エチオピア:栄養失調率の増加に、食料配給の再開が急務

国境なき医師団

エチオピアの多くの地域で栄養失調率が緊急事態のレベルを超えて急上昇している。国境なき医師団(MSF)は、今年6月初旬に同国全域で停止された食料配給を直ちに全面再開し、定期的かつ安定した配給の実施を求めている。

エチオピア北部アファール州の入院栄養治療センターで子どもの栄養失調のスクリーニングを行う=2022年6月1日 © Njiiri Karago/MSFエチオピア北部アファール州の入院栄養治療センターで子どもの栄養失調のスクリーニングを行う=2022年6月1日 © Njiiri Karago/MSF


  • 不安定な食料配給に続く配給の停止


エチオピアでは2000万人以上が食料援助に依存しており、特に難民や避難民が多い。中でも、妊婦、新生児、5歳未満児、HIV感染者は健康上のリスクが高い。


同国でMSFの活動責任者を務めるカーラ・ブルックスは「エチオピアの人びとは過去40年で最悪の干ばつ、経済的困窮、繰り返される暴力と闘っています。食料配給の停止前でさえ、MSFの医療チームは、緊急時の基準値をはるかに超える全急性栄養失調率を目の当たりにしていました。人道状況が既に悲惨な状況であるにもかかわらず、長期にわたって散発的で不定期な食料援助が続いた後だけに、今回の配給停止は憂慮すべき事態です」と懸念を示す。


食料配給の停止は、広範な食料援助の横流しに関する調査の一環として行われた。5月にはティグレ州で配給が停止され、6月にはエチオピア全域に拡大した。それ以前の数カ月間も、配給の頻度は低く不定期であったため、MSFが目の当たりにした栄養失調の割合を押し上げる一因となった。


  • 重度の栄養失調児が倍増


上腕周囲径測定帯(MUAC)は主に0歳から5歳の子どもの上腕の周囲を測定し栄養失調の特定に使用する=2023年2月16日 © MSF/Julien Dewarichet上腕周囲径測定帯(MUAC)は主に0歳から5歳の子どもの上腕の周囲を測定し栄養失調の特定に使用する=2023年2月16日 © MSF/Julien Dewarichet

1月から4月にかけて、ティグレ州のシャイアとシェラロにあるMSFの診療所のスタッフが、8000人の妊娠中あるいは出産を終えたばかりの女性をスクリーニングしたところ、72.5%が急性栄養失調であることがわかった。栄養失調の状態にある母親は、分娩時に何らかの合併症を引き起こすリスクが高く、新生児の健康状態は悪くなる可能性が高い。また、同じ診療所のスタッフが5歳未満の子ども1万7803人をスクリーニングした結果、21.5%が中等度の急性栄養失調、6.5%が命に危険を及ぼす重度の急性栄養失調であることが判明した。


 他の地域でも状況は悪化している。ガンベラ州にあるクレ難民キャンプの診療所では、重度の栄養失調のためにMSFの治療を受けている5歳未満の子どもの数が、ほぼ倍増している。2022年、MSFは毎月平均44人の子どもたちを受け入れていたが、2023年は毎月86人にまで急増した。




  • 栄養失調が更なる医療ニーズに


南スーダンからガンベラ州にきた約40万人など、エチオピアに避難した難民にとって、十分な食料の確保は困難を極める。難民であるため収入は得られず、援助に頼っている。多くの人びとが、すでに不足している食料をさらに切り詰めて食べなければならない。


MSFの医療コーディネーターであるサムリーン・フサインは、「食事量が減ると、人びとは栄養失調や貧血などの微量栄養素欠乏症のリスクにさらされ、免疫が落ちます。予防接種率が低いので、栄養失調になると、はしかやコレラなどの感染症にかかるリスクが高まり、同国の多くの州では複数の病気が流行しています」

 

ソマリ州は急性栄養失調に陥っている5歳未満の子どもの数が最も多く、また多くの病気に対する予防接種率が最も低い地域の一つであり、注意が必要だ。


  • 安定的な食料配給の再開を


フサインは「食料不足が、弱い立場にある人びとを追い込んでいます。食料を得るために家財を売り、物乞い、児童労働といった手段しか残されていない場合もあります。食料援助の停止が長引けば、この状況は悪化するばかりです」と指摘する。


MSFは、全ての援助関係者に対し、対象を絞った食料配給を通じて最も危険な状態にある地域の人びとのニーズへの対応、全面的かつ定期的な食料配給の緊急の再開、そして、配給の時間と場所が周知されるよう連絡体制の改善を直ちに図るよう要請する。


MSFはエチオピアで37年にわたって活動。同国の地方、地域、国家レベルの当局と協力し、紛争、感染症、災害の被害者や、医療アクセスの乏しい地域で、医療援助を提供している。MSFはアムハラ州アブドゥラフィでのカラアザールと毒ヘビ被害者治療の専門のプロジェクトおよび緊急援助活動など、20年以上にわたってカラアザールの治療を提供してきた。MSFの活動は全て、人道性、独立性、中立性、公平性という人道主義の原則に基づいている。


2021年6月24日、MSFのスタッフ、マリア・エルナンデス・マタス、テドロス・ゲブレマリアム・ゲブレミカエル、ヨハンネス・ハレフォム・レダの3人が、ティグレ州で人道援助従事者であることが明らかな状態であったにも関わらず、残虐かつ故意に殺害された。エチオピア当局との長い対話後も、当日の状況について信頼に足る答えは得られていない。MSFは、あらゆる手段を用いて、この事件に対する説明責任を追及し続け、同国における人道援助従事者の安全性向上に寄与したいと考えている。

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代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月