スペースシャワー列伝 第131巻~朔弦望(さくげんぼう)の宴~ ライブレポート
Ivy to Fraudulent Game / Halo at 四畳半 / yonige / Shout it Out / ラブリーサマーちゃん
Photo by MASANORI FUJIKAWA
夏の列伝開催!七夕前夜にそれぞれが放つ光で聴く人の心を照らす深さと強さを持ったアーティストが集結!
Ivy to Fraudulent Game / Halo at 四畳半 / yonige / Shout it Out / ラブリーサマーちゃん
オフィシャルライブレポート
七夕前夜の開催となった「スペースシャワー列伝」第131巻は、月の満ち欠けを表す「朔弦望(さくげんぼう)」の宴と題され、破竹の勢いで音楽シーンを席巻しつつある5組の若手アクトが勢揃い。BAR STAGEでは出演者によるトークショーも行われ、ハッシュタグ「#スペシャ列伝」を付けてツイートした願い事が抽選で叶えられるなどアットホームな雰囲気に包まれていたが、MAIN STAGEで繰り広げられたパフォーマンスは拳を突き上げて合唱したくなるほど熱いものばかり。すべてのバンドが伝えるべき「コトバ」と「うた」を持っていて、演奏はもちろん曲間のMCにも彼ら/彼女らの確固たる信念が宿っていたように思う。
「一番打者がホームランを打ちに来ました!」という山内彰馬(Vo&G)の宣言で幕開けしたのは、大阪を拠点とするShout it Outのステージ。「未確認フェスティバル」の初代グランプリに輝き注目を浴びている彼らは、胸を締め付けるようなギターのアルペジオから急加速していくオープナー“光の唄”で、その新人離れしたタイトかつ爆発力のあるアンサンブルを見せつける。間髪入れずに3曲目の“若者たち”まで駆け抜けるも、「手は挙がりますか列伝!」とオーディエンスをしっかり巻き込みながら、ストレートで衒いのない言葉をぶつけるヴォーカルはとにかく爽快だ。この日メジャー・デビューを果たしたシャリラだが、新曲“青春のすべて”をプレイする直前のMCでは「あと4日で二十歳になりますが、あと4日で青春は終わってしまうんでしょうか?」と、ティーンから大人へと成長する中での迷いや葛藤を見せる場面も。若く聡明な彼らの音楽は、まだまだ無限の可能性に満ちている。(U)
トークを挟み、2番手としてステージに現れたのは大阪・寝屋川市発のガールズ・バンド、yonige。昨年末にドラマーが脱退し、現在は牛丸ありさ(Vo&G)とごっきん(B&Cho)の2人にサポート・ドラマーを加えた編成となった彼女たちだが、初っ端から披露した人気曲“アボカド”のパワフルな演奏でオーディエンスをグイグイとその世界観に引き込む。そしてハイハットが裏打つダンサブルな同曲から流れるような展開でミドル・テンポの“バッドエンド週末”へ。どの曲も音源よりも数段アグレッシヴかつワイルドなyonigeの演奏は、その満たされない心情を吐露したかのような楽曲と相まり、どこまでもエモーショナルな響きを湛えて受け手の胸に突き刺さる。ラストの“さよならバイバイ”が終わる頃には割れんばかりの歓声が沸き起こり、牛丸は「またライヴハウスで会いましょう」と確かな余韻を残してステージを去っていった。(H)
今回、唯一のアコースティック・セットでの出演となったのは3ヶ月連続シングル・リリースを無事完遂し、8月にはここWWWにてバンド編成でのワンマン公演「ラブリーサマーソニック」を控える現役大学生SSW「ラブサマちゃん」ことラブリーサマーちゃん。前方には椅子も用意され、ゆるやかな空気が流れる中、先述の連続リリース作品の最後となる“青い瞬きの途中で”からライヴはスタート。ギター1本と歌唱のみのシンプルな構成ゆえに、彼女のつくるメロディの
