関西医科大学が高齢がん患者への骨格筋電気刺激の介入による下肢機能改善とサルコペニア軽減への影響を確認
研究成果が「Archives of Rehabilitation Research and Clinical Translation」に掲載
関西医科大学 小坂 久 講師を筆頭著者としたグループは、株式会社MTG(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:松下剛)の骨格筋電気刺激装置(Electrical Muscle Stimulation:以下、EMS)を使用し、高齢がん患者の下肢機能改善とサルコペニア軽減に与える影響を明らかにするために4週間のパイロットスタディを実施しました。
この研究成果は「Archives of Rehabilitation Research and Clinical Translation」に掲載されています。
高齢がん患者の多くは、筋肉量や筋力が低下する「サルコペニア」の状態にあり、それによる生活の質(QOL)の低下は、予後や生存期間に悪影響を与えることが明らかになっています。特に抗がん剤治療中の患者では、治療による副作用、慢性的な疲労感、時間的制約などから、運動の継続が難しく、リハビリテーションの中断や機能低下を招きやすい状況にあります。
EMSは、筋萎縮の進行を抑えたり改善したりする効果があることが報告されています。とくに、病院や施設で使用される据え置き型のEMSでは、筋力や身体機能の改善効果が確認されています。一方で、家庭で使えるEMS(携帯型)については、筋肉量の維持には役立つとされるものの、筋力や機能を実際に改善できるかどうかはまだはっきり分かっていません。がん患者では、抗がん剤治療による副作用や疲労、さらに通院の負担などから運動リハビリを続けることが難しいケースが少なくありません。そのため、自宅でも安全かつ簡単に続けられるリハビリ方法の確立が求められています。このような背景から、家庭用(携帯型)EMSを使った在宅リハビリが、高齢がん患者の足の機能やサルコペニア(筋肉量の減少)を改善できるかを検証するために、本研究が実施されました。
Hisashi Kosaka MD, PhD ,Tome Ikezoe MD,PhD , Kimitaka Hase MD,PhD ,Yutaka Kimura MD,PhD ,
Takumi Miyauchi , Tung Thanh Lai MD ,Khanh Van Nguyen MD ,Kyoko Inoue ,Moriyasu Takada ,
Hideyuki Matsushima MD, PhD , Gozo Kiguchi MD, PhD ,Hidekazu Yamamoto MD, PhD ,
Kosuke Matsui MD, PhD ,Megumi Taketani ,Tomoyuki Shirai ,Masaki Kaibori MD, PhD
■目的
高齢がん患者における、家庭用EMSの下肢機能およびサルコペニアに与える影響を明らかにすること。
■方法
2023年3月から2024年7月までに関西医科大学病院を受診したがん患者53名をベースラインのShort Physical Performance Battery(以下、SPPB)値が9以下の方を下肢機能低下、9を超えている方を下肢機能正常と定義し、2群に分けて家庭用EMSを使用した在宅自己リハビリテーションを4週間実施しました。
下肢機能を評価するために、歩行速度、椅子からの立ち上がり、バランスを、使用前/2週後/4週後に測定しました。
また、下肢筋力を評価するために、膝伸展筋力、足趾把持力、握力を、使用前/4週後に測定しました。
EMSは1日1回15~23分間を4週間使用しました。EMSは継続的に使用され、4週間の研究期間中の使用日数の中央値は28.0日(24.3~28.0日)、平均刺激レベルは16.9であり、EMSに関連する有害事象は認められませんでした。
■結果
【下肢機能】
ベースラインSPPB >9グループ(下肢機能正常群)では、合計スコアまたはその構成要素に有意な改善は見られませんでしたが、ベースラインSPPB≤9群(下肢機能低下群)では改善効果が顕著で、合計スコアとバランス能力および歩行速度が有意に改善しました。
【結果の一例】

【サルコペニア】
介入前のSPPBスコアが9以下だった群(下肢機能低下群)では、EMSを使用した4週間の在宅自己リハビリテーションにより、重度サルコペニアの割合が66.7%から36.4%へと有意に減少しました。

■結論
家庭用EMS機器を用いた4週間の在宅自己リハビリテーションは、高齢がん患者の下肢機能を改善し、サルコペニア状態を軽減する可能性を示唆しました。本研究は、代替リハビリテーションの選択肢を確立するための基礎となる可能性を示しています。
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論文の内容はこちら
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2590109525000540
■タイトル
Pilot Study to Assess the Ability of a 4-Week, Home-Based, Electrical Muscle Stimulation Program to Improve Lower Extremity Function and Reduce Sarcopenia in Older Individuals With Cancer
■著者
Hisashi Kosaka MD, PhD,Tome Ikezoe MD,PhD, Kimitaka Hase MD,PhD,Yutaka Kimura MD,PhD,Takumi Miyauchi, Tung Thanh Lai MD,Khanh Van Nguyen MD,Kyoko Inoue,Moriyasu Takada,Hideyuki Matsushima MD, PhD, Gozo Kiguchi MD, PhD,Hidekazu Yamamoto MD, PhD,Kosuke Matsui MD, PhD,Megumi Taketani,Tomoyuki Shirai,Masaki Kaibori MD, PhD
■掲載雑誌
Archives of Rehabilitation Researchand Clinical Translation(2025)000,100479
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