【 文楽 ▶▶ 日本青年館ホール 】文楽を代表する名作揃いの「2月文楽公演」を外苑前・日本青年館ホールにて開催いたします!
これまで多くの伝統芸能公演を制作、上演してきた国立劇場は、再整備期間中も伝統芸能の振興のため、都内各劇場にて主催公演を続けています。昨年12月には足立区・北千住のシアター1010(センジュ)にて、国立劇場主催公演の新たな一歩を踏み出しました。
第2弾は、外苑前・日本青年館ホールにて2月文楽公演を行います。
三部制でお送りする2月文楽公演は、どの部も文楽を代表する名作と華やかな踊りが揃います。各回2時間半以内とコンパクトな上演時間ですので、お買い物やお食事、明治神宮外苑エリアの散策などお出かけのご予定と一緒に、お気軽に文楽の魅力をご堪能いただけます。
報道各位におかれましては、本件の皆様への周知にご協力を賜りますようお願い申し上げます。
第一部 華やかで溌剌とした舞で幕開け『二人三番叟(ににんさんばそう)』
文楽屈指の大作。一家の悲劇を描く『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』
2月文楽公演は『二人三番叟』で幕を開けます。能の『翁』をもとにした格式高い祝儀曲『寿式三番叟』のうち、二人の三番叟が登場する場面を取りあげたもので、華やかな浄瑠璃の演奏に乗って躍動的に舞い五穀豊穣を祈ります。三番叟が袖や鈴を振る姿は、厄災をもたらす邪気を払う意味も込められており、公演の幕開けにふさわしい清々しい舞台です。
続いては言わずと知れた人気作『仮名手本忠臣蔵』より、五・六段目にあたる早野勘平とその一家の悲劇を描いた場面の上演です。『仮名手本忠臣蔵』は寛延元年(1748)大坂・竹本座で初演された、全十一段構成の時代物です。作者は竹田出雲、三好松洛、並木千柳で、彼らは浄瑠璃三大名作(『菅原伝授手習鑑』『義経千本桜』『仮名手本忠臣蔵』)を手掛けています。
元禄時代に実際に起きた討ち入り、いわゆる赤穂事件がもとになった大作で、塩谷判官の刃傷事件を中心に、仇討ちに至るまでの苦悩や人間模様が描かれています。
塩谷判官(えんやはんがん)の家臣・早野勘平(はやのかんぺい)は、恋人のおかると逢瀬をしていたために、主君の一大事に立ち会うことができず、討ち入りの徒党に加われないまま、おかるの実家に身を寄せていました。勘平は、夜道で狩りの最中、猪を撃ったつもりが誤って人を殺してしまいます。討ち入りに参加するために金が必要だった勘平は、死体の懐中にあった財布を持ち帰ります。しかし、おかるを迎えに来た遊女屋の話を聞いた勘平は、持ち出した財布の柄から、舅・与市兵衛を殺してしまったと思い込みます。苦しい胸の内を抱えながらおかるを見送った勘平ですが、財布に気付いた母に激しく責め立てられ、さらにそこにやって来た塩谷家の家臣による強い非難にも耐えきれず、腹に脇差を突き立てます。しかし勘平が撃ったのは……。事実が明らかになると、勘平も徒党に加わることが許されますが、勘平は息絶えてしまいます。娘を売り、夫と婿を亡くし、たった一人残された年老いた母の痛切な嘆きで、哀しみに溢れた幕切れです。
第二部 夫を想う妻の述懐が胸を打つ『艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)』
一足早くのどかな春を感じる『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』
元禄8年(1695)に大坂千日墓所で実際に起きた心中事件がありました。これに取材した作品は数多くあり、『艶容女舞衣』もその一つです。初演は安永元年(1772)で、同事件を題材とした先行作品の影響を受けて作られました。
大坂・上塩町(うえしおまち)の酒屋・茜屋(あかねや)の半七(はんしち)は芸人の三勝(さんかつ)と深く馴染み、妻のお園を置いて出て行った上に、殺人の罪まで負ってしまいます。ここから今回取り上げる「酒屋の段」へと続きます。この場面ではお園をはじめとした半七一家が、義理と愛情の狭間で苦悩する様子が描かれます。
お園の父・宗岸は半七の行いに怒り、お園を連れて帰っていましたが、泣き暮らすお園を心配して茜屋に連れてきます。しかし半七の父・半兵衛は嫁とは呼べないと厳しい対応です。ところが、半兵衛が息子の代わりに縄にかかったことを宗岸が見抜き、これをきっかけに、お互いの深い親心を感じて涙を流します。
ここから一人残されたお園が、夫を想って深い悲しみに暮れる名場面です。「今頃は半七様……」で広く知られるクドキは、純粋なお園の姿が胸を打つ見どころ、聴きどころです。
嘆くお園のもとに現れたのは、茜屋に預けられた捨て子でした。お園はその子が半七と三勝の子・お通だと気付き、一同はお通の懐にあった書付から半七と三勝の心中を察します。
門口で様子を聞いていた半七は涙を流し、お通に未練のある三勝を制して、心中に向かうのでした。
続いては『戻駕色相肩』です。天明8年(1788)江戸中村座初演の初世桜田治助作、初代鳥羽屋里長作曲の歌舞伎舞踊『戻駕』を、文楽に移した作品で、大阪・国立文楽劇場では昭和63年(1988)に復活上演された後に3度ほど上演がありましたが、国立劇場主催公演での上演は初めてです。
桜が咲き乱れる京・紫野にて、浪花次郎作と吾妻与四郎という二人の駕籠舁きが、駕籠に乗せてきたかむろとともに、京・大坂・江戸の三都それぞれの廓について語り合います。
