アルツハイマー病協会国際会議2021(AAIC2021)にて「ビフィズス菌MCC1274」研究成果を発表
~軽度認知障害(MCI)の疑いがある方の認知機能改善作用及び、血中パラメーターHbA1cとの相関関係に関する「ビフィズス菌MCC1274」研究~
森永乳業は、認知機能改善作用が期待できる「ビフィズス菌MCC1274(Bifidobacterium breve MCC1274)」 を発見し、その認知機能改善作用について、研究を重ねてまいりました。そして、昨年実施した軽度認知障害※1の方を対象としたプラセボ対照二重盲検並行群間試験(RCT試験※2)において、顕著な認知機能改善作用が確認されました。また、その後の追加解析により、血中HbA1c※3と認知機能改善作用に相関関係があることを確認しました。
これらの研究成果を7/26(月)~7/30(金)にアメリカ合衆国・デンバーおよびオンライン配信で開催された、アルツハイマー病協会国際会議2021にて発表いたしました。なお、日本の食品メーカーが発表する事例は非常に珍しく、当社が参加するのも初となります。
これらの研究成果を7/26(月)~7/30(金)にアメリカ合衆国・デンバーおよびオンライン配信で開催された、アルツハイマー病協会国際会議2021にて発表いたしました。なお、日本の食品メーカーが発表する事例は非常に珍しく、当社が参加するのも初となります。
©︎2021 the Alzheimer's Association
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https://prtimes.jp/a/?f=d21580-20210810-ccaab89547d8a44dd3cd97496bec2035.pdf
1.学会概要
アルツハイマー病協会国際会議(The Alzheimer's Association International Conference: AAIC)は、160カ国以上の参加者、約500件の演壇発表と2,500件以上のポスター発表からなる世界最大級の認知症関連の国際学会です。当学会で公開された要旨は、医学雑誌『Alzheimer's & Dementia: The Journal of the Alzheimer's Association』のウェブサイトにて後日公開されます。
2.発表内容
▼演題
Anti-inflammation as one of the mechanisms in the improvement of cognitive function by probiotic Bifidobacterium breve strain (プロバイオティクスであるBifidobacterium breveによる認知機能改善のメカニズムの一つとしての抗炎症作用)
▼研究内容
脳と腸が機能連関する「脳腸相関」が近年注目されており、当社においてもアルツハイマー病と腸内細菌との関連に着目し、当社が保有している「ビフィズス菌MCC1274」に認知機能改善作用があることを発見し、これまで研究を重ねてまいりました。
アルツハイマー病モデルならびにパイロット試験等により得られた「ビフィズス菌MCC1274」の認知機能改善作用の可能性を確認するため、軽度認知障害の疑いがある方を対象としたRCT試験を実施しました。その結果、主要評価項目である『アーバンス神経心理テスト(RBANS)』※4において、総合的な認知機能の指標である評価点合計の著しい改善が見られました。さらに記憶力を司る即時記憶と遅延記憶、空間認識力を司る視空間・構成のスコアも顕著に向上しました。また、副次評価項目である『あたまの健康チェック®(MCI Screen)』※5においてもプラセボ群と比較して認知機能の有意な改善が確認されました。
さらに「ビフィズス菌MCC1274」摂取による生化学的・血液学的検査値の変動と、RBANS評価点合計の変動の相関関係を解析したところ、血中HbA1cの変動とRBANS評価点合計の変動との間に負の相関が確認されました。そこで、摂取前における血中HbA1c(4.5~6.0%)の中央値で2群に分けた層別解析を実施したところ、元々血中HbA1cの値が高かったグループにおいて、「ビフィズス菌MCC1274」の認知機能改善作用がより顕著であることが確認されました。HbA1cは、血糖値や全身の炎症状態を反映する血中パラメーターであることから、「ビフィズス菌MCC1274」の抗炎症作用等によって、認知機能が改善したことがヒト臨床試験において示唆されました。
3.「ビフィズス菌MCC1274」に関する学会発表の実績
・2020年11月26日
日本認知症学会
「軽度認知障害の方におけるビフィズス菌摂取による認知機能改善作用」
・2021年5月19日
心・気分・微生物機関主催「腸内細菌-腸-脳軸」国際会議(Mind, Mood & Microbes、International Conference on Microbiota-Gut-Brain Axis)
「Clinical effects of Probiotic Bifidobacterium breve strain in improving cognitive functions(プロバイオティクスであるBifidobacterium breveの認知機能改善作用に関する臨床試験結果)」
・2021年6月1日
国際プロバイオティクス-プレバイオティクス学術機関学術大会(International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics(ISAPP)Annual Meeting)
