日本人のデータを用いた大規模な解析調査で月経周期に関する新たな事実が明らかに
~今後のさらなる研究に向け、協力者を募集~
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区、理事長:五十嵐 隆)の分子内分泌研究部 鳴海 覚志 室長、社会医学研究部 森崎 菜穂 室長らのグループと株式会社エムティーアイ(東京都新宿区、代表取締役社長:前多 俊宏)は、2019年5月から女性の健康情報サービス「ルナルナ」のビッグデータ解析を共同研究として行っています。既存データを用いた第一弾の研究から、日本人女性の月経周期の分布が年齢とともに変化する一方、季節や居住地の影響はほとんど見られないことを明らかにしました。
1月23日から、詳細な生活環境因子と、月経や妊娠との関係を明らかにすることを目的に、第二弾の研究として、月経と妊娠しやすさに関連する要因の詳細な解析を開始します。
【背景・目的】
・ 世界中で使用されている医師向けの教科書などに掲載されている月経や妊娠に関する基礎的情報は、1950年代の米国でのデータを参照しています。また、米国の調査は研究対象者数が650人(3万月経周期)と少なく正確性に疑問があり、現代の日本人とは、時代も人種も環境も大きく異なるデータでした。女性のよりよいヘルスケアの実現には、月経や妊娠しやすさに関する質の高い基礎的情報の拡充が必要です。
・ スマートフォンが普及し、様々な健康関連アプリが開発された結果、新たな医学的知見が、ビッグデータ解析を通じて明らかにされつつあります。
【第一弾「既存データを用いた研究」でわかったこと】
共同研究第一弾として行った「既存データを用いた研究」では2016年から2017年に「ルナルナ」に登録された月経周期(約30万人、約6百万周期)に関する情報を分析しました。累計ダウンロード数1,400万を超える(2019年7月時点)「ルナルナ」の大規模なデータから、継続的にデータを入力しているユーザーのみのサンプルを抽出し、研究に使用しました。
テーマ1 月経周期と季節の関係
一部の野生生物の繁殖には季節性があり、例えばウマは春から夏にだけ繁殖期となります。現代人類は季節の影響をできるだけ受けないように生活していますが、月経周期への季節の影響はあるのでしょうか?これを検証するため、月経周期を季節別に集計したところ、春、夏、秋、冬の分布はほぼ完全に一致しており、季節は日本人女性の月経周期にほとんど影響がないことが分かりました。
テーマ2 月経周期と居住地の関係
日本の国土は北海道から沖縄県まで南北に長く、地域により気温や日照時間が異なるのが特徴と言えます。このような居住地の違いは月経周期へ影響を与えているのでしょうか?これを検証するため、月経周期を居住県別に集計したところ、47都道府県の分布には違いは見られず、日本人女性の月経周期は居住地による影響をほとんど受けないことが分かりました。
テーマ3 月経周期と年齢の関係
経験的な医学知識として、10代の女性では月経周期が不安定であること、閉経年齢が近づくと月経周期が長くなることが知られていましたが、20代、30代における月経周期が一定なのか変化するのかはよく分かっていませんでした。
月経周期のデータを5歳ずつで区切って集計したところ、これまで着目されてこなかった20代から30代にかけて、月経周期が連続的に変化することが分かりました。具体的には、月経周期の平均値は25歳頃に最も長くなり、その後45歳にかけて約3日間平均値が短くなることが分かりました。
日本産科婦人科学会は「正常月経周期」の周期を25日~38日としていますが、年代により「正常月経周期」の範囲に含まれる女性の割合が変化することが分かりました。例えば「月経周期40日」は10代後半の女性では決して珍しくはありませんが、30代後半の女性では比較的まれです。年齢を考慮して月経周期を捉えることを通じて、きめ細かいヘルスケア・医療の提供に役立てられる可能性があります。
【第二弾「ユーザー参加型研究」について】
ルナルナに登録されている方のうちユーザー参加型研究にご協力いただいた方へ、複数回アンケートにご回答いただきます。ご協力者の募集はルナルナのモードごとに時期を変えて始めます。妊娠希望モードの方向けの募集期間は、2020年1月23日(木)から2月25日(火)まで、避妊希望モードの方向けの募集期間は、2020年2月25日(火)から3月25日(水)までとなります。回答とアプリ情報を分析して、社会経済的・生活環境やこころの健康の変化が女性の月経、妊娠に与える影響を調べる研究です。
※参加方法は別紙参照
[研究の目的]
近年、働く女性は増加し、勤務形態の多様化が進んできましたが、女性がおかれた社会経済的状況がこころやからだの健康に与える影響については、まだあまり多くは知られていません。望ましくない社会経済的状況、例えば、不安定な収入や、ワーク・ライフ・バランスが上手にとれないことは、こころの健康に悪影響を与えることがわかっていますが、それらが女性の身体の健康に与える影響はよくわかっていません。このため、本研究では、女性のおかれた社会経済的状況が、こころの健康をとおして、月経不順や妊娠にどのような影響を与えるかを調べ、女性が活躍しやすく子どもを産みやすい社会を作っていくために何が必要なのかを考えます。
[研究の概要]
ご協力者の募集はルナルナのモードごとに時期を変えて始めます。妊娠希望モードの方向けの募集期間は、2020年1月23日(木)から2月25日(火)まで、避妊希望モードの方向けの募集期間は、2020年2月25日(火)から3月25日(水)までとなります。ご協力くださる方には、アプリ内の「お知らせ」からアクセスいただきます。本研究にご参加くださった方には、アプリ内のお知らせ配信を通して、10~20分でお答えいただけるアンケートを月1回程度の頻度でお送りさせていただきます。お答えいただく回数は5~12回となります(個人差あり)。アンケートの内容は、睡眠時間、通勤時間、労働時間など日々の生活状況について伺います。
本アンケート回答はルナルナのご利用情報とともに、個人が特定できない形で集計します。
・ 本共同研究では、現代の日本人女性のヘルスケアに役立てられる質の高い基礎的情報を、特徴の異なる2つの研究で明らかにします。一般の方は、アプリを使った研究への協力を通じて、よりよい医学的知識の創出に貢献することができます。
・ 参加者が多くなれば多くなるほど、より精度の高い分析が可能になります。
ぜひ多くの方に研究に参加していただき、質の高い女性ヘルスケアの基礎的情報を創出したいと考えています。
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の事業である、女性の健康の包括的支援実用化研究事業(Wise)「プレコンセプションの女性に着目した疾患予防に関する総合的ケア方法の確立」の一環として行われます。
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