新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を99.99%不活化する光触媒膜ボールを開発
新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) の世界的蔓延により、人々の生命、そして社会経済は大きな打撃を受けています。SARS-CoV-2の消毒・殺菌に有効な技術が強く求められており、研究界でもこのSARS-CoV-2を克服する様々な挑戦が進められています。
千葉大学 大学院工学研究院の魯 云教授グループは、株式会社SNSソフト(本社:東京都千代田区 代表取締役社長 孫 前進)との共同研究で開発した酸化チタン光触媒薄膜ボールが、SARS-CoV-2を検出限界まで減少させることを示す99.99%の不活性化率を達成することを実験で明らかにしました。また酸化チタン光触媒薄膜ボールはSARS-CoV-2だけでなく、インフルエンザウイルスにも99.96%の不活性化率を示したほか、アセトアルデヒドの分解試験でも高い環境浄化機能が実証されました。
本研究成果は、コロナ禍が長期化・常態化する中でウイルスの消毒・殺菌に有効な新技術として期待されます。今後はより安全で快適な社会構築に向け、酸化チタン光触媒薄膜ボールを活用したウイルス消毒・殺菌など環境浄化機器の開発に取り組みます。
千葉大学 大学院工学研究院の魯 云教授グループは、株式会社SNSソフト(本社:東京都千代田区 代表取締役社長 孫 前進)との共同研究で開発した酸化チタン光触媒薄膜ボールが、SARS-CoV-2を検出限界まで減少させることを示す99.99%の不活性化率を達成することを実験で明らかにしました。また酸化チタン光触媒薄膜ボールはSARS-CoV-2だけでなく、インフルエンザウイルスにも99.96%の不活性化率を示したほか、アセトアルデヒドの分解試験でも高い環境浄化機能が実証されました。
本研究成果は、コロナ禍が長期化・常態化する中でウイルスの消毒・殺菌に有効な新技術として期待されます。今後はより安全で快適な社会構築に向け、酸化チタン光触媒薄膜ボールを活用したウイルス消毒・殺菌など環境浄化機器の開発に取り組みます。
本研究成果は、2022年9月26日(英国時間)に英国電子版科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究で用いられた酸化チタン光触媒薄膜ボールは、研究チームで開発した新規成膜技術であるメカニカルコーティング法(図1)で作製しました。この新しい成膜技術は遊星ボールミルのポットに直径数㎜のアルミナボールとチタン粉末を入れ、室温で数時間に渡り高速回転させることによる摩擦、衝撃および固着で約30μmのチタン薄膜を作製する簡便、安価の成膜法です。作製されたチタン薄膜ボールにさらに熱処理などのプロセスを加え酸化チタン光触媒薄膜ボールを作製しました(図2)。ボール状にすることで、空気や汚染水など流動性汚染対象を酸化チタンナノ粉末や板状の光触媒よりも、効率よく浄化処理できるメリットがあります。
1) 酸化チタン光触媒薄膜ボールによるSARS-CoV-2の不活性化試験:滅菌シャーレに一層分敷き詰めた酸化チタン光触媒薄膜ボールにウイルス液を接種し、紫外光照射条件もしくは暗所条件で試験し、ウイルス感染価ならびにウイルスの不活化率を算出しました(図3a)。
2) 環境浄化試験:酸化チタン光触媒薄膜ボールを試験セルに一層分敷き詰めて、所定の濃度と流量で試験ガスを流しながら紫外光の照射時と停止時のアセトアルデヒドとホルムアルデヒドの濃度を計測し、環境浄化効果を評価しました(図4a)。
3)インフルエンザウイルス不活性化試験:滅菌シャーレに一層分敷き詰めた酸化チタン光触媒薄膜ボールにウイルス液を接種し、紫外光照射条件もしくは暗所条件で保管を行った後、インフルエンザウイルスの感染価数を測定して不活性化を評価しました。