「Potential of Bifidobacterium breve strain in improving cognitive functions(Bifidobacterium breveの認知機能改善作用の可能性)」
・2021年6月2日
日本腸内細菌学会
「軽度認知障害におけるビフィズス菌摂取による認知機能改善作用と抗炎症作用」
・2021年6月11日
日本基礎老化学会
「Bifidobacterium breve MCC1274の認知機能改善の可能性」
・2021年6月14日
脳科学と脳疾患国際会議(World Congress on The Neuroscience & Brain Disorders)
「Translation of preclinical studies to human intervention: Potential of Bifidobacterium breve strain in improving cognitive functions(前臨床試験からヒトへの介入へ、Bifidobacterium breveの認知機能改善作用の可能性」
・2021年6月24日
日本認知症予防学会
「軽度認知障害の疑いのある方のビフィズス菌摂取による認知機能改善作用に関する検証」
優秀演題賞である「浦上賞」を受賞
軽度認知障害の方を対象としたRCT試験において、認知機能改善作用が確認された「ビフィズス菌MCC1274」ですが、現在さらなるエビデンスの取得並びに作用機序解明を進めております。今後も健康寿命の延伸に繋がる素材開発に取り組み、食を通じた社会貢献の実現に邁進してまいります。
<参考>
※1 軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)
認知症の前段階である軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)は、現在国内では約400万人、世界的には国によって65歳以上の人口の7~42%がMCI状態であると推計されています(Petersen ら、J Intern Med 275, 214-228、2014)。MCIの方には、認知機能の低下が起きており、年間10~30%の方が認知症に移行するとされていますが(2019年6月 厚生労働省 認知症施策の総合的な推進について)、MCIは可逆的な状態であるため、認知機能が正常な状態へと回復する可能性があります。そのため、MCIと診断された場合であっても、認知機能の改善又は維持ができれば認知症への移行を遅らせたり、予防できる可能性があります。現在、MCIや認知症に対する有効な治療法がない中、発症予防に注目が集まっており、特に生活習慣の改善など日常生活の中で実践できる有効な対策が求められています。
※2 RCT試験(ランダム化比較試験 randomized controlled tiral)
ある試験的操作(介入・治療など)を行うこと以外は公平になるように,対象の集団(特定の疾患患者など)を無作為に複数の群(介入群と対照群や、通常+新治療を行う群と通常の治療のみの群など)に分け,、その試験的操作の影響・効果を測定し,、明らかにするための比較研究です。
※3 HbA1c(ヘモグロビンA1c)
赤血球内のたんぱく質の一種であるヘモグロビンと血中のブドウ糖が結合した糖化産物の総称です。直近1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映する血中パラメーターであると同時に、アルツハイマー病などの炎症性神経変性疾患との関連性が報告されています。アルツハイマー病は「3型糖尿病」とも言われており、糖尿病患者の認知症の発症リスクは、健常者に比べて2~4倍も高いと言われていることから、血糖値を適切にコントロールすることが重要であると考えられています。
※4 アーバンス神経心理テスト(RBANS)
1998年に米国のRandolphが開発し、標準化された神経心理学検査の一つです。健常者~中程度の認知症患者を対象に、繰り返し認知機能を評価することが可能という特徴があります。即時記憶、視空間・構成、言語、注意、遅延記憶の5つの領域ごとに認知機能を評価できるとともに、これら5つの領域の結果から総合的な認知機能も評価することが可能です。
◆即時記憶:情報を即時に記憶する能力の事を指します。単語や物語などを提示されて、即時に復唱できるかを調べることで評価します。
◆視空間・構成:空間的関係を認識し、正確に構成する能力の事を指します。複雑な幾何学図形を提示されて模写できるかなどを調べることで評価します。
◆遅延記憶:数分~数日の間に生じた事を記憶する能力の事を指します。即時記憶を調べる際に使用した単語や物語を、少し時間を置いたのちに再生できるかを調べることで評価します。
※5 あたまの健康チェック® (The MCI Screen)
国際的な神経心理学検査のメモリータスクを基に、株式会社ミレニアによって開発された認知機能検査です。主に健常者~MCIの方を対象に、記憶能力や決定能力を評価します。この認知機能検査は2016 年から国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターが運用している『認知症予防を目的とした大規模な健常者登録システム(IROOP レジストリ)』において、公式の認知機能検査として選定されています。
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