名作住宅を「住み継ぐ」という選択、日本を代表する建築家たちが生んだ「住宅遺産」の今
2019年8月22日(木)発売『日本の住宅遺産 名作を住み継ぐ』
株式会社世界文化社(東京都千代田区九段北/代表取締役社長:鈴木美奈子)は、書籍『日本の住宅遺産 名作を住み継ぐ』を2019年8月22日(木)に刊行いたしました。
ヴィンテージ・ジーンズやアンティーク家具、あるいは由緒を尊ぶ茶器の名物など、古いものに価値を見出す文化はあるのに、日本の住宅ではそれがなかなか根づかない傾向にあります。たとえ日本の建築史に燦然と名を残す、歴々の建築家が作った住宅であっても、今日の日本では住み継がれ、現役として継承されることは簡単ではありません。
本書は、そういった時代背景の中で、幸いにも受け継がれた26軒の名作を建築史家・伏見唯が住宅史の知見も交えながら解説。現在の住まい手の協力を得て、普段は非公開である個人住宅の取材を敢行した稀少性の高い記録集です。
■ダブルハウス(1921-)──ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
キリスト教の伝道を目的としてアメリカから来日したウィリアム・メレル・ヴォーリズによって設計されたダブルハウス。クリスチャンらしい奉仕の精神に満ちた建築は、戦前とは思えないほどの効率的な造りが特徴です。“神からの預かりもの”としての住まいとその精神は、奇しくもヴォーリズと同じくクリスチャンである現所有者にも受け継がれています。
■私たちの家(1955-)──林 昌二+林 雅子
現状の保存を重視している住宅もあれば、そこで暮らす家族の状況に応じて姿を変えていく住宅も。後にそれぞれが高名な建築家となる林 昌二・雅子夫妻が20代の頃に建てられた「私たちの家」は、幾度と繰り返された改修や増築によって変わりつづけてきた住宅です。「人間が洋服を着替えるように、建築がイメージチェンジをしても、骨格が変わらなければ本質を守ることができる」という現所有者の言葉の通り、“変わりつづけること”も含めて、住み継がれていく住宅の姿が紹介されています。
■ブルーボックスハウス(1971-)──宮脇 檀
伝統的、または懐古的な美しさに魅かれる住宅がある一方で、時代を超えて通じる良さが縁を繋いだ住宅が「ブルーボックスハウス」。その名の通り、青いボックスが崖から飛び出したような形をしたこの住宅は、建築家の宮脇 檀が居心地や使いやすさを考慮した上で“かっこよさ”を追求したもの。建築のことはあまり詳しくないという現所有者がその直感的なかっこよさに魅かれた結果、住み継がれる住宅として今なおそこに在り続けています。
<著者プロフィール>
著/伏見 唯(ふしみ・ゆい) 建築史家、編集者
1982年東京生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了後、新建築社、同大学大学院博士後期課程を経て、2014年伏見編集室を設立。『TOTO通信』などの編集制作を手掛ける。博士(工学)。専門は、日本建築史。おもな著書に、『木砕之注文』(共編著、中央公論美術出版)、『よくわかる日本建築の見方』(共著、JTBパブリッシング)、『世界の名建築解剖図鑑』(監訳、エクスナレッジ)など。
写真/藤塚光政(ふじつか・みつまさ) 写真家
1939年東京生まれ。東京写真短期大学卒業。月刊「インテリア」で建築・デザイン・美術写真に関わる仕事経験を積んだ後、1965年独立。大型カメラが主流だった建築写真界において、いち早く35ミリの小型カメラを採り入れ、周辺の環境や人間との関わりを含め、刻々と移り変わる建築の生きた姿をジャーナリスティックにとらえてきた。長年の建築写真活動に対し、「2017毎日デザイン賞・特別賞」を受賞。
<目次>
1.戦前の邸宅は、現代住宅になりうるか──1920~40年代
ダブルハウス──ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
岡本の洋館──木子七郎
加地邸──遠藤 新
旧鶴巻鶴一邸──本野精吾
八木邸──藤井厚二
トレッドソン別邸──アントニン・レーモンド
佐々木邸──同潤会
土浦亀城邸──土浦亀城
旧山川秀峰邸──吉田五十八
2.制限と清貧の協奏は、時を越えて響く──1950~60年代
軽井沢A型住宅──坂倉準三
顧空庵──白井晟一
コアのあるH氏のすまい──増沢 洵
私の家──清家 清
旧園田高弘邸──吉村順三
私たちの家──林 昌二+林 雅子
浦邸──吉阪隆正
スカイハウス──菊竹清訓
感泣亭──生田 勉
3.気鋭の観念と理想を、引き受ける──1970~80年代
ブルーボックスハウス──宮脇 檀
反住器──毛綱毅曠
林・富田邸──大野勝彦+積水化学工業
大和町の家──室伏次郎
新・前川國男自邸──前川國男
上原通りの住宅──篠原一男
代田の町家──坂本一成
目神山の家5──石井 修
住宅の平面図
建築家の略歴
監修:一般社団法人住宅遺産トラスト
失われていく名作住宅の数々。価値ある住宅建築とその環境が消えつつあることに危機感を抱き、これらを「住宅遺産」と呼び、その社会的な継承を志して二〇一三年に設立された。住宅所有者の相談に応じ、多分野の専門家と連携して、住宅の維持管理、継承のサポート、その価値を広く伝えるためのイベント等を開催している。代表理事は建築家の野沢正光。
<刊行情報>
『日本の住宅遺産 名作を住み継ぐ』
■著者:
著/伏見 唯
写真/藤塚光政
■発売日:2019年8月22日(木)
■定価:2,500円+税
■発行:株式会社世界文化社
※一部書店により発売日が異なります。
https://www.amazon.co.jp/dp/441819407X
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