南スーダン:スーダンからの帰還民に増える感染症と栄養失調──医療援助の拡大が急務
ニーズの拡大と援助の不足
MSFはレンク市民病院ではしか隔離病棟、入院栄養治療センター(ITFC)、小児病棟を支援している。患者の殺到を受け、チームは複数の病棟の病床数を22床から45床に拡大。7月以降、MSFは232人の栄養失調患者を受け入れ、病院での治療を必要とするはしか患者、282件を治療した。
南スーダンにおけるMSFの現地活動責任者ジョスリン・ヤピは「レンクでの日々増大するニーズに対し、援助は極めて不十分です。MSFは、他の人道援助団体や医療団体に対し、この町の入り口や一時滞在センターでの活動を拡充するよう求めています。病気を抱えた人が、国境付近で基礎的な診療をいつでも受けられるようにすべきです。また、スーダンの予防接種率が低い現状や、スーダンと南スーダンの両国ではしかの流行が続いていることを考えると、国境では後追いの予防接種を常に受けられるようにすべきです」と指摘する。
限られた食料供給と悲惨な生活環境
多くの人びと、特に子どもが、はしかのような致命的な病気や、即時治療が必要な栄養失調といった状態で国境に到着している。現在は雨期であることも重なって、MSFの医療施設ではマラリアの陽性率が7割に達している。
「特に栄養失調の子どもには、国境で緊急の栄養補給を行い、すぐに医療施設に搬送しなければなりません。蚊帳、ビニールシート、その他の生活必需品といった救援物資は国境で提供し、必要な人が受け取れるようにしなければなりません」とヤピは言う。
現地では1人当たり12米ドル(約1790円)の現金が一度だけ支給されるが、レンクでは一般的な食事が平均2米ドル(約300円)で売られている状況を考えると、この援助金額では1日1食にとどめたとしても1週間の予算にも満たない。人びとは数週間、時には数カ月も追加の現金の支給を受けられないままであり、人道援助団体や当局による定期的な食料配給もない。
「食料を買うために、服を1着2000南スーダン・ポンド(現地のレートで約300円)で売っています。手持ちの服6枚を売って、残りの2枚を着てしのぎます」と、レンクの非公式な帰還民居住地の一つ、ゼロに住む6児の母、マルタ・マンハーさんは言う。
限られた食料と悲惨な生活環境が、人びとの健康状態に打撃を与えている。MSFが運営する移動診療所のうち、ゼロとアブカドラの2カ所では、チームが1日300件の診療を記録していて、10件中7件がマラリア患者だ。そこではほとんどの人が、屋外か衣服で作った仮住まいで暮らしている。この地域では、よどんだ雨水が蚊の繁殖の温床となっている上に、人びとは蚊帳などで身を守るすべがない。
緊急人道対応が必要
MSFがはしか隔離病棟を支援しているレンク市民病院では、患者の9割が帰還民でワクチンは未接種だ。その上、一部の重病患者は診療も受けられないまま、医療も水も食料もないボートで、48時間から72時間かけてレンクからさらに南部のマラカルに移送されている。ボート上で亡くなる人や、重症となる人もおり、マラカルの搬送先施設では患者の死亡率が高まっている。
「帰還民たちはあまりに弱い立場に置かれています。食料や飲み水が不足しているだけでなく、仮住まいもなく、強い日差しや雨から身を守るのは布切れしかありません。病院で栄養失調の子どもを治療していると、母親も多くが栄養失調であると分かります」とレンクでMSFの活動に参加しているアブラハム・アンヒエニー医師は憤る。
南スーダンは長年の紛争によって、すでに世界最大級の人道危機の最中にある。以前から定期的な疾病の集団発生、洪水、避難生活、栄養失調罹患率の高さに悩まされていたため、帰還民の到着は新たな重荷となっている。現在進行中の人道危機と、スーダンの紛争によって引き起こされた別の緊急事態に対処するため、同国への関心を高めるとともに援助の拡大が必要だ。
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