一足早くのどかな春を感じられる舞台をお楽しみください。
第三部 弁慶と牛若丸の運命的な出会いを描く『五条橋(ごじょうばし)』
情と義理とが美しく絡み合う『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』
平家全盛の世で源氏再興を志す三兄弟の物語に、武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)と牛若丸(うしわかまる)の逸話を絡めた『鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)』。この物語の五段目にあたるのが弁慶と牛若丸の出会いを描く『五条橋』です。
京都の五条橋で通行人を襲う曲者がいるという噂が流れ、その曲者をとらえようと弁慶がやってきます。そこにいたのは優美な少年でした。大柄な弁慶に争いを仕掛けるその少年こそ牛若丸です。二人の運命的な出会いを勇壮に、ユーモラスに描きます。
後半は『双蝶々曲輪日記』です。寛延2年(1749)に大坂竹本座で初演されました。二人の力士、濡髪長五郎(ぬれがみちょうごろう)と放駒長吉(はなれごまちょうきち)の達引が描かれ、二人の名前は外題の「蝶々」の由来にもなっています。
今回上演する場面では、長五郎が贔屓筋の山崎与五郎のために罪を犯してしまったことを発端として、互いを思いやる家族の苦悩と情愛が描かれます。
与五郎は恋人の吾妻と駆け落ちをしますが、大坂・難波裏で、吾妻に横恋慕する平岡郷左衛門とその仲間の三原有右衛門に見つかってしまいます。そこに駆け付けたのは長五郎です。与五郎の父に恩義のある長五郎は、与五郎と吾妻を逃がすため、やむなく郷左衛門と有右衛門を殺してしまいます。場所は変わって、長五郎の実家がある京都の八幡の里。長五郎は幼い時に養子に出され、今は実母と義理の弟・南与兵衛、その妻・お早が住んでいました。最後に母に一目会おうとやってきた長五郎ですが、代官に出世し南方十次兵衛と名を変えた与兵衛の初仕事が長五郎を捕らえることだと知り、捕まる覚悟を決めます。一方、母の様子から、十次兵衛は全てを察し、それとなく長五郎が逃げるための手助けをします。母は実子と継子の間で揺れ動き、ついには長五郎に引窓の縄を使って縛めますが、十次兵衛がその縄を切り、引窓から差し込む月の光を夜明け、そして今日から放生会(捕まえた生き物を放して殺生を戒める祭礼行事)になぞらえて、長五郎を逃がします。段名にも使われている「引窓」とは採光のための窓で、これをキーアイテムとして物語が巧みに展開します。
外苑前・日本青年館ホールにて初の文楽公演開催
老朽化などに対応する再整備等事業のため、令和5年10月末日をもって初代国立劇場は57年の幕を閉じました。閉場後も他劇場にて主催公演を引き続き行っています。昨年12月には北千住・シアター1010にて閉場後初の文楽公演を行い、多くのお客様に国立劇場主催の文楽公演をお楽しみいただきました。2回目となる2月文楽公演は外苑前・日本青年館ホールにて行います。
日本青年館は、都心ながらも緑にあふれる神宮外苑エリアに位置する複合施設で、ホテルなどと共に今回会場となる日本青年館ホールがあります。現代演劇やコンサートなど様々な用途で使用されている日本青年館ホールですが、今回が初めての文楽の上演となります。
徒歩5分程度の東京メトロ銀座線外苑前駅が最寄り駅で、JRの信濃町駅や千駄ケ谷駅、都営地下鉄大江戸線国立競技場駅からも徒歩10~15分程度と、どこからもお越しいただきやすい会場です。
周辺には表参道や青山など多くの商業施設で栄える街がありますので、コンパクトな上演時間の文楽公演と、観劇後のお買い物やお食事を合わせて、充実したひと時をお過ごしください。
国立劇場 2月文楽公演
第一部
二人三番叟
仮名手本忠臣蔵
山崎街道出合いの段/二つ玉の段/
身売りの段/早野勘平腹切の段
第二部
艶容女舞衣
酒屋の段
戻駕色相肩
廓噺の段
第三部
五条橋
双蝶々曲輪日記
難波裏喧嘩の段/八幡里引窓の段
【公演日程】
令和6年2月5日(月)~13日(火) ※字幕あり ※休憩あり
第一部 12時開演 (午後2時20分終演予定)
第二部 午後3時15分開演 (午後5時30分終演予定)
第三部 午後6時30分開演 (午後8時40分終演予定)
【料金[各部・税込]】
1等席 7,000円(学生4,900円)
2等席 6,000円(学生4,200円)
※障害者の方と介添者1名は2割引です。(他の割引との併用不可)
※車椅子用スペースがございます。
※残席がある場合、公演会場にて当日券のみ窓口販売いたします
(当日券窓口 午前11時~各部開演前)
国立劇場について
日本の伝統芸能の保存及び振興を目的として昭和41年(1966)に開場。外観は奈良の正倉院の校倉造りを模している。大劇場・小劇場・演芸場・伝統芸能情報館を備え、多種多様な日本の伝統芸能を鑑賞できる。初心者や外国人を対象とした解説付きの鑑賞教室も開催している。
老朽化による再整備事業のため、令和5年(2023)10月末に閉館。閉館後も都内各劇場のご協力により、主催公演を継続して上演している。
所在地:東京都千代田区隼町4-1
03-3265-7411(代表)
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