IOWN APNを用いたストレージ間の超高速大容量データ転送の実証実験を実施

〜800 Gbpsの回線帯域に対し、二つの実用アプリケーションで750 Gbps超の転送を実現〜

NTT西日本

情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下、NII)、理化学研究所(以下、理研)、東京大学(以下、東大)、NTT東日本およびNTT西日本(以下、NTT東西)は、高速、大容量、低遅延を実現する次世代通信基盤「IOWN※1」に基づく技術「All-Photonics Network※2」(以下、APN)を活用したストレージ間の超高速データ転送の実証評価を、2025年12月に締結した共同研究契約に基づき実施してきました。

今回の実証実験では、理研計算科学研究センター(R-CCS、兵庫県神戸市)と東大柏地区キャンパス(千葉県柏市)との間を、NTT東西のAPNによる光波長専有接続サービス「All-Photonics Connect powered by IOWN」で、800 Gbpsの回線帯域で直結し、二つの実用アプリケーションを同時に使って750 Gbps超という高速転送を実証しました。本結果は、柏・神戸間といった長距離通信でも、既存のアプリケーションで、800 Gbps回線を有効活用できることを証明しました。

背景

 ビッグデータやIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)といった分野に限らず、あらゆる研究分野において大規模なデータを扱う機会が増えています。そのデータを最大限に活用して研究活動を効果的に進めるためには、物理的に離れた研究拠点間で大規模な研究データを効率的に転送し、蓄積・処理・解析などを行うニーズが高まっています。

 国内唯一の情報学の学術総合研究所であるNIIでは、情報学分野における未来価値創成のための研究を推進するとともに、学術コミュニティ全体の研究・教育活動に不可欠な学術情報ネットワーク(SINET※3)などの学術情報基盤の構築・運用に取り組んでいます。2022年度からは全都道府県を400 Gbps(沖縄は100 Gbps×2回線)かつ最短ルートで接続した新しいSINET6の運用を開始し、ますます増大する研究データの高性能な転送を支えるとともに、セキュアかつ高速のデータ転送のための仮想プライベート網(VPN)などを提供しています。また、オープンサイエンスを推進するための研究データ基盤の開発・整備を進めており、SINET6と効果的に融合させることで革新的な学術研究プラットフォームの実現を目指しています。

 理研R-CCSでは、スーパーコンピュータ「富岳※4」、AI for Science開発用スーパーコンピュータ「理究※5」、量子HPC連携プラットフォーム向け JHPC-quantum GPU スーパーコンピュータ「ROQUO※6」など、多様な計算基盤の整備・運用を通じて、AI・シミュレーション・量子コンピューティングを連携させた研究環境の高度化を進めています。また、次世代フラッグシップシステム「富岳NEXT」(開発コードネーム)の開発を進め、わが国の計算基盤を支える中核拠点としての役割を担っています。これらの計算基盤を活用し、各地の研究拠点で生成・蓄積される大規模な研究データを研究に生かすためには、拠点間でデータを高速かつ安定的に転送・共有できる通信基盤の整備が重要です。

  東京大学情報基盤センターでは、学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)の中核拠点、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)におけるナショナル・インフラストラクチャー・システム(NIS)の中心的な拠点、またデータ活用社会創成プラットフォームmdx事業の統括機関として、これまでの計算科学に加えてAI for Scienceに向けたわが国の計算基盤の提供と、ユーザに対する支援を幅広く行ってきています。これらのネットワーク型の共同研究を推進する上で、大規模なデータを低遅延で安定的に利活用できるネットワーク基盤の整備も必要です。加えて、理研と共同でそれぞれ約100ペタバイトのストレージを擁するHPCI共用ストレージ(東拠点:東大柏地区キャンパス、西拠点:R-CCS(神戸))を運用しており、現在の「富岳」から「富岳NEXT」に向けて急激に増加している大規模な研究データを東西で冗長化することで安全に管理することが求められます。

実証実験環境の概要

  実証実験では、実験環境を図1のように構成しました。大阪のNTT西日本局舎と柏のNTT東日本局舎の間をAPN 800 Gbps回線で接続し、各局舎と理研神戸拠点・東大柏拠点の間を400 Gbps×2回線で接続しました。両拠点はSINETでも接続しており、実証環境における測定において、APNの遅延値はSINETと比較して約20%低減し、低遅延性が確認されました。

図1 実験環境の構成

 ファイル転送では、二つの実用アプリケーションを用いました。一つは理研・東大が運用するHPCI共用ストレージ※7、もう一つはNIIが開発した恒速/高速ファイル転送ツールMMCFTP※8です。HPCI共用ストレージは現在、第三世代がサービス中のため、その検証環境(前バージョンの第二世代環境)を用いました。また、MMCFTPについては、NVMe SSDを多数搭載したNIIサーバを理研および東大に設置し、同サーバ間で転送を行いました。NIIサーバは各拠点のスイッチと、400 Gbpsイーサネット(400GbE)1個と100GbEを4個で接続しました。

実証実験の結果

  回線が所定の性能で正常に動作していることを確認したうえで、転送アプリケーションの設定による速度の違いを検証するため、パラメータを変えながら断続的に転送実験を行いました(図2)。その結果、二つのアプリケーションを同時に使用した際、800 Gbps回線帯域の約97%に相当する最大約775 Gbpsでの転送速度を記録しました。 また、750 Gbpsを超える転送速度を数分間継続できることも確認し、長距離でも超高速回線を実用レベルで使いこなせることを示しました。

