がん抑制型マイクロRNAによる乳がん抑制の新規メカニズムの解明
~乳がんの新たな治療法開発に期待~
千葉大学大学院医学研究院、災害治療学研究所の橋本直子助教、田中知明教授らの研究グループは、マイクロRNA(miRNA, miR)(注1)-874が、メバロン酸経路(注2)の抑制を介して乳がん細胞の増殖を抑制するメカニズムを明らかにしました。乳がんにおけるmiR-874と細胞内代謝の関わりの解析が進むことで、乳がんに対する新たな治療法の開発が期待できます。本研究成果は、2022年11月2日、英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。
- 研究の背景と経緯
本研究では、RNAシーケンスや個々の細胞の遺伝子発現(量)を評価する一細胞解析(シングルセル解析)(注3)という最新の技術を使って、以下の点を明らかにしました。
- 研究の内容
乳がん細胞株(MCF-7)へのmiR-874の導入は、PMVKを含む複数のメバロン酸経路の遺伝子群の発現抑制を介して、乳がん細胞の増殖を抑制することを明らかにしました(図2)。さらに、PMVKをノックダウンすると、がん抑制遺伝子p53(注5)の活性化を伴う増殖抑制が生じることを示しました。
- 今後の展開
- 用語解説
(注2)メバロン酸経路:コレステロール合成の主要な経路。細胞骨格やシグナル伝達にも関わる。
(注3)一細胞解析 (シングルセル解析):個々の細胞の遺伝子発現を網羅的に評価する手法。肝細胞など一種類の細胞にも多様性があるため、新しい細胞の特性や機能を評価できる。
(注4)マスターレギュレーター:細胞の分化などに関連する調節経路における最上位にある遺伝子。
(注5)p53:約半数のがん患者において変異が認められるがん抑制遺伝子、ゲノムの守護神とも呼ばれる。
(注6)核酸医薬品:遺伝情報を司る核酸(DNAやRNA)の骨格を利用して作られた医薬品のこと。
- 研究プロジェクトについて
・日本学術振興会・科学研究費補助金基盤研究(B)ミトコンドリア複合体と制御メカニズム解析から捉える肥満・糖尿病の分子病態研究 (研究代表者:田中知明)2019年度~2021年度
・日本学術振興会・科学研究費補助金基盤研究(B)脂肪や血管組織老化に伴う機能変容における老化関連長鎖非コードRNAの基盤的研究(研究代表者:橋本直子)2021年度~2023年度
- 論文タイトル
DOI https://doi.org/10.1038/s41598-022-23205-w
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