DX対応済の企業16.4%にとどまる 規模間格差が大きく、人手不足が深刻なほど対応進む
企業のDXへの取り組みに関する動向調査
<調査結果>
DXへの取り組み、売り上げが大きくなるほど進むが、「100億円以上」でも半数
従業員数「1001人以上」では3分の2がすでに対応も、「20人以下」は1割に届かず
「銀行」は8割以上で対応済、商社や通信、情報サービス関連業種も上位に
人手不足の企業でDX対応進む
小規模企業は“成長性”、中小企業は“生産性”が高いほどDXへの対応進む
会話型AI(人工知能)サービスや画像生成AIサービスなど、生成系AIの技術が急速に進歩し、世間を賑わせている。膨大なデータを学習した生成AIを活用して文章や画像、デザインなどを新たに創造するサービスは、これまでのビジネスの常識を覆すほどの効果があると言われ、導入を本格的に検討する企業が急増している。
企業には、生成AIを含めてデータとデジタル技術を活用して自社の製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争力を高めるDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが求められる。しかし、日本の国際的なデジタル競争力は低下が続いており、官民においてデジタル分野への取り組みは喫緊の課題となっている。
DXへの取り組み、売り上げが大きくなるほど進むが、「100億円以上」でも半数
DXへの取り組み状況について、「すでに対応している」企業は全体で16.4%となった。そのうち、専門部署を置いている企業は3.5%にとどまっている。
「すでに対応している」企業の割合を売り上げ規模別にみると、売上高が「100億円以上」では50.0%と半数にのぼった。そのうち専門部署を置く企業は19.8%で、他の売り上げ規模と比較して10ポイント以上高い。以下、「50億~100億円未満」(33.6%)、「30億~50億円未満」(27.3%)、「10億~30億円未満」(19.7%)、「10億円未満」(9.1%)と続いており、売り上げ規模が小さくなるほどDXへの取り組みが進んでいない状況がうかがえる。
従業員数「1001人以上」では3分の2がすでに対応も、「20人以下」は1割に届かず
DXへ「すでに対応している」企業の割合を従業員数別にみると、「1001人以上」の大企業では65.4%と企業の約3分の2にのぼった。そのうち、専門部署がある企業は38.4%、専門部署がない企業は27.0%となり、前者が後者を10ポイント以上上回った。
また、「301人~1000人」では49.5%がすでに対応しているものの、専門部署を設置している企業は18.7%にとどまり、専門部署を置く割合は「1001人以上」と比べると半減している。以下、「101人~300人」(35.4%)、「51人~100人」(25.7%)、「21人~50人」(17.4%)、「6人~20人」(9.9%)、「5人以下」(5.5%)となり、従業員数が多いほど対応が進んでいる傾向がみられた。
「銀行」は8割以上で対応済、商社や通信、情報サービス関連業種も上位に
DXへ「すでに対応している」企業を主な業種別にみると、「銀行」が82.1%と突出して高かった。そのうち、専門部署があるのは66.3%、専門部署がないのは15.8%となり、3社に2社で専門部署を設置している。次いで、総合商社や貿易商社などを含む「各種商品卸売業(従業者が常時100人以上のもの)」が61.3%となった。以下、「民間放送業」(57.1%)、「国内・国際電気通信業」(53.0%)、「高等教育機関」(49.5%)、「ソフトウェア業」(48.4%)が続いた。
人手不足の企業でDX対応進む
DXへ「すでに対応している」企業について、各社の人手不足[1]状況との関係を調べたところ、正社員が「不足」と考えている企業の26.5%で対応が進んでおり、「適正」な企業より5.1ポイント高かった。人手不足をDXで補完しようとする姿勢がうかがえる
小規模企業は“成長性”、中小企業は“生産性”が高いほどDXへの対応進む
DXへ「すでに対応している」企業について、5つの経営指標をもとにみると[2]、“成長性”や“生産性”の違いで取組状況が異なる傾向がみられた。従業員数が「5人以下」では、DXに取り組んでいる企業において“成長性”指標が突出して高く表れていた。“成長性”指標は、従業員数が多くなるにつれて、次第に各従業員規模の全体平均へ近づいていく傾向ある。
また、“生産性”に関して、従業員数が「6人~20人」「21人~50人」の企業において、全体平均の1.1倍を超えている。DXへの取り組みは、中小企業において“生産性”がより重要な要因となることが示唆される。
まとめ
世界的にAI(人工知能)が急速に発展する一方で、2022年の日本のデジタル競争力は前年から1つ順位を下げて63カ国中29位となり、過去最低を更新した(IMD、『世界デジタル競争力ランキング2022年版』)。このため、政府はDXをはじめとしたデジタル技術による生産性向上をはかり、経済の好循環を目指している。
本調査の結果をみると、現在、すでにDXに対応している企業は1割台にとどまっていた。また、売り上げ規模が100億円以上の企業においても、DXに対応している企業は半数に満たないほか、従業員数や業種によってDXへの取り組み状況は大きく異なる現状が明らかとなった。他方、人手不足がDXの取り組みを促進している可能性も示唆される。
デジタル技術の進展や消費者ニーズの多様化によってビジネス環境が激しく変化するなか、企業が生き残るためにはデジタル化やDXへの取り組みが求められている。政府による中小企業への支援策とともに、中小企業はデジタル人材の確保に加えて、リスキリングなどを通じて既存従業員のデジタルスキル向上や、社内全体の能力向上に関する施策を実施することが肝要となろう。
[1] 人手不足状況は、帝国データバンク「TDB景気動向調査2023年5月度」の回答を援用した。
[2] 5つの経営指標について、“収益性”は売上高総利益率、“生産性”は一人当たり売上高、“安全性”は自己資本比率、“成長性”は売上高伸び率、“効率性”は総資本回転率を用いている。
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