図2 ファイル転送実験でのネットワークトラフィック状況(東大側計測)

今後の取り組み

 NII、理研、東大およびNTT東西は、引き続き、共同研究契約に基づく連携・協力の中で、APNを活用した大規模・高品質なデータ転送などに関する検討やPoC(概念実証)を実施していきます。NTT東西が構築しているAPN基盤、NIIのSINETにおける知見、理研および東大の大規模ストレージの知見を連携し、データ同期技術に関する共同研究を進めることで、研究データ利活用環境の拡張、NIIの次期SINET等の検討に反映していきます。こうした取り組みが、将来的に、多くの研究分野や研究機関のモデルとなり、日本全体の研究環境の改善と研究力の強化につながることを期待しています。

  また、直近の取り組みとして、2026年11月に開催される国際会議・展示会SC26※9において、本実験環境のうち、400 Gbps部をSC26会場の米国シカゴまで延伸し、MMCFTPを用いたファイル転送実験を行う予定です(図3)。サーバ間および国際回線を含む全区間に400 Gbps以上の回線を用いた日米間でのファイル転送実験となります(NII調べ、2026年10月末時点)。 

図3 SC26で実施予定のファイル転送実験の構成(日本〜米国シカゴ)

用語解説

※1 IOWN

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。詳しくは以下ホームページをご覧ください。

■IOWN構想とは? https://www.rd.ntt/iown/index.html

※2 APN

APN(All-Photonics Network)とは、ネットワークから端末まで、全てにフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難であるような、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延な伝送を実現する革新的ネットワークです。NTT東日本およびNTT西日本は、2023年3月にオール・フォトニクス・ネットワークであるAPN IOWN1.0の提供を開始し、2024年12月には最大800Gbpsの「All-Photonics Connect powered by IOWN」の提供を開始しました。詳しくは以下ホームページをご覧ください。

■APN https://www.rd.ntt/iown/0002.html

※3 学術情報ネットワーク SINET

SINET(サイネット:Science Information NETwork)は、NIIが構築・運用している日本全国の大学や研究機関向けの学術情報ネットワークです。2022年4月に開始した、SINET6を運用中です。

■学術情報ネットワーク SINET6 https://www.sinet.ad.jp/

※4 スーパーコンピュータ「富岳」

理化学研究所と富士通が共同開発した日本のスーパーコンピュータ。2020年に世界ランキングで 1位を獲得。2020 年代に、社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界をリードする成果を生み出すことを目的とし、電力性能、計算性能、ユーザの利便性の良さ、画期的な成果創出、ビッグデータやAI の加速機能の総合力において世界最高レベルのスーパーコンピュータとして2021年 3月に共用が開始されました。現在「富岳」は日本が目指す Society 5.0 を実現するために不可欠な高性能計算インフラとして活用されています。

※5 AI for Science開発用スーパーコンピュータ「理究」

理化学研究所最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部科学研究基盤モデル開発プログラムにおいて計算科学研究センターが整備を進める AI for Science 開発用スーパーコンピュータ。「理究」は自然や社会を支配する原理・法則を AIとスーパーコンピューティングで探り出し、基礎科学から応用まで幅広い研究を支える計算基盤を目指しています。

※6 JHPC-quantum GPU スーパーコンピュータ「ROQUO(ろっこう)」

量子HPC連携プラットフォーム向けの新たな計算基盤。経済産業省所管のNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(JPNP20017)」の委託事業である通称JHPC-quantum プロジェクトの一環として導入され、「NVIDIA GB200 NVL4」を搭載した計算ノード 135 台(NVIDIA Blackwell GPU 計 540基)で構成されています。

※7 HPCI共用ストレージ

HPCI共用ストレージは、ユーザに提供される大規模データ共有基盤です。HPCI共用ストレージを利用すると、東大柏・理研神戸の地理的に分散されたHPCI計算機資源間で大規模データを1つのファイルシステムのもとに高速かつ安全に共有することができます。ネットワーク共有ファイルシステムGfarmを使用し構築されています。

■HPCI共用ストレージ利用案内

https://www.hpci-office.jp/using_hpci/hardware_software_resource/2024/hpci_2024_st-1

※8 恒速/高速ファイル転送ツール MMCFTP

MMCFTP (Massively Multi-Connection File Transfer Protocol)は、NIIが開発したファイル転送ツールです。通信距離に関わらず、利用者が指定した一定速度(恒速)で転送を行うこと、マルチパス転送をサポートすることが大きな特徴です。

■MMCFTP紹介 https://www.sinet.ad.jp/connect_service/service/cbrftp

※9 SC

米国で開催される国際会議・展示会。正式名称はThe International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage, and Analysisですが、略称では旧名称SupercomputingのままSCと呼ばれます。スパコンランキング(TOP500)秋季版の発表会議として世界的に著名です。また、会場に最先端ネットワーク環境を整備し、Network Research Exhibition として最新ネットワーク技術のデモ・実証実験が行われます。

■SC26 https://sc26.supercomputing.org/

 報道発表資料に記載している情報および実証結果は発表日時点のものです。本内容は特定の検証環境下において得られたものであり、いかなる環境においても同等の性能・結果を保証するものではありません。

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会社概要

NTT西日本株式会社

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URL
https://www.ntt-west.co.jp/
業種
情報通信
本社所在地
大阪市都島区東野田町4-15-82
電話番号
06-6493-9111
代表者名
北村 亮太
上場
未上場
資本金
3120億円
設立
1999年07月