ウクライナ:紛争激化から3年──「明日戦争が終わっても、長期にわたる治療が必要」
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ロシア軍がウクライナに侵攻し、2014年に始まった国際武力紛争が激化してから3年が経過した。人びとは、家族や友人の命、自分の手足、住んでいた家など、戦争が奪っていった現実に今も直面している。
この間、国境なき医師団(MSF)は戦争の被害により早期リハビリを要する患者が増加する状況を目の当たりにしてきた。多くの人が、四肢切断後の理学療法や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療を必要としている。
MSFは、戦争の被害を受けた人びとの医療ニーズに対応するために、継続的な人道援助が必要だと訴えている。
複雑さを増す医療ニーズ
続く砲撃や空爆により、MSFが援助を行うのは容易ではない。また、慢性疾患を抱える患者の多くは、高齢で移動が難しい。激しい砲撃を避けて、人びとが地下室や防空壕(ごう)に住み始めた地域もある。
MSFのウクライナ活動責任者、トーマス・マルケーズは次のように話す。
「この戦争の激しさは衰えておらず、医療面でのニーズは複雑さを増すばかりです。たとえ明日戦争が終わったとしても、何十万人もが長期にわたる理学療法やPTSDのカウンセリングを必要とするでしょう。そのニーズに確実に対応するために、継続的な人道援助が必要です」
前線に近い地域は毎日のように砲撃を受けており、高齢者や慢性疾患の患者など、最も健康被害を受けやすい人びとにとって医療を受ける機会は極めて限られている。また、医療施設や救急車に対する度重なる攻撃により、ウクライナの医療体制は悪化している。
MSFは、チェルカーシとオデーサで早期リハビリ・プロジェクトを実施している。ここでは、術後早期の理学療法、心のケアと暴力被害の看護を受けることができる。2023年と2024年にはMSFは755人に治療を行った。1年で、下肢切断の術後ケアを必要とする患者は10%増加した。
2024年には、プロジェクトに参加した患者の半数がPTSDかうつと診断された。心のケアへのニーズも著しく高い。チェルカーシとオデーサのセンターに加え、MSFはビンニツァでPTSDに焦点を当てたプロジェクトを立ち上げた。
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救急車で患者を搬送 慢性疾患患者のニーズが高まる
いまウクライナの医療体制には、緊急対応と、戦災患者の継続治療のバランスをとる重圧がのしかかっている。
この3年、ドローンやミサイルによる攻撃は日常と化した。前線から600マイル(約966キロ)余り離れた都市が攻撃されることもある。地下壕や地下室での治療や、発電所などへの攻撃による頻繁な停電に、医療施設や医療体制は適応しなければならない。
これに対しMSFは救急車による患者の搬送体制を敷いて対応。最前線に近く、対応の限界を超えている病院から、設備が整っている中部や西部の医療施設に患者を搬送している。MSFの救急車は、過去3年間に2万5000人超の患者を搬送。半数余りは暴力による外傷だった。
2024年、最前線付近で活動するMSFの移動診療と救急車のチームは、心血管疾患、糖尿病、癌(がん)などの慢性疾患の患者を搬送する件数が大幅に増加した。2023年にはこのようなケースは全搬送件数の24%を占め、2024年には33%に達した。
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ウクライナの医療体制に継続的な支援が必要
MSFは現地の医療・人道状況が日に日に深刻化している姿を目の当たりにしている。極度の暴力と向き合うウクライナの医療体制の強さは明らかだが、継続的な治療と心のケアの必要性はかつてないほど高まっている。
たとえ明日戦争が終わったとしても、人びとが心身に受けた長期的な影響はこの先何年も残る。ウクライナのインフラも甚大な被害を受けており、病院は直接攻撃を受けてきた。例え爆弾が落ちてから長い時間が経過しても、リハビリや心のケアを必要とする人たちは何十万人にも及ぶだろう。
MSFはウクライナで前線付近をはじめとした場所で活動を続けていくが、さらなる支援が求められている。
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