【国立映画アーカイブ】上映企画「日本の女性映画人(2)――1970-1980年代」開催のお知らせ
国立映画アーカイブでは、2月6日(火)より「日本の女性映画人(2)――1970-1980年代」を開催します。
日本映画の歴史において、監督のみならず多様な職域で女性映画人たちが手腕を発揮してきました。2022年度に開催した「日本の女性映画人(1)――無声映画期から1960年代まで」に続き、1970-80年代に生じた映画界の構造変化の中で躍進した女性映画人たちを取り上げ、監督・脚本・製作などの分野に着目して、劇映画からドキュメンタリーまで計74作品(47プログラム)を上映します。
1970年代以降は独立プロを基盤に、女性監督たちが活路を切り拓いていきます。女優出身の左幸子『遠い一本の道』(1977)や宮城まり子『ねむの木の詩がきこえる』(1977)は社会運動に根差した題材で大きな反響を呼び、自主製作の動向から頭角を現した鵞樹丸は『わらじ片っぽ』(1976)で前衛的表現を開拓しました。1980年代にかけて続々と女性が監督を手がけるようになり、作品の多様化が顕著になっていきます。
一方、撮影所体制がゆらぐ中で、ジャンル映画において女性脚本家たちが台頭してきたこともこの時期の特徴です。『メカゴジラの逆襲』(1975)の高山由紀子や『ビー・バップ・ハイスクール』(1985)の那須真知子などが娯楽映画に新風を吹き込みました。
さらに今回は小特集として、記録映画作家を取り上げ、音声を画と対等に捉えて革新的なドキュメンタリーを打ち出した時枝俊江と女性史を語り継ぐ作品群を手がけた藤原智子の業績を再評価します。
日本映画の転換期に新機軸をもたらした女性映画人たちの足跡を振り返ることにより、日本映画史の再考につながる新たな視座が切り拓かれることを願っております。
見どころ
▼女性監督作品の多様化 前衛的表現を開拓した自主映画作家・鵞樹丸の発見!
自主製作の動向から頭角を現した鵞樹丸(本名・村上靖子)は、『わらじ片っぽ』(1976)によって女性の自由と抑圧をテーマに時空を交錯させて描き、前衛的表現を開拓しました。壮大なスケールの自主製作に取り組み、インディペンデント作家としての先駆的作品となりました。日本映画史のミッシング・リンクとも位置づけられる重要な発掘にご注目ください。
▼ジャンル映画にも活躍の場を広げた女性脚本家たち
1950-60年代には文芸映画の隆盛を背景として水木洋子や田中澄江などが健筆をふるいましたが、その後、撮影所体制のゆらぐ中で、時代劇や特撮映画も含めて幅広いジャンル映画にも女性脚本家が活躍の場を広げました。娯楽映画に新風を吹き込んだ高山由紀子や那須真知子をはじめ、東宝青春映画路線で活躍した重森孝子や、NHK大河ドラマ初の女性脚本家となった大野靖子などの作品を上映します。
▼ドキュメンタリー作家の小特集―Ⅰ時枝俊江、Ⅱ藤原智子
女性監督たちが実績を積み重ねてきた記録映画では、様々な秀作群が送り出されてきました。岩波映画製作所で羽田澄子と並んで活躍した時枝俊江は、音声を画と対等に捉えて革新的なドキュメンタリーを打ち出しました。ライフワークとなった幼児教育を扱った作品群をはじめ、21作品の上映によって幅広い業績を再評価します。また、藤原智子は日本の女性史について多面的にアプローチした骨太な記録映画を手がけました(7作品を上映)。
上映作品(74作品)
『わらじ片っぽ』(1976)『きこぱたとん』(1993)『ねむの木の詩がきこえる』(1977)『遠い一本の道』(1977)『グレープフルーツのような女 性乱の日々』(1981)『熟女スワップ若妻レズ 乱行恥態』(1994)『曽根崎心中』(1981)『六ヶ所人間記』(1985)『若人よ いのちと愛のメッセージ』(1987)『ダブルEカップ 完熟』(1988)『(生)性体験 世にもみだらな女たち』(1989)『よみがえれカレーズ』(1989)『映画をつくる女性たち』(2004)『その人は女教師』(1970)『新座頭市物語 笠間の血祭り』(1973)『二十歳の原点』(1973)『沖田総司』(1974)『メカゴジラの逆襲』(1975)『団地妻 二人だけの夜』(1978)『イヴちゃんの花びら』(1984)『ダイアモンドは傷つかない』(1982)『それから』(1985)『ビー・バップ・ハイスクール』(1985)『極私的エロス・恋歌1974』(1974)『ミスター・ミセス・ミス・ロンリー』(1980)『恋の浮島』(1982)『廃市』(1984)『人妻の悶え ザ・不倫』(1981)『変態家族 兄貴の嫁さん』(1984)『黒い雨』(1989)『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991)『修羅』(1971)『四畳半襖の裏張り』(1973)『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976)『ウンタマギルー』(1989)『AT YUKIGAYA TWO』(1974)『父の情景』(1981)『たわむれときまぐれと』(1984)『ざわめきのもとで』(1985)『加恵、女の子でしょ!』(1996)『迷宮譚』(1975)『疱瘡譚』(1975)『審判』(1975)『ピカドン』(1978)『水仙月の四日』(1990)『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』(1980)
【小特集Ⅰ 時枝俊江】
『町の政治 べんきょうするお母さん』(1957)『This is TOKYO』(1960)『新しいガス源をもとめて』(1965)『夜明けの国』(1967)『文教の歩みをたずねて 文京の文化財』(1975)『建造物との対話』(1980)『ぶんきょうゆかりの文人たち 観潮楼をめぐって』(1988)『越後上布』(1980-81)『歌舞伎の魅力 舞台』(1981)『ともだち』(1961)『ケンちゃんたちの音楽修行 ヤマハ音楽教室四才児初期の記録』(1965)『学級集団の成長 ある教師の保育日誌から』(1977)『子どもをみる目 ある保育者の実践記録から』(1978)『光った水とろうよ 幼児の知的好奇心をさぐる』(1979)『こころをひらく 育ちあいをもとめる保育』(1981)『みどりぐみ こ・う・じ・げ・ん・ば 幼児の自己充実をもとめて』(1982)『みる、きく、たしかめる 創りだす自分のせかい』(1983)『いいこといいこと考えた 遊びでひろがる数量の世界』(1985)『病院はきらいだ 老人の在宅ケアを支えるネットワーク 』(1991)『農民とともに 地域医療にとりくみ50年』(1995)『地域をつむぐ 佐久総合病院小海町診療所から』(1996)
【小特集Ⅱ 藤原智子】
『歌舞伎の立廻り』(1981)『歌舞伎俳優研修教材シリーズ No.8 歌舞伎の後見』(1992)『誕生 その歓び』(1986)『杉の子たちの50年 学童疎開から明日へのメッセージ』(1995)『ルイズ その旅立ち』(1997)『伝説の舞姫 崔承喜 金梅子が追う民族の心』(2000)『ベアテの贈りもの』(2004)
開催概要
企画名:日本の女性映画人(2)――1970-1980年代
(英題: Women Who Made Japanese Cinema [Part 2]: From the 1970s to the 1980s)
会期:2024年2月6日(火)―3月24日(日)※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]
HP:https://www.nfaj.go.jp/exhibition/women202312/
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
チケット:詳細はHPをご確認ください。
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