115億光年の遠方から届いた超新星爆発初期の様子
―重力レンズにより超新星爆発の遠方観測世界記録を大幅に更新―
千葉大学先進科学センターの大栗真宗教授らの国際共同研究チームは、115億光年(1光年は光が1年間に進む距離)離れた遠方の超新星爆発の初期の様子を捉えることに成功しました。超新星爆発は重力レンズ(注1)と呼ばれる望遠鏡によって3個に分裂して観測され、またそれぞれの重力レンズ像の到達時間の違い(時間の遅れ(注2))を利用することで超新星爆発初期の明るさの時間変化をも捉えることができました。また今回観測された超新星は、太陽の約500倍の半径を持つ赤色巨星(比較的低温度の巨大な恒星)の死に伴うものであったことが明らかになりました。初期放射の観測により、爆発した元の星(親星)の性質が明らかになったものとしては、これまでで最遠方の超新星爆発です。
本研究成果は英学術誌 Nature 11月10日発行号に掲載されました。
本研究成果は英学術誌 Nature 11月10日発行号に掲載されました。
- 研究の背景
- 研究の成果
重力レンズで複数像が観測される場合、異なる像からの光は異なる経路を通って地球に到達するため、到達時刻に時間差が生じます。重力レンズ質量モデルの計算から、観測された3個の超新星爆発の複数像は、それぞれ数日の時間差で地球に到達していたことがわかりました。この時間差を利用することで、一枚の画像の観測から超新星爆発の明るさがどのように時間変化していたかを導き出すことに成功しました。こうして得られた明るさの時間変化から、爆発から6時間後の、非常に爆発初期の超新星爆発の姿を捉えていたことが明らかとなりました。爆発初期の明るさと色の時間変化は、衝撃波が星の表面を通過したのち星が膨張し温度が低下する、衝撃冷却の時期の時間変化を観測したものと解釈でき、これにより親星の半径を精度よく予測することができます。我々の解析によって、親星の半径は太陽の半径の約500倍(約3億5000万㎞)と見積もられ、親星は赤色巨星であることが明らかとなりました。初期の明るさと色の変化によりその親星の性質が明らかになった超新星爆発としては、これまでの記録を大幅に更新する最遠方の超新星爆発となります。
- 今後の展望
また、重力レンズ効果を受けた遠方の超新星爆発の観測頻度から宇宙の星形成史を調べることも可能となります。今回の発見に基づき115億光年の遠方までの超新星爆発頻度を観測的に求めた結果、遠方の宇宙でこれまで考えられていたよりも多くの超新星爆発が起こっており、星の形成が活発であったことも明らかになりました。今後の同様の手法を用いた将来の観測により宇宙初期から現在までの幅広い年代の星形成史を調べることができるでしょう。
- 用語解説
(注2)時間の遅れ:重力レンズの影響を受けた光は、異なる経路で観測者に到達することで到達時間に差が生じる。
※重力レンズおよび時間の遅れについては、以下の解説動画もご参照ください。
《千葉大学研究紹介》先進科学センター・理学部物理学科(宇宙論グループ)
https://www.youtube.com/watch?v=OKquCm7MEyM
- 研究プロジェクトについて
- 論文情報
著者:Wenlei Chen, Patrick L. Kelly, Masamune Oguri, Thomas J. Broadhurst, Jose M. Diego, Najmeh Emami, Alexei V. Filippenko, Tommaso L. Treu & Adi Zitrin
掲載誌:Nature
DOI:https://doi.org/10.1038/s41586-022-05252-5
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