良さと、これまで以上にまっすぐ自身の気持ちを綴った歌詞がストレートに響いてくる。その後はZAZEN BOYS“kimochi”のカヴァーを挟みつつ、“ルミネセンス”“、アナタは煙草私はシャボン”といった代表曲をプレイ。合間のMCでは立て続けにスベる様子が逆にウケていたかのような印象だったが、そんな飾らない姿もラブサマちゃんの魅力と言えるだろう。(H)
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの“Sometimes”をSEに登場したのは4月に初の全国流通盤となる1stミニ・アルバム『行間にて』をリリースし、現在全国ツアー真っ最中の4ピース、Ivy to Fraudulent Game。変則的かつ複雑な構成の楽曲を主軸とした、いわゆるポスト・ロック、ひと昔前の言葉で言えばマス・ロックとも称されるような音楽性ながらも、ライヴではそこに圧倒的な熱量が加えられ、プリミティヴなロックの持つ初期衝動さえも感じさせるグルーヴを生む。緻密に練られた構成ながらも、それをあえて破壊するかのような怒涛のバンド・アンサンブルで放たれた1曲目の“水泡”では、出音一発でガラッと会場の空気を変えた。ニヒリスティックな寺口宣明(Vo&G)のMCや、その何者にも媚びない姿勢は現在の邦ロック・シーンにおいては異質な存在。時おり覗かせた彼らの大胆不敵な笑みが、どこまでも痛快だった。(H)
トクマルシューゴの名曲“Rum Hee”と共に現れたのは、千葉県・佐倉市出身のHalo at 四畳半だ。名刺代わりの1曲目“リバース・デイ”のキラキラと乱反射するメロディで自然とハンドクラップを巻き起こすと、「列伝!最後までよろしくな!!」と渡井翔汰(Vo&G)が絶叫。白井將人(B)も語っていたように、彼らは昨年9月の「特別編“大大大宴会” 〜東の宴〜」でトップバッターを努めていたが、今回は早くも大トリに抜擢。感極まった渡井が3分をゆうに超えるMC
で自身の想いを吐露すると、いつも以上に気合の入りまくった“シャロン”で歌も演奏もグングンと熱を帯びていく様は、バンドの結束力の強さを何よりも物語っていた。鳴り止まないアンコールに応え再びステージに登場すると、渡井が「ホントに楽しかったです。ありがとうございます!」とオーディエンスやスタッフに感謝を述べ、最新ミニ・アルバム『innocentpia』収録の“飛行船”でフィニッシュ。文字通り完全燃焼した4人が、最後の最後まで深々とお辞儀していた姿は、一夜明けた今も鮮明に脳裏に焼き付いている。フル・アルバムが世に出る頃には、ハロはきっとロック・シーンの最前線に立っていることだろう。(U)
なお、このライヴの模様は8月18日(木)23:00~24:00にスペースシャワーTVにてオンエアされる。
Text by Kohei UENO (U)、Takazumi HOSAKA(H)
セットリスト
Shout it Out
1. 光の唄
2. 逆光
3. 若者たち
4. 星降る夜に
5. 生きている
6. 17歳
7. 青春のすべて
yonige
1. アボガド
2. バッドエンド週末
3. さよならアイデンティティー
4. センチメンタルシスター
5. あのこのゆくえ
6. 最近のこと
7. さよならバイバイ
ラブリーサマーちゃん
1. 青い瞬きの途中で
2. ルミネセンス
3. kimochi (ZAZEN BOYSカバー)
4. ベッドルームの夢
5. あなたは煙草 私はシャボン
Ivy to Fraudulent Game
1. 水泡
2. 劣等
3. 青写真
4. アイドル
5. 青二才
Halo at 四畳半
1. リバース・デイ
2. アメイジア
3. 彗星について
4. 春が終わる前に
5. シャロン
En. 飛行船
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