火山岩質貯留岩層の性状把握に寄与する鉱物組成の定量化手法が日本地層評価学会で「最優秀発表賞」を受賞
JOGMECがJAPEXと共同した火山岩質貯留岩層に関する研究の成果について、日本地層評価学会(Japan Formation Evaluation Society, SPWLA Japan Chapter)第26回シンポジウム(2021年9月30日、10月1日、7日)で行った発表が評価され、第27回シンポジウム(2022年9月14日~15日)において最優秀発表賞を受賞したことが発表されました。受賞した発表概要は以下の通りです。
■発表タイトル:Integrated Mineral Quantification Technique for Volcanic Reservoirs
■発表者:大谷 猛亮 (JAPEX)
共著者:山本 哲也(JAPEX)・服部 達也(JOGMEC)・川角 彰吾(JAPEX)
■受賞概要
東日本には火山岩の石油・天然ガス貯留層が広く分布していますが、それらは一般的な堆積岩(砂岩等)の貯留層と比較して鉱物組成が複雑です。また、貯留岩性状が変質作用による鉱物組成変化と密接に関わっていることが多く、その影響を定量的に評価するためにも正確な鉱物量比を求めることが重要です。しかし、「この分析を実施すれば鉱物組成の定量値が得られる」といった確立された手法は見いだされていません。
本研究では、より精度の高い鉱物組成の定量値を求める手法の確立を目指して、秋田県の由利原油ガス田及び新潟県の片貝ガス田の火山岩質貯留岩層であるグリーンタフ層準に発達する玄武岩、流紋岩などを研究対象とした、XRD(X線回折分析), XRF(蛍光X線分析), Rock Eval(有機・無機炭素量分析), 岩石薄片鑑定, 及びSEM+EDS(走査型電子顕微鏡+エネルギー分散型X線分光法)を用いた鉱物マッピングの5種類の分析手法を統合した火山岩質貯留岩層の鉱物定量化ワークフローを作成しました(下図)。
この定量化手法は、ストイキオメトリ(化学量論的手法)という、化学組成情報から鉱物量比を計算する古くからある手法を基本としていますが、その手法に複数の分析を統合的に利用して個々の鉱物の計算結果の妥当性を評価することで、全体としての計算誤差を抑制できたことが特筆すべき成果となっています。これにより、より正確な対象岩石の鉱物量比の定量値を得ることができ、貯留岩性状をより詳細に評価することが可能となります。
従来のストイキオメトリの計算式をSEM+EDS(走査型電子顕微鏡+エネルギー分散型X線分光法)による鉱物マッピングを活用することで計算式の妥当性を評価し、さらにRock Eval (有機・無機炭素量分析)から推定した火山岩に含まれる炭酸塩鉱物量比を組み合わせることで全体の鉱物量比の計算誤差を小さくした。
JOGMECは、これまでに蓄積された鉱物定量化に係る成果・知見を基に、ストイキオメトリ計算の妥当性評価のためのSEM+EDSによる鉱物マッピング分析やワークフロー構築に貢献しました。
本研究成果である鉱物定量化のワークフローは、由利原及び片貝地域のみならず、一般的な手法としてその他地域でも応用できると考えられます。今後、石油・天然ガス開発分野に限らず、CCS事業等においても鉱物量比の把握は重要な意味を持つことから、鉱物組成分析の高精度化に貢献すると期待されます。
(参考)
本発表の詳細については、One Petro内SPWLAのページからExtend Abstractをご参照ください。
SPWLA 26th Formation Evaluation Symposium of Japan
Paper Number: SPWLA-JFES-2021-C, Published: September 30, 2021
(URL)https://onepetro.org/SPWLAJFES/proceedings-abstract/JFES21/All-JFES21/SPWLA-JFES-2021-C/471998
リリース本文はこちら↓
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00062.html?mid=pr_221031
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