも多く含まれています」と話す。
負傷者はマステレイから約10キロメートル離れたチャドのグングールに到着し、保健省とMSFによってアドレの病院へ搬送された。到着した人びとによると、マステレイで重傷を負った多くの人びとが、チャドへの移動中や西ダルフールの暴力の中で医療を受けることができず、取り残されたという。
「西ダルフールから逃れてきた人びとは、歩いて避難する人を銃撃する武装グループ、略奪される村、命を落とす負傷者など、非常に残酷な暴力を目撃しています。現地の病院は、破壊や略奪など直接的な被害が無くても、スタッフや設備、電気の不足によって、稼働に影響がでています」とガルニエは報告している。
新たな難民と既存の難民への対応
MSFは2021年からアドレで活動を開始し、保健当局と協力して、新たに到着したあるいは長期で滞在しているスーダン難民と、受け入れ側の住民のニーズに応えている。この地域に新たに到着した難民の影響もあり、5月末にはアドレ、イルタ、マハマタのMSFが支援する診療所で、小児科の診察が約40%増加した。MSFは、グングールなど難民が集まる場所を訪れて診療を行うほか、シラ州でも難民や地域住民に医療を提供している。
さらに、難民キャンプのように人びとが密集する場所では、はしかの急拡大が予想されるため、これまでに、クーフルン、ディザ、ミジグイルタ、グングールで3万人以上の子どもに集団予防接種を実施した。
雨期には悪化する生活環境
「雨期の到来とともに、すでに極めて不安定な仮設キャンプでの生活環境は悪化するでしょう。河川の氾濫は、移動や物資の提供を困難にします。毎年この時期はマラリアが流行し、地域的な食糧難と子どもの栄養失調も合わさり、最も困難な時期となります」とガルニエは懸念を示す。
また、食糧不足に陥りやすいこの地域で、経済面で重要な役割を担っていたジェネイナとの貿易が停止されたことで、主食の価格高騰も懸念される。さらに、ダルフールから逃れてきた人びとに対する援助は、チャドの地域住民や、既に過密で不衛生なキャンプで何年も暮らしている約40万人のスーダン難民のニーズにも配慮して行う必要がある。
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