「明治安田Jリーグワールドチャレンジ2023 powered by docomo」においてAPN IOWN1.0を活用しリアルタイム性が求められる
「リモートプロダクション」と「8KVR複数同時映像伝送」の実証を実施
IOWN技術の活用により、リモートプロダクションによる番組制作の展開やXR分野の事業化等の検討を進め、これまでにない映像体験やエンターテイメント体験の実現をめざします。
※1 APN IOWN1.0とは、2023年3月に提供を開始した、通信ネットワークの全区間で光波長を専有するオールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network)サービスです。詳細は以下ホームページをご覧ください。
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230302_01.html
1.背景
放送業界においては、新しいライブ中継番組制作フローとして、中継現場から放送局にすべてのカメラ映像など複数の番組素材を同時にネットワーク伝送し、放送局で制作を行うリモートプロダクションが注目されています。これにより各種機材や人員の現場配置を効率化することや、映像の多角化など番組制作における付加価値の向上が期待できる一方で、大容量、低遅延かつジッタ(通信のゆらぎ)が少ない高機能なネットワークが求められることから十分な普及に至っていません。
また、NTTグループは、スポーツ観戦や音楽ライブイベントなどにおいて、新しい視聴体験やエンターテイメント体験を提供する取り組みを進めてきました※2。スポーツ観戦におけるXR体験をより臨場感のあるものするためには、低遅延かつ4K・8Kといった大容量映像をリアルタイムで複数映像を同時に伝送することが求められます。
これらの課題に対して、JリーグとNTTグループはIOWN構想※3の実現に向けた初めての商用サービスであるAPN IOWN1.0の特徴である「高速・大容量」「低遅延・ゆらぎゼロ」を活かして解決をめざしていくことといたしました。
各社の役割
Jリーグ | 新しいスポーツ観戦環境の提供、映像制作プロダクションの 業務環境の効率化の検証 |
NTTグループ | APN IOWN1.0を活用した、「高速・大容量」「低遅延・ゆらぎゼロ」な ネットワーク環境の提供 |
※2 国内初!文化芸術分野における新しい共創・鑑賞モデルの実現可能性を検証する低遅延通信技術を活用したコンサートを開催
Bunkamuraオーチャードホール-NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]間でのリアルタイム・リモート演奏
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20220324_02.html
※3 IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。
詳細は以下ホームページをご覧ください。
2.概要
今回はNTT東日本が提供するAPN IOWN1.0を活用し、国立競技場とeXeField Akiba(以下、eXeField)の2箇所を接続して以下2つの実証を行いました。
①リモートプロダクション
複数の放送用カメラからの4K60p映像を非圧縮のSMPTE ST 2110※4で伝送し、eXeFieldのリモート映像システム機材にてカメラ映像の切替等を行うプロダクション業務を実施しました。APN IOWN1.0の帯域が100Gpbs等と超広帯域であることで、4K60P非圧縮という非常に高ビットレートな映像信号をマルチチャネルでリアルタイム伝送することができ、高品質なポストプロダクション結果を放送局へ返すことを実現しました。
また、放送映像伝送において送信側と受信側で映像・音声の時刻を合わせ乱れなく映像を編集し、視聴できるようにするために非常に重要となる時刻同期信号について、APN IOWN1.0の特徴のひとつである「ゆらぎゼロ」を活かすことで、国立競技場ではGNSS※5から取得せず、eXeFieldから国立競技場へ供給しました。
このように、APN IOWN1.0の特性を活用することで、例えばGNSS信号の取得のためのアンテナを設置できないような場所(極端に深い地下等)に編集拠点を置かなければならないシチュエーションにおいても、両拠点に時刻同期信号を取得する機器を設置する必要がなくなることから、場所を選ばずにリアルタイムでリモートプロダクションを実施することが可能となります。
②8KVR映像伝送
ピッチ脇に設置した2台の8KVRカメラで試合模様を撮影し、リアルタイムで映像を伝送しました。従来は一方向からのVR映像の視聴体験であったところ、APN IOWN1.0の活用により、アングル違いのVR映像を複数同時に高画質にて伝送することが可能となります。
これにより、遠く離れたロケーションであるeXeFieldにいながらにして、複数VRカメラを切り替えることで、あたかもピッチ脇を移動しているかのような自由な視点での新たな観戦体験を実現しました。
なお、リモートプロダクションにおいては、ソニーマーケティング株式会社の協力を得て同社の映像制作機材※6を活用し実証を行いました。
※4 映像、音声、補助データを個別に伝送するという特徴を有する、SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)が
定める放送番組素材伝送用の映像伝送規格です。
※5 衛星測位システム(Global Navigation Satellite System)の略称で、衛星信号を用いて位置や正確な時刻の算出等を行うシステムです。
<実証イメージ>
※6 ソニーマーケティング株式会社の映像制作機材一覧
機器名 | 型名 |
NXL-FR316 | NXL-FR316 |
IP GW | IP50Y |
IP GW | IP51Y |
SWER | XVS-7000 |
SWER PANEL | ICP-X7700 |
SWER SCS | PWS-110SC1 |
LSM | PWS-110NM1 |
NS-BUSパネル | MKS-R1620 |
3.今後の展開
今回の実証について
Jリーグマルチメディア事業本部 本部長 岩貞和明のコメント
『これまでも、何度かリモートプロダクションなどのテストを行なって来ましたが、今回のAPN IOWN1.0でのプロダクション実証では遅延を意識させないレベルでした。またVRも画質向上でより臨場感のある映像を、アングル切り替えしながら体験ができました。今後の、リモートプロダクションや新たな視聴体験など実用導入が期待できると思いました。』
今回の実証を通じて得られたデータ、知見を活かし、APN IOWN1.0を活用したXR分野の事業化やリモートプロダクションによる番組制作等の検討を進めます。
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