② 紫外光照射による光触媒機能の発現によってアセトアルデヒドが分解され濃度が低下し、その分解により発生する二酸化炭素の濃度が上昇しました。一方、紫外光照射の停止で光触媒を機能させないときはアセトアルデヒドの濃度が上昇に転じ二酸化炭素の濃度が低下しました(図4b)。また、酸化チタン光触媒薄膜ボールによるホルムアルデヒドの分解試験でも紫外光照射の有無において同様にその濃度変化が現れました(図4c)。これによって酸化チタン光触媒薄膜ボールによる高い環境浄化機能が実証されました。
③ 酸化チタン光触媒薄膜ボールによるインフルエンザウイルス試験で不活性化率は99.96%に達しました。SARS-CoV-2のみならず、インフルエンザウイルスも大きな効果を発揮することが明らかとなりました。
雑誌名:Scientific Reports
DOI:https://www.nature.com/articles/s41598-022-20459-2
- 研究の概要
本研究で用いられた酸化チタン光触媒薄膜ボールは、研究チームで開発した新規成膜技術であるメカニカルコーティング法(図1)で作製しました。この新しい成膜技術は遊星ボールミルのポットに直径数㎜のアルミナボールとチタン粉末を入れ、室温で数時間に渡り高速回転させることによる摩擦、衝撃および固着で約30μmのチタン薄膜を作製する簡便、安価の成膜法です。作製されたチタン薄膜ボールにさらに熱処理などのプロセスを加え酸化チタン光触媒薄膜ボールを作製しました(図2)。ボール状にすることで、空気や汚染水など流動性汚染対象を酸化チタンナノ粉末や板状の光触媒よりも、効率よく浄化処理できるメリットがあります。
その後、開発した酸化チタン光触媒薄膜ボール(直径2㎜)を用い、第三者研究機関に依頼して3種類の光触媒機能の評価実験を関連JIS規定に準じ行いました。
1) 酸化チタン光触媒薄膜ボールによるSARS-CoV-2の不活性化試験:滅菌シャーレに一層分敷き詰めた酸化チタン光触媒薄膜ボールにウイルス液を接種し、紫外光照射条件もしくは暗所条件で試験し、ウイルス感染価ならびにウイルスの不活化率を算出しました(図3a)。
2) 環境浄化試験:酸化チタン光触媒薄膜ボールを試験セルに一層分敷き詰めて、所定の濃度と流量で試験ガスを流しながら紫外光の照射時と停止時のアセトアルデヒドとホルムアルデヒドの濃度を計測し、環境浄化効果を評価しました(図4a)。
3)インフルエンザウイルス不活性化試験:滅菌シャーレに一層分敷き詰めた酸化チタン光触媒薄膜ボールにウイルス液を接種し、紫外光照射条件もしくは暗所条件で保管を行った後、インフルエンザウイルスの感染価数を測定して不活性化を評価しました。
- 研究結果のポイント
② 紫外光照射による光触媒機能の発現によってアセトアルデヒドが分解され濃度が低下し、その分解により発生する二酸化炭素の濃度が上昇しました。一方、紫外光照射の停止で光触媒を機能させないときはアセトアルデヒドの濃度が上昇に転じ二酸化炭素の濃度が低下しました(図4b)。また、酸化チタン光触媒薄膜ボールによるホルムアルデヒドの分解試験でも紫外光照射の有無において同様にその濃度変化が現れました(図4c)。これによって酸化チタン光触媒薄膜ボールによる高い環境浄化機能が実証されました。
③ 酸化チタン光触媒薄膜ボールによるインフルエンザウイルス試験で不活性化率は99.96%に達しました。SARS-CoV-2のみならず、インフルエンザウイルスも大きな効果を発揮することが明らかとなりました。
- 今後の展望
- 論文情報
雑誌名:Scientific Reports
DOI:https://www.nature.com/articles/s41598-022-20459-2
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