肝臓糖代謝と免疫細胞の新たな関係をシングルセル解析で解明
~肝臓の2型自然リンパ球が血糖値を抑える仕組みを発見~
千葉大学の藤本真徳特任助教(医学部附属病院)、田中知明教授(大学院医学研究院、千葉大学災害治療学研究所)、三木隆司教授(大学院医学研究院、千葉大学災害治療学研究所)らは、肝臓内の2型自然リンパ球(ILC2)(注1)と呼ばれる免疫細胞がIL-13と呼ばれるサイトカイン(注2)を強く産生することで肝細胞に作用し、糖の放出(糖新生(注3))を抑制するメカニズムを明らかにしました。このように、異物の排除や感染防御に関わるとのみ考えられていた免疫細胞と代謝の関わりの解析が進むことで、糖尿病の新たな予防・治療法の開発が期待できます。
本成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、2022年9月15日に掲載されました。
本成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、2022年9月15日に掲載されました。
- 研究の背景と経緯
本研究では、個々の細胞の遺伝子発現(量)を評価する一細胞解析(シングルセル解析)(注4)という最新の技術を使って、以下の点を明らかにしました。
- 研究の内容
- 今後の展開
- 用語解説
(注2)サイトカイン:細胞から放出される、免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用・細胞増殖や分化の調節作用を示すタンパク質の総称。
(注3)糖新生:肝細胞に蓄えられた糖が分解され、グルコース(糖)として放出する。肥満糖尿病、脂肪肝の状態ではインスリンの作用が弱まり、糖新生が亢進し血糖が上昇する。
(注4)一細胞解析 (シングルセル解析):個々の細胞の遺伝子発現を網羅的に評価する手法。肝細胞など一種類の細胞にも多様性があるため、新しい細胞の特性や機能を評価できる。
- 研究プロジェクトについて
・日本学術振興会・科学研究費補助金基盤研究(B)ミトコンドリア複合体と制御メカニズム解析から捉える肥満・糖尿病の分子病態研究 (研究代表者:田中知明)2019年度~2021年度
・日本学術振興会・科学研究費補助金基盤研究(C)肝糖新生におけるType2 Innate Lymphoid Cellの役割の解明 (研究代表者:藤本真徳)2019年度~2021年度
- 論文情報
肝臓2型自然リンパ球はIL-13シグナルと糖新生抑制を介して血糖値を調節する。
DOI:https://doi.org/10.1038/s41467-022-33171-6
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